2017年11月 8日 (水)

出版流通・販売問題研修会のご案内(全3回)

研修会受講のご案内
【出版協プレゼンツ 出版流通・販売問題研修会】(全3回 2017年11月6日/第1報)
 
 日頃からの出版活動に対し敬意を表します。
 さて、この度、出版協では、連続3回の【出版流通・販売問題研修会】を企画いたしました。
 ご案内のように大阪屋・栗田の再編、アマゾンのバックオーダー中止と直取引への勧誘、日販の流通
 倉庫統合、日本出版インフラセンター(JPO)の出版情報システムの第二段階への移行など、大きな動
 きが起こっています。
 これらの最先端の状況を知り、次の一手を考えていく情報を共有するため、以下の講師陣による研修
 を計画いたしました。
いずれも出版流通・販売・情報システムの最前端で業務に携わる【プロ中のプロ】のお三方でござい
ます。このお三方の研修・情報提供の機会は、稀有なことと存じます。
 定員が限られております。ぜひ、出版協事務局までお早目にご予約ください。
 
 ご案内 出版流通・販売問題研修会(連続全3回)出版協/第1報)
(1)仮題「大阪屋栗田がいま考えていること——新販路の拡大という取り組みを中心に」
鎌垣英人様(大阪屋栗田 執行役員)
11月22日(水)
17時開始〜20時終了予定
小石川運動場会議室:文京区後楽1-8-23 電話03(3811)4507(JR飯田橋駅、地下鉄
後楽園駅)

主な項目】

 

●大阪屋栗田現況報告

 

●出版業界の現在の課題とその取り組み

 

1)取次というインフラの課題

物流(運輸)、倉庫

 

2)現在の書店モデルの課題

雑誌コミックの大幅売上減、打開策としての「本」以外の商材の現状

 

3)新しい書店モデルの創造

 

①書籍偏重小規模モデル(本専業)

 

②書籍と他商材(カフェ含む)との複合型

 

③別事業店舗に小ロットの書籍展開(ホワイエモデル) 

 

★研修の内容、目的から出版社の書店・取次担当者の方々、書店の方々、これから本を商材として
扱いたい小売店の方々の受講を歓迎いたします。大阪屋栗田の書店への新展開、新戦略が解説され
ます。
 
(2)仮題「流通・販売の課題に出版社はどう対応するか——取次・書店・読者に販促のための情報を
どのように届けるか」
高島利行様(語研営業部長)
12月7日(木)
17時開始〜20時終了予定
小石川運動場会議室(同上)
 
★出版情報集積・配信インフラの現状、出版社が出版情報を発信する際の手法事例などが紹介されます。
 
 
(3)仮題「いま、日販が取り組んでいる流通改善 つぎの一手」
上原清一様(日販ネット営業部部長)
主な項目
日販における物流統合後のネット書店用在庫の稼働状況
Webエリア在庫のメンテナンスはどう変わったか
販売・受注実績から需要予測へ
越境ECとの連携
複数ECサイト出店事例
 
★日販物流センターの統合の状況や「需要予測」を使った(アマゾン等の)「予測在庫化」の取り組み
など、新しい取り組みの結果をまじえての明るい未来につながる話などが情報提供されます。
2018年2月2日(金)
18時開始〜21時終了予定
日販本社ビル/お茶の水(5階会議室)
 
★研修の内容に鑑み、受講対象者を出版社(出版協の会員社・非会員は問わず)に限らせていただきます。
 
 
お申込み方法
*研修費:出版協会員社・賛助会員=各回1000円(非会員各回2000円)
*懇親会(お申し込みください)、研修後に開催。ネットワークを広げる機会としてご利用ください。
 参加人数、お名前、版元名、懇親会の参加有無をメールにてお申し込みください。
 全3回を受講いただくと、より全体像が鮮明になると存じます。
 ご取材の際(第1/第2講座)は、その旨、お申し添えください。 
 
 
*申し込み先
一般社団法人・日本出版者協議会(出版協) 事務局:水野寛
東京都文京区本郷3-31-1 盛和ビル40B
TEL:03-6279-7103/FAX:03-6279-7104
Email:shuppankyo@neo.nifty.jp

2017年11月 6日 (月)

2017年11月61号(通巻285号)

1p ・・・・・・・・「ほんのひとこと」

「出版協ブックフェス開催しました」
出版協理事 金岩宏二(現代書館
2p-5p ・・・・・・・「FAX新刊選11月に出る本」(出版協Books)

