2017年7月12日 (水)

2017年7月58号(通巻281号)

1p ・・・・「ほんのひとこと」

アマゾンの「バックオーダー」発注停止をめぐって
出版協会長 水野久(晩成書房
2p-4p・・・・・・FAX新刊選7月号「出版協Books」

2017年7月 5日 (水)

アマゾンの「バックオーダー」発注停止をめぐって

 一般紙でも報道されているように、アマゾンの発注方式の変更が大きな話題となっている。これまでアマゾンは、取次店に在庫されていない本(および、取次からの注文に出版社が即応できない本)について、取次店を通した取り寄せ調達を行ってきた(アマゾンの用語で「バックオーダー発注」)。ところが、アマゾンは4月末、突然、この「バックオーダー発注」を6月末をもって終了すると発表。アマゾンから各出版社への通知文書では、取次店に在庫のない、われわれ中小出版社のロングテール商品などは、ことごとくアマゾンでは発注できないことになるように読めるため、出版社間に困惑と不安が広がった。

 アマゾンからの通知では、「バックオーダー発注」の中止による販売機会の損失を抑える方法として「e託販売サービス」など、取次店を通さないアマゾンとの直接取引のみが有効だとされている。アマゾンはこれまでもe託への参加を出版各社に働きかけてきたが、今回の「バックオーダー発注」の中止は、明らかに、直接取引の出版社を一気に増やすことが狙いと思われる。それを裏づけるように、5月以降、アマゾンは活発に出版社向け説明会を開催し、「バックオーダー発注」中止の影響の大きさと、e託への参加を(期間限定の特別条件を示して)強力に働きかけている。


 出版協では、日販と情報交換を行うとともに、6月15日、アマゾンのシステムや直取引に詳しい高島利行氏((株)語研)、工藤秀之氏((株)トランスビュー)らを講師に、この問題をめぐるシンポジウムを開催。この問題への関心の高さを示すように会場は、会員・非会員合わせて80人ほどの参加者で満席となった。

 このシンポジウムを通じて、今回のアマゾンの「バックオーダー発注」中止の主目的は、「e託販売サービス」など、アマゾンとの直接取引への誘導を加速させることであるため、「バックオーダー発注」中止の影響が、現在実際に運用されているより大きいように印象される説明になっていることが示された。同時に、「期間限定」としてアマゾンが示している直接取引の条件は、これまでもキャンペーンの度に示されているものであることも明らかになった。「アマゾンの説明会に参加し、急いで直取引に参加しないと大変なことになると感じてこの会を聞きに来たが、落ち着いて考える機会となった」という参加者の発言が印象的だった。


 アマゾンとの直取引については、これまでも出版協としては、各社に次のような点を考慮して判断するよう呼びかけてきた。

 ひとつは再販制の問題である。言うまでもなく、日本の出版物の再販制は、出版社と取次店(取次店は再販契約のない書店には本を卸さない)、取次と小売書店(書店は定価販売を順守する)という2段階の再販契約で成り立っている。取次店を除いたアマゾンとの直接取引においては、アマゾンと出版社の間で個別の再販契約を結ばない限り、定価販売の保障はない。

 この点についてアマゾンは、再販制を尊重すると謳っているが、e託販売の説明を見る限り、定価販売について明確な記述は見当たらない。実際、学生対象のAmazon Studentサービスでは、再販契約違反とする会員社の申し入れにもかかわらず、10%のポイント付与(値引き)が継続されているのが実情だ。再販契約のもとでさえそうなのに、再販契約のない直取引で定価販売が守れるとは思えず、実際に値引きが行われれば、抗議することさえ不可能となるだろう。同時に、同じ商品を取次店を通しても出荷するとすれば、再販契約の下で販売する小売書店には、全く不利な状況を生むことになるのは明らかだ。

 もうひとつは取引条件だ。アマゾンの示す掛け率は、(良くも悪くも変更の難しい)取次の正味とは違うと認識しておいたほうがいい。取引実績による変更がどのように行われるかは定かではなく、アマゾンから条件引き下げの要求があった場合、個別の、それも中小の出版社がそれに抗する交渉力を発揮できるとは考えにくい。ましてアマゾンへの依存度が高くなっていればなおさらだろう。


