2016年9月27日 (火)

出版協『新刊選』2016年10月号 第48号(通巻272号)

1P凱風社 新田 準さんを偲ぶ

金岩宏二現代書館)●出版協理事
2P……出版協BOOKS/10月に出る本 
3P……出版協BOOKS/10月に出る本(2Pの続き)

凱風社 新田 準さんを偲ぶ

私たちの古い友人、凱風社の新田さんが今年7月9日、16時に亡くなりました。
1946年生まれの、69歳でした。
あまりにも早い死でした。
かなり前から糖尿病を、そして数年前から癌を患っていた事は知っていましたが、亡くなったという知らせを受けたときは、「ウソだろう!」という気持ちで、受け入れることが出来ませんでした。

出版協の前身「出版流通対策協議会(流対協)」の初期の頃から幹事を務め、なにか問題が生じれば、問題解決に全力で関わってくれました。

先日、「新田さんを偲ぶ会」を、彼と関わってきた人たちと共に、ささやかに行いました。
故人の願いは「静かに行かせてくれ」だったのです。取り立てての挨拶も司会者による指名もない会でしたが、友人たちが静かに彼の思い出を語り酒を飲み交わしました。

思えば、彼は様々な会に積極的に関わってきました。出版協、アジアの本の会、平和の棚の会、沖縄ブックフェア等々。
その時々、彼は、あの笑顔と彼独自の博識さでフェアの呼びかけを作り、ポスター、立て看を作ってくれました。
そして、コンピュータ上のトラブルには事細かな指示でトラブルを解消し、運営上のもめ事が有れば、それこそ我が身の問題として、もめ事解消のアドバイスを出し続けてくれました。

彼は大学卒業後、商社に就職し主にヨーロッパ駐在員として東欧諸国を飛び回っていました。そこで培われた語学と、日常会話の奥に潜む微妙な言葉のニュアンスの違いを肌で理解していたようです。プロの翻訳者も時には、彼の微妙な翻訳のニュアンスの違いに舌をまいていたそうです。
そんな彼がグーグル問題の時は大活躍してくれました。2009年グーグルが商業利用を目的に、書籍の全ページを無断スキャニングする暴挙にでたときです。当然流対協は反対行動を起こします。グーグル本社への抗議・拒否表記の仕方、アメリカの出版社・作家組合の動き、フランスのグーグルへの裁判闘争の報告など、世界の動きを新田さんは原文を翻訳し、私たちに知らせてくれました。彼の翻訳がどれほど私たちの活動などに勇気を与えてくれたか、「感謝」です。
さらに、めまぐるしく変動を続けている「書店の新規開店、閉店情報」を知る限りの範囲で、彼は真剣に流し続けてくれました。
彼独特のあの笑顔の裏の、真剣に物事に対応する彼の心を、知れば知るほど「亡くなった」と言うことが悔やまれてなりません。

問題解決に全力で力を出してきた彼でしたが、病には勝てなかったということでしょうか。

思えば、彼は69歳、私は今年71歳。敗戦生まれと初期団塊の世代です。もはや年寄りの部類にどっかりと浸っている年代です。同年代と酒を飲んでも、出る話は、共に現在抱えている体の不調話ばかりです。私が今一番の体が抱えている問題は、りっぱな「椎間板ヘルニア」です。春先まではパンツはおろか、(パンツをはかないという快感に開眼しました)靴下を履く事も困難な状況が続きました。出社、退社のバスを降りてからの家までの片道20分は地獄です。現在は、ある出版社(現代書●)の出している『椎間板ヘルニアは切らずに治す』を毎日お題目のように唱えかつ信じて(本の中身は目を通していません)メスを入れずに痛みとの格闘生活を送っています。

私たち出版業界の仲間内から、訃報の知らせをよく聞くようになってきました。
しみじみ「ああ、働けるのもあと数年あるかな?」が実感です。

新田さん、会う機会が近いかもしれないね。その時も「あの世の差別と闘う協議会」(世差協)で活動していたりしてね。

金岩宏二現代書館)●出版協理事

 

 

2016年8月30日 (火)

出版協『新刊選』2016年9月号 第47号(通巻271号)

1P …日本出版販売(株)王子流通センター見学会記

 
髙野政司(解放出版社出版協理事
2P ……出版協BOOKS/9月に出る本 
3P……出版協BOOKS/9月に出る本(2Pの続き)