出版協ブックフェス開催しました

 9月9日(土曜日)、「第0回 出版協ブックフェス」を、東京の千代田区「在日本韓国YMCAアジア青少年センター」で開催しました(朝10時~18時まで)。
 出版協として開催した初めての「ブックフェア」でした。当日は爽やかな秋晴れで、来客萬来ならば言うことなしで楽しい年末が迎えられるはずでしたが、なかなか期待通りに行かないのも、世の常でしょうか。
 以下、反省点も含め今後のために報告いたします。
●出展社 あけび書房、凱風社、解放出版社、海鳴社、共和国、現代書館、現代人文社、合同出版、こぶし書房、コモンズ、彩流社、三一書房、三元社、自然食通信社、社会評論社、不知火書房、新宿書房、新泉社、知泉書館、筑波書房、南方新社、パイインターナショナル、晩成書房、批評社、ぺりかん社、木犀社、唯学書房、リベルタ出版、緑風出版 
計29社。
●売上 全社総額 約40万円弱
●メディア掲載実績 事前掲載・新文化、図書新聞、週刊読書人、毎日新聞朝刊、東京新聞朝刊
●その他事前告知手段 ポスター掲示・東京堂書店神保町店、千駄木往来堂書店、千代田区図書館 ならびにTwitter
 参加された出版社から以下の三点のご意見を頂きました。
①集客・売上が少なすぎた。その原因として、告知不足、場所が悪い、出版協の単独開催であったのも客を呼べなかった一つの要素かもしれない。
②合計3回あった、トークイベントが販売の妨げとなっていたのではないか(ブックフェスの会場とイベント会場が同じ所で、トークを聞くために集まった来場者が会場の中央の席に座ってしまった。そのため、トークがいったん始まったら終わるまで、会場内を回って展示してある本を眺めるということがまったくできない雰囲気となってしまった)。また、トークイベントの内容も一般読者向きというよりは業界・関係者向けではなかったのか?
③定価販売だけでなく、もっとこの日だけの値下げ販売も検討してよかったのではないか? 等々。
・開催会場に関しては、古くからの本屋街である神保町にも近く、必ずしも不利な条件とはいえないのではないか(会場を1日借りる経費も、都内の他の会場と比較すると格段に安かったのです)。
・トークイベントに関しては、反省すべき点が多かったと思います。イベントの内容はまだまだ考える余地はあったと考えます。トークイベントの設営はブックフェスの会場中央に椅子を配置したことで、お客様が通路を回遊できなくなりました。イベント用に会議室を別に借りるなどすべきでした。
・値下げ販売に関しては、出版協が主催する以上、定価販売以外の案は考えられませんが、B本や、ヤレ本についてはその旨、明記の上で販売可、と事前説明会の際に各社へ伝えています。
 イベント運営では様々な問題点・反省点がありますが、やはり最大の問題点で課題なのは「集客」問題です。来場者アンケートによると、今回のフェスを知るきっかけとして一番多かったのはTwitter(56%)でした。そのほかは口コミ、知人の紹介が多く、意外にもマスメディアや書店告知経由での認知はゼロでした。 
 今回の「ブックフェス、イベントに行ってみよう」という要因として、一番多かったのはSNS(Twitter)。これは、新刊・既刊の告知にも有効です。このSNSへの取組を大きな課題として考えていこうと提案します(参加社のうち半数はSNSを実施していないことに鑑み、まずはSNSとは何かからの勉強会を開催していく予定です)。
 また、告知の方法としてインターネットのみならず、神保町界隈の書店さんでチラシを配布する方法なども考えられました。これについては、各版元の協力が必要です。さらに、出品書籍のジャンルによりマニアに告知する方法も必要で、そうした告知方法も検討すべきだと思います。マスメディア経由の認知ゼロはショックですが、良い方法があれば出し合いましょう。
 次回の開催は現段階では決定してはいませんが、「これにめげず、壁をぶち破って次回も開催したら」という心強い声援も頂いております。知恵を振り絞って、頑張っていきましょう。
出版協理事 金岩宏二(現代書館

2017年10月 6日 (金)

2017年10月60号(通巻284号)

1p ・・・・・・・・・・「ほんのひとこと」
「遺品が語る沖縄戦」
出版協理事 髙野政司(解放出版社
2p-5p ・・・・・・・・FAX新刊選10月に出る本/出版協Books