 6月末をもってアマゾンの「バックオーダー発注」は予告通り全面停止されたようだ。私の社は、Amazon Studentサービスを再販契約違反として、アマゾンへの出荷を停止しているため、実際の影響は分からないのだが、出版協としては、日販との情報交換を含めて、その影響を注視していくこととなる。

 そして、アマゾンのみへの対応ということでなく、書店・ネット書店からの注文によりよい対応ができる取次在庫のあり方、出版社の在庫情報提供のしかたなどについて、日販との情報交換・協議を進めていく予定である。


出版協会長 水野 久(晩成書房

2017年6月28日 (水)

香山リカ氏講演会への妨害行動とその中止決定に抗議する

 東京江東区の社会福祉協議会、香山リカ講演会実行委員会、豊洲こども食堂の共催で627日に予定していた「地域福祉セミナー」が、一部ヘイトグループによる「講演会に乱入する恐れがあります」「つぶすぞ」などと脅迫するメールや電話を受け、「中止」を決定するに至った。

 講演会は、精神科医で立教大教授の香山リカ氏を講師に迎え、「なぜ今こども食堂が必要なのか」という演題で、母子の孤立対策や支え合う地域づくりについてお話いただく、という主旨のものだった。

 中止決定に至った理由は、「講演者の他の機会での発言等に対しメール、電話等で多くのご意見いただき…、中には、当日の健全な進行を妨げる内容のものがあり、ご来場いただく皆様にご迷惑がかかることが予測されるため、参加者の皆様の安全を確保する観点よりやむなく中止の決定をさせていただきました」(同協議会「『地域福祉セミナー』中止について」)とのことである。

 「講演者の他の機会での発言」とは、「在日特権を許さない市民の会」(在特会)のヘイトスピーチに対する香山氏の批判を指すようで、今月の前会長・桜井誠氏がこの講演会についてネット上にツイート、同社会福祉協議会の電話番号を記載したうえで、「問い合わせると、いろいろご意見できそうですね」などと書き込み、講演会の妨害をけしかけていた。

 今回の一番の問題は、一部グループによる講演会に対する卑劣な妨害行動にあるのだが、それを受けて企画を中止してしまった江東区社会福祉協議会の安易な対応にも、表現の自由を保障するという観点から多くの問題が残ったと言うべきであろう。
 中小零細版元80数社で構成する日本出版者協議会(出版協)は、「言論・出版・表現の自由」を何よりも大切にする立場から、この講演会中止に強く抗議するものである。

2017年6月26日 (月)

会員社一覧●2017年6月現在

2017年6月 9日 (金)

2017年6月56号(通巻280号)

p「前門のアマゾン、後門の取次」

出版協理事 田悟恒雄(リベルタ出版

2p-3p ・・・・出版協Books/6月に出る本

4p・・・・・・・・・・出版協Books/6月に出る本(3pの続き)

前門のアマゾン、後門の取次

 
■不意の挟撃
 連休直前の4月28日、アマゾンジャパン合同会社書籍事業部購買統轄部から、「重要なお知らせ」が届いた。この6月末をもって「日販バックオーダー発注(非在庫商品取り寄せ)」を終了する、というのだ。
 あまりに唐突な「お触れ」に、出版業界は上を下への大騒ぎ。さらに、5月2日の日販の「見解」が、追い討ちをかける。「今回のお申し入れのままでは、出版社の取引の選択が狭められ、対応ができない社が出ることも懸念されます」と。
 真っ先に「対応できなく」なりそうな零細出版者としては、それだけでも戦々恐々なのだが、泣きっ面にハチ、連休が明けると、今度は五軒町方面から、「返品率上昇」を理由に「協議したい」旨の連絡を頂戴することに。この手の申し出は、過去2度も体験しているので、先方が何を言いたいのかは百も承知。要は、取引条件の改定要請なのだが、まかり間違っても改善してくれるといった話ではない。
 ともあれ仕入窓口に出頭。前年度の不本意な「成績表」(データ)を前に、先方の言い分を神妙に聞く。一通りの説明を受けてから、「本日はお話を伺うだけにして、後日、質問状をお出ししますので、文書にてお答えいただいたうえで "協議" に入らせていただきます」と席を辞した。
 