日本出版販売(株)王子流通センター見学会記

去る8月8日、日本出版販売(株)様(以下「日販」と呼ばせていただく)のご厚意を頂き王子流通センターの見学会を行った。募集期間が短かったにもかかわらず29名の参加者。出版協の前身「流対協」時代に行ってから十数年ぶりの開催で初めての方が多かったのも当然であろう。当日は猛暑のなか、JR王子駅に集合路線バスで王子流通センターに向かった(約10分)。
本社からいらした、今回の見学会受け入れ担当の方の出迎えを受けて15時から見学会の開始となった。まず、概要説明そしてセンター内現場見学、その後担当者との質疑応答17時終了のスケジュールである。
 
概要説明では、取次の役割、そして日販の流通センターの紹介。
・ 王子流通センター
・ ねりま流通センター(雑誌)
・ CVS営業所(雑誌)
・ Web-bookセンター(ネット対応)
などである。
 
王子流通センターは1970年開設、日販最大の流通センターで書籍(新刊、既刊本及びコミック、文庫、新書)を扱う。働いている方が700人、一日の取り扱いが180万冊、新刊は日に300点80万冊を扱う。在庫は約70万点、650万冊。版元への注文は出版vanやnocsなど。また、王子流通センターにない書籍の在庫状況の提供の要望があった。
注文品の仕分けについてはMS2(マルチスーパ2)を1998年に、そして2007年にはBCS(ブックス)を導入との説明がなされる。(この仕分け機については現場見学のところで説明)王子流通センターの建物は1~4号館、6階建。
センター現場見学は4班に分かれ、各班に日販の方が付き説明を頂いた。現場は稼働中で仕事の邪魔にならないように、また「事故」に遭わないように、更に場所によっては相当騒音がするため少人数で説明を聞きやすくするため等の配慮と思われる。見学は1~3階の単行本関係のシステムを回る順番を変える方法で行った。以下の説明は私が回った順である。
 
「新刊センター」(3階、在庫エリア)
 発行後1ヶ月の新刊と売上良好の新刊 をストック
「BSC(ブックス=Book Channelizer System)」(3階)
 「MS2」で対応できない書店からの直 接注文などでデータのない書籍や定型 外の仕分
  け機。日に10万冊を6,000 書店に仕分け起票を行う。
「MS2」(2階)
 注文書籍の投入、書店別仕分け、搬出、 伝票発行といった全ての工程を網羅する、 多
  判型対応の高速自動仕分け機。日あ たり約50万冊を約6,000方面に仕分け。
「データーイン」(2階)
 書店から直接注文された商品や手書き の短冊付き商品の情報のデータを担当 者が入
  力。30台の端末を使用。これに よりセンター内の商品全てをデータ化 することで注文品
  の100%機械仕分け が可能送品のスピード化等を実現。注 文票や手書き短冊の客注
  者名や客注番 号の情報については、それらを入れる ので書店には届くとのこと。
「大口検品機」(2階)
 一覧注文やセット品等大口品の納入検 品を行う。
「新刊ライン」(1階)
 新刊書籍の送品ライン、通過型重量検 品機で1個1個の荷物の重量計測を行い、 商品
  の過不足チェックを行う。
「SS80」(1階)
 新刊、注文品全ての荷物を日約5万個、 一時間あたり最大6,000個運送会社別、 80方 
  面に仕分ける。
といったところを質疑応答も交えて一時間あまりかけて回る。
現場見学後の質疑応答はコミック・文庫センターの方と新刊センターの方お二人との間で行なわれた。
在庫エリア5階の専門書センター(見学をしたかった)への在庫希望について。
 在庫をしている版元は決っているが取 次や版元の希望で交渉することはある とのこ
   と、相談を。
「データーイン」の場合客注名など手書き短冊情報が書店に届くかどうかの質問について。
 データ化しても手書き短冊は入れると のこと、但しデータ化には2~3日か かるとの返
  答。その分だけ書店への納 品は遅れる。
王子流通センターに納品から書店への到着日の質問。
 おおよそ2~3日目には書店に到着。 沖縄、北海道でも一週間くらいとのこと。手書き短
  冊の注文品が「宛先不明」で間々返品されることについて。
 一つには短冊用紙が弱い可能性、集品 時の取扱いに問題がある可能性、後者 につい
  ては日販の方で調査との返答等 であった。
 
今回の見学会には編集担当の方も参加していて普段接することが少ない出版流通の学習の機会にもなった。
 
日販王子流通センター様には見学会を引き受けていただいたことに改めて感謝を申し上げます。有難うございました。
 
髙野政司(解放出版社●出版協理事

2016年8月23日 (火)