遺品が語る沖縄戦

「空気なんか、読まなくていいじゃない。ほんを読もうよ。」のキャッチフレーズの下、第0回出版協ブックフェスを9月9日に東京の神保町近くで行いました。関係各位の皆さま、またご来場くださった方々に感謝の言葉を申し上げます。
 今年の夏はこうしたイベントをはじめ、いくつかのトーク会、フィールドワークや展示会に参加しました。その中で今回の「遺品が語る沖縄戦」の展示を見る機会をえました。場所は大阪市内のさるお寺の中で実施され、この後、ほかの地域でも開催の予定ということです。
 沖縄は、1945年3月、先の太平洋戦争でご存知のように日本で地上戦が行われた唯一の地です。その沖縄で、各地の壕に入りながらたった一人で沖縄戦の遺骨・遺品を収集されてこられた国吉勇さんがおられます。その方は老齢のため、2016年3月に収集をやめ、ご自身が造られた戦争資料館で約12万点の遺品を展示し、来館者に自ら説明されているそうです。
 展示会は、この遺品を保存・継承することと、収集の活動を全国に向けて発信することで、沖縄戦の凄惨さを全国で共有し、これからの平和について議論する場を創出することをめざした若者たちが、開催しました。
 今回の展示は、沖縄にある戦争資料館から53点を選んで運んでこられたものです。70年以上も経っているモノばかりですので、輸送や収納の作業など大変だったとのことです。すべて当時の「現物」であるため、見る側では直接に手で触れたり、持ちたくなる方もいます。そのときは主催の方々が瞬時に、そしてやさしく注意をしています。53点の内訳は「住民の生活用品」が11点、「壕を支えた道具」6点、「日本軍の武器」10点、「医療を支えた道具」14点、「日本兵の持ち物」12点でした。
 どれも年数物ですが、カタチはそれなりに分かるモノばかりでした。それらが見つかった場所やその状態の説明文を読み、また話を聞きながら、「現物」から受けた私の衝撃や感想を文章で伝えるのはなかなか難しいことですが、以下、数点について、その紹介をさせていただきたいと思います(以下の文章で「 」は各々の遺留品の説明書からの引用です)。
 糸満喜屋武陣地壕で収容の万年筆(住民の生活用品)は「余暇時間に壕で手紙を書くのに使ったもの。多く出土する遺品の一つで、…戦争資料館にも200本以上収容されている。当時、万年筆にフルネームを彫り込む習慣があったため、遺族に返還できることも多い。」
 糸満大里陣地壕で収容の工作用のドリルの刃(壕を支えた道具)は「壕を掘るときの工作(例えば壕に電気を通すために壁に穴を開けるとき)に使われた。ドリルの刃が収容されたのはこの1点だけ」とのことです。
 真玉嶽陣地壕で収容の陶器製手榴弾<残骸>(日本軍の武器)は「鉄不足のため、沖縄の伝統産業である陶器で作らせた手榴弾。投げにくく、殺傷能力も金属製には劣った。」
 曲がった注射器(医療を支えた道具)。糸満新垣病院壕で収容。「ガラス製だが、火炎放射器で焼かれたために変形した。当時の壕の温度は1300度に達したと推測される。」
 杯(日本兵の持ち物)。白梅の塔の壕で収容。「銅製、切り込み隊が切り込みを行う前に、酒を飲み交わしたときに使われたと思われる。追い詰められて人が結集した場所などでまれに発見されることがある。」
 一式固定重機関砲<残骸>。「収容されたそのままの形を復元したもの。激戦地の壕のヘドロの中から出土した。重機関砲は1点しか収容されておらず、大変貴重である。重機関砲は、当初戦闘機の零戦に付けられていたものであったが、地上戦が激化したとき零戦から外して地上戦で使われたこともあった。今回は展示していないが、この銃と共に三脚が出土したため、地上戦で使われた可能性が高い。」展示者の話によると、地上戦では3分位しか続けて撃てないとのことです。熱を持ちすぎて支障が出るため、休んで冷やさなければならないとのことでした。あの零戦で使うなら風圧で冷却されるため休む必要はないとのこと、まさに飛行機で使用するための武器としてつくられたものです。
 今の沖縄における基地問題などを考えるうえでも貴重な機会であり、とても感慨深い時が過ごせました。
出版協理事 髙野政司(解放出版社

2017年9月 4日 (月)

2017年9月59号(通巻283号)

1p ・・・・・・「ほんのひとこと」

アマゾン号が砲撃を開始した
出版協副会長 上野良治(合同出版  
2p-5p ……FAX新刊選9月に出る本/出版協Books

2017年8月30日 (水)