■優越的地位の濫用?
 実は小社、トーハンとの直接取引はここ20年くらいのものなのだが、そのスタート時、「取引をお願いする」という当方の圧倒的に弱い立場ゆえ、不承不承、署名捺印せざるをえなかった「条件書」には、こうあった。返品率と「歩戻し」の率を連動させるというのだ。しかし契約の場で急遽書き込まれたその条項は、いつまでも零細版元を苦しめ続けることになる。
 しかもその文書、取引契約書とは別建てではあるが、本契約と同様の拘束力を持っている。だが、どういうわけか、当方にはその控えも渡さないという、きわめて不明朗なものだった。
 そのようなものが、何年も後になって「返品率上昇」が問題にされたときに持ち出され、そのときに初めて、その控えが、あろうことかFAXで送られてきたのだった。
  ところで、「返品率上昇」を理由に、取次が版元の取引条件の引下げを求めるというのは、「その責任はひとえに版元にあり、版元だけが責を負うべし」との考えのよう。では、その合理的な根拠はいったいどこにあるのか、取次は丁寧に説明しなければならない。
 その点について納得しうる説明ができないのなら、これは独占禁止法に言う「優越的地位の濫用」に限りなく近いと指弾されても仕方あるまい。
 
■色とりどりの差別取引
 翻って、そもそも「歩戻し」とは何なのか? 「注文支払い保留」とは何なのか? そして、それらをもっぱら後発の弱小版元に課すことの正当性は、どこにあるのか? これらの問いかけに取次の説得的な説明がなされたとは、寡聞にして知らない。
 1973年に勃発した「ブック戦争」は、翌74年に「版元出し正味を最低69%、取次マージン8%(8分口銭)」で一応の決着をみたものの、80年代以降、取次店は新規取引版元を中心にこれを68%、67%へと、なし崩し的に切り下げていった。こうして「取次8分口銭」という原則は、いつしか「9分」へ、さらには「10分口銭」へと変えられてしまった。
  しかも、それがもっぱら弱い立場の新規版元に対して進められたことが、今日ある差別取引の基本構造をつくりあげたと言っても過言ではないだろう。創業したての版元が巨大寡占取次相手に条件交渉できる余地など、これっぽちもない。取次店の「優越的地位」は、いささかも揺らぐことがないのだ。
 社会のさまざまな領域で「差別」が問題視され、その「是正」が叫ばれつつある昨今、このような「差別取引」は、もはや時代遅れのものとなっているのではないのか? そして、出版が何より大切にしなければならない「多様性」を奪いかねない「差別取引」は、一刻も早く撤廃しなければならない。
 
■ 熟考に熟考を重ね…
  ここで「ふりだし」に戻ろう。アマゾンである。
 アマゾンが今回、「取次外し」とも言える乱暴な挙に出た背景の一端には、上述のような取次の「差別取引」があることを見逃すわけにはいかない。そのウイークポイントを、みごとに突いてきているからである。
「差別取引」に苦しめられ続ける中小零細版元が、鼻先に差し出された一見好条件とも思える「擬似餌」に目が眩んでしまうのも理解できなくはない。
だが、ちょっと待て。e託契約の前に、よーく心しておかなければならないことを、2つだけ挙げよう。
  まずは、その初期の契約条件がせいぜい1~2年限りのものでしかないこと。先方の間尺に合わなくなれば、いつでも無慈悲に破棄されることを覚悟しておかなければならない。
 そして、くだんの「e託販売サービス規約」第7条には、「甲(アマゾン)は単独の裁量で、乙(出版社)のタイトルの小売価格を決定します」と、白昼堂々「再販制崩し」を宣言していることも、見逃してはなるまい。
 
出版協理事 田悟恒雄(リベルタ出版

2017年5月12日 (金)

イノベーションは人間を幸福にするのか?