取材活動への警察の強権的対応に抗議する

このところ各地で、米軍基地建設や原発再稼働に反対する市民運動への警察の強権的な対応が相次いでいる。しかもあろうことか、これを取材するジャーナリストに対して、問答無用の拘束や逮捕が行われていることは、許しがたい暴挙である。

8月20日には、沖縄県東村高江での米軍北部訓練場新ヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)建設への抗議活動を取材していた沖縄2紙の記者が、市民と共に機動隊車両の間に閉じ込められている。

新聞社の腕章をして記者と名乗り続けても聞き入れられず、約15分間の不当な拘束により、記者は市民排除の様子を取材することができなくなってしまった。

 

また東京でも、21日未明に経済産業省前の脱原発テントが撤去され、これに抗議する集会を取材していたフリーカメラマンが、公務執行妨害のかどで逮捕されている。

 

これら報道に対する警察の強権的対応は、与党大勝の参院選直後から顕著に見られている。

4月には国連人権理事会が、安倍政権の「過度な権力行使」に警鐘を鳴らしたばかりだが、「ジャーナリストの拘束」にいたっては、民主主義と人権を根底から危機に陥れるものであり、断じて許すわけにはゆかない。

 

言論・出版にたずさわるわれわれ日本出版者協議会は、これに強く抗議するものである。

 

                                     以上

2016年7月27日 (水)

出版協『新刊選』2016年8月号 第46号(通巻270号)

1P…悩ましい共通番号(マイナンバー)への対処

 
成澤壽信現代人文社)●出版協副会長
2P……出版協BOOKS/8月に出る本 
 3P……出版協BOOKS/8月に出る本(2Pの続き)

悩ましい共通番号(マイナンバー)への対処

共通番号(マイナンバー)制度に関して、それが施行された昨年10月から今年はじめにかけては、マスメディアも大々的に報道していたが、最近ではほとんど関心をしめさなくなったようだ。

現在、各市区町村では、個人番号カードの交付手続を行っている。しかし、個人番号カード交付の際に市区町村の処理画面が固まる、カード使用が不能になるなど、制度運営の要になっているJ-LIS(地方公共団体情報システム機構)のシステムのトラブルが相次いで発生し、全国集計で個人番号カード約1003万枚の申請に対して、自治体に送付済み977万枚、交付済約337万枚、約640万枚滞留していた(4月26日)。東京・世田谷区では、昨年12月上旬受付分の交付を現在行っているところで、申請の半分程度しか交付事務が完了していない。今年5月申請分の完了が9月にずれ込むと区議会で説明されている。J-LISの発表では、改善されたとされているが、市区町村の処理画面が固まることや、処理速度が遅くなるなどの症状は現在も出ており、こうした実情はその他の自治体でも似たり寄ったりであるという。

共通番号制度に対しては、国による管理・監視(国民総背番号制)になる、個人情報の自己コントロール権の侵害になる、漏えいした場合成りすまし犯罪の温床になる、などさまざまな問題点が指摘されているが、ここでは、私たち中小零細出版社(事業者)に共通した問題として、個人番号の「収集」問題を扱いたい。
 
個人番号(マイナンバー)の提供は、税で2016年1月から、年金や社会保険関連では2017年1月から求められる。所得税については2016年からの所得が対象になるため、年末調整では今年12月、確定申告では来年2月に本格的に個人番号の記入が求められる。
番号法では、個人番号の提供については住民に対して義務化していない。それは、政府が住民に強制して反発され、個人番号の普及が遅れることを恐れているからだろう。
住民に対して義務化していないが、事業者には従業員の税・社会保険等の申請や年末調整事務ために個人番号の収集が求められている。また、事業者には、著者に印税や原稿料を支払った場合、税務署に提出する書類(「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」)に著者の個人番号を記載することが義務づけられている。

このため、事業者には従業員や著者に個人番号の提出を求める事務が発生している。
事業者は、従業員や著者から個人番号の提示を受ける際、本人確認に必要な通知カード(+健康保険証、あるいは運転免許証)か個人番号カードのコピーも一緒にいただくことになる。
事業者には、こうして提出された個人番号やその関連書類に関して、厳重な管理(「安全管理措置」)が義務付けられている。「安全管理措置」の内容は、管理責任者の選任、管理区域の設定など多岐にわたり、手間とコストがかかり、中小零細事業者にとっては、とても対応できるものではない。万が一漏えいした場合は、4年以下の懲役または200万以下の罰金が科せられこともある。
昨年の日本年金機構からの情報漏えい(100万件以上)にも見られるように、高度な安全対策をしていたにもかかわらず個人情報が漏れてしまうことがある。 このような不正アクセスによる情報漏えい事件は、2011年9月の三菱重工業(80台以上感染)、2013年10月のセブン通販サイト(15万件以上)、2014年7月のベネッセ(2000万件以上)、2014年9月のJAL(4千件以上)、2015年6月の東京商工会議所(1万件以上)など多数ある。
 