アマゾン号が砲撃を開始した

欠品率の成績表
 去る8月9日、アマゾンから「貴社欠品状況と日販引当率」(先週1週間)をお知らせします、というメールがデータ添付で送られてきた。1週間前にも同様の成績表が来ている。「6月30日をもって、日販様、大阪屋栗田様へのバックオーダー発注を停止しており(中略)貴社に在庫があるにも関わらずamazon.co.jpで在庫切れとなっている状態を防ぎ、(中略)お客様に商品をお届けできる状態を作るための参考」との前口上付きだ。 
 このデータによると、先週1週間の欠品率:20. 9%――1万回の閲覧があったとすると、2090回は欠品状態になっていたというのである。 
 欠品状態では、「在庫あり」表記と比較すると、購買率が大きく低下するとコメントしている。
 
発注冊数、銘柄点数、引当数 
 この3点についてもデータが送られてきた。日販にスタンダード発注した総冊数の内、引き当てられた冊数は、16.5%だとされていた。アマゾンは日販に対して適切な在庫数をデータ開示しているという。
 
カート落ちとマーケットプレイス 
 カート落ち商品(買い物かごがなくなり注文不能になる)になると、アマゾンでは買えないことになる。もちろん、マーケットプレイスという第二市場が設けられているが、新刊発売後4週間でカート落ちして、マーケットプレイスで本体1500円の本が4800円で出品されていたという版元の話を聞いた。
   これはならじとこの版元は、マーケットプレイスに自社から1500円で新刊在庫を出品したという。
  北海道から翌日にはカニが届く時代。本を欲しい方の手元に遅滞なく届けられるように、日販―大阪屋栗田―アマゾンの間で不断のシステム改善を実行してほしい。日販さんの倉庫統合、ロングテール在庫充実の効果に注目している。
 
最恵国待遇と独禁法違反 
  アマゾンは「カート落ちや欠品状態の解消にはe託販売サービスのご利用」を勧誘している。e託を利用すると版元はアマゾンと直接やり取りすることが可能になるという。そう言えば6月末日までに直取引をすると契約条件を優遇するというお誘いもあった。
   一方で、6月にはアマゾンが「最恵国待遇」条項を取引先に求めていたことで、公取が独禁止法違反の疑いがあるとした。「俺との取引はもっとも安い価格でないとだめだぞ」という「最安値条項」は、優越的地位乱用の最たるものだろう。8月にもアマゾンは電子書籍での「最恵国待遇」契約の存在を認めてこの条項の破棄を発表した。
   「同等性条件」とも強弁していたそうだが、契約書にこの文言が入れば、納品業者はたまったものではないだろう。一番安くなければ、契約違反で取引を停止をほのめかされるだろう。
   契約書からこの文言がなくなったからと言って、アマゾン本社のビジネスマインドは変わるのだろうか。
  年間契約で、実績で契約条件見直しをし、あまつさえ契約の実質的な決定者が「会社」ではなく、部局の責任者に任されていて、その責任者も年俸で評価されているとしたら、取引するこちらとしては、「共生」の心根がない責任者に変わったらと戦々恐々である。
 
アマゾンは再販制を守るか 
    「一番安く仕入れて、どこよりも早くお客様に届ける」。後半は良い。前半を実現するには、つねにデータ評価で取引先との条件を「最適」なものにしていく。
   このビジネスマインドが基本だとすると、本の価格維持を担保している再販制をアマゾンは尊重するのか。
   一強、できれば独占ならなお結構、版元とアマゾンが直取引をするなら、取次はいらなくなる。書店はかろうじて街の新刊書籍・雑誌の見本展示コーナーになる。展示コーナーの機能だけでは、文化・学術施設で公営にするか、入場料経営になるだろう。
   これは、ある熱帯夜の明け方、悪夢にうなされた。
   「昔、出版界には取次があって、街々にあった書店では本が買えたのだ」 
   「4500社ほどの出版社があったが、今は、300社程度かな。それでも大したもので、『カント純粋理性の思索』という本が500部も売れるから、捨てたもんでもない……」 
 大変貌した出版界の未来図である。
 
出版社に求められるもの?
   カスケード発注、スタンダード発注、在庫ステータスなどなど、さまざまな新用語が飛び交う。ほとんど、営業部でもフォローできていない。
  学習と情報交換、出版社サイドからの読者・書店・取次・著者との関係再構築が必要になっている。とりあえずのスタートに、出版社間の情報交換から進めたいものである。(2017.8.28)
出版協副会長 上野良治(合同出版

2017年8月 7日 (月)

第0回 出版協ブックフェスの案内

「空気なんか、読まなくていいじゃない。本を読もうよ。」第0回出版協ブックフェス開催

p.3-p.4

出版協ブックフェス参加社一覧とイチオシ本

2017年8月 4日 (金)