                                   出版協理事 村田浩司(唯学書房)
「ロボット社会主義」と編集業務
 私は学生時代(およそ30年ほど前)に、遅ればせながら「軟弱な(?)」学生運動に取り組んでいたが、一緒に活動を行っていた理系某大学の友人が、「ロボット社会主義」なるものを提唱していた。いわく、「科学が進歩して、これまでに人間が担っていた労働をロボットが肩代わりするようになれば、人間は搾取的な労働から解放され、社会主義が実現する」というものだ。「階級闘争もないのに社会主義が実現するんかい?」と、私は反論した記憶があるが、まあいずれにしても、お互いに、20歳前後の粗い議論だったことは否めない。ただ、薄らぼんやりとではあるが、科学技術の革新が、格差の是正や労働環境の改善など、何かしら人類の幸福に貢献するであろうことは、当時の誰しもが夢想していた。
 その後、私たちは90年代中盤以降のIT革命により、仕事の環境やライフスタイルのドラスティックな変化を体験することとなるが、私が中堅出版社の雑誌編集部に就職した90年代初旬はまだ、アナログの最後の時代であった。OA機器といえば、編集部に1台ずつあるワードプロセッサーと、フロアにはファックスとコピー機があるのみ。雑誌の組版は当然活版で、再校以降の修正は、次ページに被害が及ばないように文字を数えながら調整を行うという配慮が必要であった。ダメな著者が再校ゲラを真っ赤にして戻してきてしまうと、印刷所の怖い活版職人のおじさんから電話がかかってきて、こっぴどく叱られたことを覚えている。
 また、雑誌のゲラの著者校正は、当然、持参か郵送で、時間がない場合にのみファックスでの確認が許された。校正の締め切り日前後には、著者校戻りゲラの回収に、著者の勤める大学や自宅を行脚する日々が続いていた。
 その後、数年を待たずに、PCが普及し、Eメールの「添付ファイル」によって、原稿は編集部に居ながらにして入手できるようになった。
 組版も、長年の経験を経た職人の仕事であったものが、2000年代初頭には、MACの低価格化とアプリケーション(QuarkXPress)の普及により、少し訓練を積んだ者が簡単に担えるほどハードルが一気に下がった。いずれにしても、これまで時間と費用をかけて行っていたものが、誰でも簡単に行えるようになったのだ。イノベーションの勝利である。では、「ロボット社会主義」も実現したのだろうか? その答えは「否」である。技術革新は、さらに私たちの労働を増やし、日常の細部に至るまで管理する(される)環境を構築してしまったことは皆さんも体感されているはずだ。
 
「オムニチャネル」の功罪
 さて、前置きはこれくらいにして、今回の本題に入りたい。物流革命と言われている「オムニチャネル」に関してだ。オムニチャネルとは、「実店舗やオンラインストアをはじめとするあらゆる販売チャネルや流通チャネルを統合し、どのような販売チャネルからも同じように商品を購入できる環境を実現すること」である。また、オムニチャネルは、市場優位性を確保すべく、きわめてユーザーフレンドリーに物流を再構築するのも、重要な要素だ。このことを顧客サイドから説明すれば、「欲しいものが」「欲しい時間と」「欲しい場所で」手に入るシステムがオムニチャネルである。
 企業サイドは、顧客の消費を喚起すべく、ビッグデータからあらゆる個人情報を吸い上げ、個々人の嗜好や趣味を精緻に把握し、ITメディアを駆使して、TPOに応じた情報をプッシュ型で提供する。たとえば、通勤の電車の中では、仕事で使える便利グッズやランチの弁当情報などを提供し、簡単な操作さえ行えば、適切な時間と場所にその商品を届けてしまうわけだ。
 アマゾンの「プライム会員」は、まさにこのオムニチャネルの一端を担うサービスとして多くのユーザーに利用されている。「欲しいものが」「欲しい時間と」「欲しい場所で」受け取れるわけだ。居ながらにして、あらゆる欲求を満たしてくれるミラクルワールドである。しかし、これは、ITと物流をマッチングさせた「イノベーション」の勝利なのだろうか。「ロボット社会主義」なのだろうか。
 答えはやはり「否」である。アマゾンの物流を担っていたヤマト運輸は、荷重な残業労働と人材不足を理由に「当日配送」からの撤退を表明した。これと前後して、ヤマト運輸は労基署の是正勧告を受け、ドライバーを含む7万人超の従業員への未払い残業代の支払いを余儀なくされている。
 一方で、アマゾンの物流倉庫においても、非常に過酷な労働が強いられている。詳細な実態は、「Mother Jones」誌の記者、マック・マクリーランド氏のルポ「I was a Warehouse Wage Slave」に詳しい。
 非常に厳しい「ブラック」労働にさらされている労働者は、社会総体から見れば、アマゾンでの「オムニチャネル」のサービスを享受している人々と同じである。タコが自分の足を食う(食うことを強いられている)地獄の中で、資本主義は延命を図っているのだ。
 イノベーションはあくまでもツールに過ぎない。「誰が」「何のために」それを利用しようとしているのか。そこを私たちは見極めねばならない。そして、時として「時代遅れ」であることを選択する勇気も必要なのだ。(2017年5月 55号)