そこで、中小零細事業者のある団体では、つぎのような理由から、個人番号を当面集めない旨を従業員に伝え理解を求めたところがある(「共通番号いらないネット」など主催の5月29日の集会発言)。
「今回、小社としては、検討・熟考した結果、万全の『安全管理措置』がとれませんので、当面番号をお預かりしないで、関係役所に提出が義務ずけられている書類は番号なしで提出する扱いにすることとしました」。
冒頭に書いた個人番号カードの交付事務が遅れていることとも関係するのか、現在のところ、各関係機関では、個人番号の記載がなくても書類が受理されないということはない(平成 28 年4月 12 日/個人情報保護委員会「特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン(事業者編)」及び 「(別冊)金融業務における特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン」に関するQ&Aの更新http://www.ppc.go.jp/files/pdf/280412_guideline_tuikakoushin.pdf)。

以上の「当面番号をお預かりしない」という方策は、従業員ばかりでなく、著者にも当てはまることではないだろうか。
一方で、「集めない」という選択をすると、関係機関から睨まれ何らかの不利益を被るのではないかという不安も残る。
しかし、集めたが最後、事業者は相当な負担とリスクを負うことになることを肝に銘ずるべきである。万一漏えいした場合のことを考えれば、「集めない」ことは従業員や著者の利益にもかなうことになる。「集めない」という選択を検討する時期にきているのではないか。

成澤壽信(現代人文社●出版協副会長

2016年7月13日 (水)

出版協プレゼンツ ブックデザイン講座

                                     第1回 「デザインの種」そのコツとツボ

●日時/8月26日(金)
19時00分から (開場 18時30分)
終了/20時30分頃 (予定)
●場所/文京シビックセンター会議室
4階ホール
(文京区春日1丁目16番21号)
●講師/鈴木一誌(すずき・ひとし)氏
●参加費/1,000円
 
                                                  【講師紹介】
 
1950年生まれ。グラフィックデザイナー。映画評論家。東京造形大学在学中より杉浦康平デザイン事務所に12年間在籍し1985年に独立。1981年、第1回ダゲレオ出版評論賞受賞。1998年、第29回講談社出版文化賞ブックデザイン賞受賞。2001年より戸田ツトム氏とともに雑誌『d/SIGN』の責任編集に携わる。主な著書に『知恵蔵裁判全記録』(太田出版)『ページと力』(青土社)『画面の誕生』(みすず書房)『映画の呼吸/澤井信一郎の監督作法』(ワイズ出版)『重力のデザイン』(青土社)『全貌フレデリック・ワイズマン』(岩波書店)『デザインの種』(大月書店)等がある。
                                                 
                       【講座内容】
 
2015年に刊行された戸田ツトム氏との共著『デザインの種』(大月書店)のなかから、「紙」「読者の空間」「距離」「時間」「重力と矩形」「タイポグラフィ」「音とノイズ」「手とエラー」「本の背」という9つの事項を厳選し、高濃度な「デザイン」をめぐる90分。編集・製作・ブックデザインにかかわるみなさんは必聴必見のレクチャー!
 
                                                    【懇親会】
 
講座のあとに懇親会を予定しております(参加自由・実費御負担頂きます)
 
参加申し込みは、事務局までメールでお願いします。
また、懇親会参加希望の有無も併せお知らせください。

2016年7月 1日 (金)

出版協『新刊選』2016年7月号 第45号(通巻269号)

1P…リアルです。講座「重版決定!」

 
水野久晩成書房 )●出版協副会長
2P……出版協BOOKS/7月に出る本 
3P……出版協BOOKS/7月に出る本(2Pの続き)

リアルです。講座「重版決定!」

先日まで放送していた出版社が舞台になった民放のテレビのドラマは、見ていた人が多かったらしい。あらゆる社内業務を二人でこなす我が社とは比べようもない大きな出版社の話だけれど、企画を立て、刊行に至る本質は変わらない。出版社と印刷会社、製本所の違いを認識していない人も少なからずいる(案外多い!)ことを考えると、とにかく、出版という仕事への関心度のアップにつながってくれることを期待したい。ちょうどNHKの朝の連続ドラマも出版人がモデルの話だし、ドラマを見たことをきっかけにでも、特に、若い世代の人が、出版という仕事に関心を持ってほしいと強く思う。
 