<著作権法違反の共謀罪>の悪夢

 7月31日、警視庁組織対策部は、新宿区四谷2丁目所在の出版社、株式会社きょうぼう社の社長四谷ごうい(68)と、同社員三谷じゅんび(45)を著作権法違反の共謀の容疑で逮捕した。同社を家宅捜索するとともに、社長宅、関連出版プロダクション、印刷所など関係個所を家宅捜索した。2人は、共謀して、著作権者が不明な写真など十数点を、十分に調査もせず、あとで著作権者が申し出た場合に対処すればいいとして、無断で書籍に掲載し、出版しようと企てたものである。さらに、同対策部は、同社は資金面で暴力団との関係があるとみて、同社長と暴力団との関係を追及するとみられる。昨年7月施行された「共謀罪」での摘発第一号事件である。
 ――まさか、こんな記事が新聞に載ることはないだろうと楽観してはいられない。
 「共謀罪」(「テロ等準備罪」)が、去る6月15日、参議院本会議において、自民党、公明党、日本維新の会などの賛成多数で可決、成立した。早くも7月11日からスピード施行されているからである。まさに、捜査当局がいつでも使える法律になったのである。
 「共謀罪」は、市民の社会生活に大きな影響を与える法律であるが、国会では、迷走する法務大臣の答弁にもみられるように、法律の内容に関する討議は深まることなく、成立した。
 政府は、共謀罪はその適用を組織的犯罪集団に限定しているから〈一般市民、会社が対象になることはない〉といっていたが、成立した法律では、組織性は2人以上であればよく、それに該当するかどうかの判断は警察が決めることができるというものだ(もちろん最終判断は裁判所であるが)。
 また、犯罪の計画(共謀)だけでなく、「凶器を買うお金の用意」「犯行現場の下見」など「準備行為」が必要であるので、濫用の歯止めになるともいっているが、何が準備行為にあたるかを決めるのも警察である。
 共謀罪の対象犯罪は277あるが、この中で、特に出版社として警戒しなければならないのが、著作権法違反である。
 出版社にとって、著作権は多いに関係するところである。
 編集・出版活動の中では、写真、図版、文章などの引用は日常茶飯事のこととしている。もちろん十分に著作権に配慮して編集活動をしているが、グレーゾーンは必ずある。
 そうしたことを、編集活動の中で議論したり、資料を取り寄せたりすることは、立派な「準備行為」にあたる。もちろん「故意」に違反しなければいいのであるが、この故意の認定はいくらでもこじつけることができる。
 警察は、ターゲットにした出版社や編集者に対して、内定捜査をして、編集者の弱みを握って(たとえば、飲み屋にツケがあった場合、それを理由に詐欺容疑として逮捕するぞと脅せばいい)、その人から、「会社の誰々さんと、写真の掲載について検討した」との供述を得るだけで、逮捕令状、捜索差押え令状を裁判所に請求することは可能である。裁判所がチェックしてくれるなどと楽観してはいられない。裁判所での令状却下率は1%にも満たないからである。
 検察は、弁護人から公判で問題にされると思えば、起訴しないという判断もできる。警察ははじめから起訴されることを考えておらず、情報収集の目的で逮捕、捜索をすることもある。
 しかし、出版社にとって、社長や編集者が逮捕され、23日間も拘束されたり(実務では、起訴するまで23日間の拘束は原則。起訴されればさらに拘束が続く)、証拠品だとして会社のパソコンなどが押収された場合、編集活動はストップを余儀なくされ、回復不可能な損害をこうむることになる。
 編集活動がストップするだけでなく、金融関係からは「反社会的勢力」と認定されるおそれさえある。
 出版協の加盟社の多くが、社員は1人か2人であるから、すぐ会社の存続にも直結する事態にならないとも限らない。
 戦時下最大の言論弾圧とされる「横浜事件」は、雑誌に掲載された論文が発端となって、日本共産党再結成の謀議をしたとして治安維持法違反で、編集者、新聞記者など約60人がイモずる式に逮捕された。そのうち約30人が有罪、4人が獄死。現代の治安維持法、共謀罪の発端は、「編集者の会話」であったとなりかねない。
 こうしたことが起こらないことを願うとともに、日頃から共謀罪と著作権法違反との関係についても十分な警戒が必要となる。
出版協副会長 成澤壽信(現代人文社

2018年8月58号(通巻282号)

p.1  ほんのひとこと

<著作権法違反の共謀罪>の悪夢
出版協副会長 成澤壽信(現代人文社
p.2-p.4    「8月に出る本」(出版協Books)

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