2017年4月 5日 (水)

2017年4月54号(通巻279号)

1P 「2016年度の活動から」
廣嶋武人ぺりかん社●出版協理事
2P ……出版協BOOKS/4月に出る本 
3P ……出版協BOOKS/4月に出る本(2Pの続き)
4P ……出版協BOOKS/4月に出る本(3Pの続き)

2016年度の活動から

 去る3月8日に第5回の定時総会を終え、出版協としては6年目、現理事会の体制になって2年目が始まった。

 総会当日にも報告があったが、2016年度の活動の中でも特徴的なものをご紹介したい。

 

 芳林堂書店高田馬場店選択常備伝票切替問題と5者協議

 2016年2月26日に太洋社の大口取引先であった芳林堂書店が自己破産を申請、商号をS企画とし、書店事業を書泉に譲渡することで合意、帳合取次店はトーハンとなり、在庫品は太洋社からトーハンへ売却され書泉に納品という形で引き継がれた。

3月15日に自主廃業を目指していた太洋社が自己破産を申請し、帳合書店の常備品は新規取引の取次店に伝票切替で引き継がれたが、この際、出版社に対して、セット一括搬入分のみが案内されただけで、選択常備品に関しては宙に浮いた状態だった。各出版社はこの状態を解消すべく書店、取次店に働きかけたが、書店・取次店は「買い取った商品」と応じなかった。

この事態に出版協は、太洋社破産管財人・トーハン・書泉に強い抗議ならびに速やかな伝票切替の対応を要請する文書を送付する。

7月に入りトーハンを介して「関係5者協議」の提案がなされた。これを受けて、内外への告知と会員社の状況を調査し集会を開き、会員外を含め8社が参加し、早期の解決を目指すこととした。

8月28日に、太洋社破産管財人、S企画破産管財人、書泉親会社、取次店、出版社の5者による協議が行われ、太洋社破産管財人が譲渡されたとする書籍リストを照合し、該当するものだけが伝票切替の対象とすることになる。

そして10月14日付で伝票切替が実現する。

後に個人会員から自社の常備商品について取次店に対して担当者レベルで要請をしたが解決がつかない旨の相談があり、上記の経緯を知らせるとともに、会社レベルで破産管財人に要請するよう忠告。後日解決に至ったとのこと。

いずれにしても、当然のことを正面から筋を通したほうが禍根を残さずに済むのではないかと感じた出来事であった。

 

 各種イベント、講座の開催

 前年に引き続き、対外的な広報活動の効果も期待し、「ブックデザイン講座」として3回のイベント講座を行った。

 1.「《デザインの種》から編集的デザインへ」(鈴木一誌氏)

 2.「祖父江+コズフ+慎+イッシュ」(祖父江慎氏)

 3.「本づくりと聖書(The Book)」(桂川潤氏)

ブックデザイナーとして第一線で活躍中の諸氏が講師ということもあってか、毎回定員を超える申し込みで、当日も満員という盛況ぶりだった。

 また、参加者も会員外の比率が高かったとのことで、当初の目的であった広報的な役割を果たすことができ、より出版協を身近に感じてくれればと願う。

 次に新規会員社及び個人会員の獲得と会員社内の知識と技術の向上を企図して、各種講座を開催した。

 まずは、副会長の上野氏が講師となって、「出版連続講座」を6回にわたって開催。

 1.どんな判断で書籍企画の採用/不採用を決定しているか

 2.原稿整理はとこまで許容されるか?