というのも、出版の世界にもっと若い人がかかわってほしいからだ。個性的な出版活動をしている中小零細出版社の多くは、私たち出版協の会員社の多くがそうであるように、団塊の世代が70~80年代に創業し、支えてきている。60年安保から70年安保の時代に大学生だった団塊の世代にとって、書籍・雑誌の出版物はいちばんの情報媒体だ。マスコミ以外で情報発信を志すなら出版にかかわろうとするのは、いわば当然の流れだったといえるだろう。
しかし、90年代後半以降のインターネットの急速な普及は、人々の情報に対する感覚を大きく変えた。情報を発信する側、求める側、双方の感覚を。コピー機とワープロの普及が、それまで印刷屋さんが独占していた複製・活字組という技術を、誰もが(完成度を問わなければ)手軽にできるものに「解放」したように、インターネットは、それまでマスコミや出版社が独占していた広く情報を発信するという技術を「解放」したといえる。インターネットによって、誰もが、良くも悪くも他人にチェックやダメ出しをされることなく、情報や作品を自由に発信できる。一人で。世界中に……。しかも、経済的なリスクは小さいのだから、情報発信を志す現代の若者が、まずインターネットの方に行くのは当然だろう。

じゃあ、出版にはインターネットに勝る魅力がないのか? そんなはずはない。出版社が持っている「情報を発信する技術」は、印刷するとか製本するとかの具体的な技術そのものではない。情報を見きわめ、練り上げ、ひとまとまりの情報パッケージとして作り上げ、読者に届けるという各段階を、それぞれの専門技術を持つ人々と協力してクリアしていく企画コーディネート力とでもいうようなものこそ、出版社の持つ力の中心と言える。だから、ネットが一人で自由に発信できるということとは逆に、一つの情報を出版物(売れる出版物)という商品にするために多くの人が関わりあうところに出版の本質的な魅力があるのだと思っている。
 
そんな魅力をテレビドラマから感じてくれるのも結構なのだが、出版社の集まりである出版協としても、もっと出版について発信できないだろうか、と考えた。なにしろ、この厳しい状況が続く中、会員各社は工夫をこらして、個性的な出版物を世の中に送りだし続けているのだ。各社の持つノウハウは、貴重なものだ。そして、そのノウハウの交流は、会員社を始めとする中小出版社を元気にするに違いない。とにかく、小さい出版社には、他の出版社のしていること、出版業界全体の動きなどの情報が届きにくいのが現実なのだから。
 
そんなことを話ながら、新しい体制で動き出した出版協ではさまざまな講座やイベントを通して、会員社を始めとする出版関係者(関わろうとする人)の経験交流、情報共有を進めていきたいと企画を進めている。
その手始めとなる【編集連続講座】は、上野良治副会長(合同出版代表取締役)が講師を買って出てくれて、【企画から増刷決定までの現場実務を学ぶ(合同出版のケース)】と銘打ち、7月8日から始まる。月1回ペースの全6回(各回ごとの予約制)。第1回の「どんな判断で書籍企画の採用/不採用を決定しているか」から、「小社ではこれを基準に原稿整理している(第2回)」「小社では、原価率をどう設定しているか/初版部数の決定法則(第4回)」など、確かに気になるテーマが並んだ。詳細問合せ・申し込みは事務局まで。[お陰様で第1回はすでに満席の状況です。]
 8月には、デザイナーの鈴木一誌氏を講師に【ブックデザイン講座(第1回)「デザインの種」そのコツとツボ】を開催することが決まっている。【下欄参照】
出版協プレゼンツの講座・イベントでぜひ情報共有・経験交流を進めていただきたいと願っています。どうぞご注目、ご参加お願いいたします。

日本出版者協議会プレゼンツ【ブックデザイン講座】(第1回)「デザインの種」そのコツとツボ
講師・鈴木一誌氏 予約申込を近日中にご案内いしたします。
編集・製 作・ブックデザインにかかわるみなさんは必聴必見のレクチャー! ご期待ください。
【日時/場所】2016年8月26日(金) 19時00分~20時30分(開場18時30分) 文京シビック区民会議室 4階ホール

水野久晩成書房●出版協会長

『新刊選』2016年7月号 第45号(通巻269号)より

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