 3.著者のための本を作らないというルール

 4.小社では原価率をどう設定しているか/初版部数の決定法則

 5.実売部数・返品率をどのような表で管理しているか

 6.編集者にとって必要な能力とは何か?

といった刺激的で魅力的なテーマのせいか、こちらも毎回満員の状態。この講座をきっかけに出版協入会となった会社、個人の方があった。

 これら編集寄りの講座に加え、営業寄りの講座も開催した。

 ・「混迷を深める出版界を見極める」(小田光雄氏+中村文孝氏)

 ・「図書館営業基本の基」(尾下千秋氏)

 こちらの講師諸氏も業界内ではそのお話を一度は聞いてみたい方々であったこともあり、各回とも好評であった。

 各種講座は全般に好評で会員外からの参加も多く、参加した会員にとっても刺激になった。

 

 以上、昨年度の活動の一部をご紹介した。

「芳林堂書店高田馬場店選択常備伝票切替問題と5者協議」は、流対協から引き続き、取引・流通問題に対して「もの言う」スタンスの継承、「各種イベント、講座の開催」は、理事会の若返りとともに出版協として新たに始めた活動である。

 

ところで、お気づきであろうか。いずれも会員外の方々にも対応している。

現在の会員社の顔ぶれをごらん頂いてもわかることだが、多分、皆さんが思っている以上に、出版協はオープンな(はず)ので、興味をもった講座・イベントには気軽に参加いただき、取引上だけでなく、ちょっとした困り事から、できる限り知恵をしぼってお答えしているので、こちらも気楽にご相談いただきたい。

廣嶋武人ぺりかん社 )●出版協理事

2017年3月30日 (木)

軍事目的の科学研究に反対する

一昨年、防衛装備庁が「安全保障技術研究推進制度」を発足させて以来、いわゆる「デュアルユース(軍民両用)研究」に応募する大学や研究機関が顕著に見られるようになった。

この「研究推進制度」は、「将来の装備開発につなげるという明確な目的に沿って公募・審査が行われ、外部の専門家でなく同庁〔防衛装備庁〕内部の職員が研究中の進捗管理を行うなど、政府による研究への介入が著しく、問題が多い」(日本学術会議「軍事的安全保障研究に関する声明」2017年3月24日)ことが指摘されている。

 

 学術・研究の健全な発展のためには、政治や軍事からの介入を排し、科学者・研究者の自主性と自律性を最大限尊重しなければならないというのが、悲惨な戦争からこの国が学んだ重要な教訓であった。
 

しかるに昨今、大学や研究機関の間に軍事的安全保障研究が「学問の自由及び学術の健全な発展と緊張関係にあること」(同)を軽視し、「軍事目的の科学研究」に安易に与してしまう傾向が見られるのは、「学問の自由」(日本国憲法第23条)にとっても、ひいては「言論・出版の自由」(同第21条)にとっても由々しきことである。

 

前述の日本学術会議声明が「むしろ必要なのは、科学者の研究の自主性・自律性、研究成果の公開性が尊重される民生分野の研究資金の一層の充実である」と訴えているように、その背景には、「潤沢な防衛予算と貧困な文教予算」というこの国の歪んだ予算配分の問題がある。こうして研究費の乏しい研究者が「デュアルユース研究」という名の「軍事研究」に仕向けられている、と見ることもできよう。

 

日本出版者協議会(出版協)は、前述の日本学術会議「軍事的安全保障研究に関する声明」に賛同し、「科学者の自主性・自律性が尊重される民生分野の研究資金の一層の充実」を政府に要求するとともに、科学者・研究者には「科学者の社会的責任」を十分果たされるよう強く望むものである。

 

 

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