2018年1月12日 (金)

2018年1月63号(通巻287号)

1p ・・・・・・・「ほんのひとこと」

「年末雑感」  
出版協理事 石田俊二(三元社
2p-5p ・・・・・・・・・「1月に出る本」(出版協Books)
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2017年12月27日 (水)

年末雑感

 本年もあとわずか。会員社にとって明るい話題は余りなさそうである。取次の半期の決算をみても、出版界そのものの低落傾向に歯止めがかかってはいない。
 そうした中、とりわけ話題になったのがアマゾンのバックオーダー中止である。突然で事情もわからず、どういった事態が起きるのかも分からず不安になった版元も多かったのではないか。小社も同様であった。まず、そもそもバックオーダーなるものが、いかなるものかさえ、分かっていなかった。ようは日販Web在庫等で調達できなかった商品を、アマゾンが直接発注を出すことをやめる、ということである。今まで、ともかくあらゆる商品を揃えて販売する、ロングテールの商品があるのが強み、といっていたはずなのだが、突然の方針転換である。
 と同時に各版元に対して、アマゾンとの直接取引を促す案内が頻繁にくるようになった。直接商品を入れれば、取次ルートに頼らず速く、しかもアマゾンの在庫が切れることがないから、販売機会を失うことがないという。日販Web在庫をメインに、取次からの取り寄せでは間に合わないということだが、アマゾン自身の倉庫に事前に仕入れて揃えておくという気はないわけである。
 小社はアマゾンとの直取引には応じなかった。一つには、正味を含む取引条件が折り合わないからである。しかもこれまで、洩れ伝えられる所では、1年契約であり、当初結んだ契約条件が、いつどう変更になるかは分からないからある。これでは安心して取引をできるはずがない。が、それにもまして、アマゾンのこれまでの版元に対する接し方がとても信頼できるものではないからだ。まず、担当者の顔がまったく見えない。返品も一方的に部署名だけで、責任者・担当者名の記入もなくメールで送ってくるだけである。注文部数にしても、需要予測にもとづいて自動発注しているのだろうが、その担当者・発注者など全く不明である。クレームの受付はメールだけである。小社商品についての過大なポイントサービスを中止して欲しい旨等、全く無視されている。これで信頼関係を構築するというのは無理があろう等々である。
 とはいっても、売上規模から会員社も含め不安が広がり、日販にどうなっているかを説明して欲しいと申し入れた所、快く応じてくれた(これは、快挙だ)。2月には、今一度、出版社に対し、倉庫統合後の王子在庫の状況なども含め講演をしてくれることになっている。これまで日販(その他の取次も)と出版協は対立することもあった。とはいってもどちらがなくとも成り立たない関係ではある。今後とも情報を交換し、お互いの要望を話し合っていければと思う。そして、2月の講演に先だって、11月24日に出版協理事と日販ネット事業部との情報交換会が行われた。版元がどのような情報欲しいのかを確認していただくため、また日販側の取り組みがどのようなものであるかなどの説明をうかがい、互いに意見を交換した。
 以前の情報交換会ですでにおおよそ伝えられていたが、倉庫の移転は、12月3日に完了予定であり、ネット書店に対応するために、ロングテール商品の在庫を充実させる。と同時に、リアル書店にも日販の在庫をNOCS等を通じて可視化し、客注に迅速に対応できる態勢をつくっていく。新刊等動きの大きい商品は、ネット書店の需要予測をこれまで以上に精緻化し、ネット書店からのオーダーに応える態勢の構築をはかっている、とのことである。もちろんネット書店側の協力も必要になってくるであろう。また版元も自社在庫の情報、とりわけ品切れ情報や、重版出来予定等を取次に的確に伝えていく必要がある。これは、ネット書店ばかりでなく、リアル書店が日販在庫を把握して客注に対応するためにも必要である。
 街の書店がなくなっていく中、規模が小さくとも、すぐに客注に対応できることで、お客さんの信頼を得ていってもらえるようにすることは、版元・取次にとって非常に重要な課題である。とはいえ、会員社にとって、在庫情報の更新を発信していくための、時間、労力等、なかなか難しいことも事実である。どう対応していくかは、今後の課題であろう。
 また、近刊・新刊情報は、JPO出版情報登録センターに早めに登録すれば、それを利用したサイト等で、書店さらに直接読者まで情報が届くようになってきた。ネット・リアル書店を問わず活用されていく。数年前とはまったく違う情報の流れができているので積極的に利用していくことが必要だろう。
 すでにほぼ語られたことを繰り返し述べたにすぎないが、年末に改めて確認した次第である。
 若手といわれた自身がすでに還暦となってしまった。世情もろくでもない話ばかりで、加えて生活保護の食費等の生活扶助について、政府は3年間で160億円程度減らすことを決めた。F-35戦闘機が1機150億円であるとのことなのに。どうも声を出せる所が、メディアでは出版社ぐらいになってしまったようである。暗闇のなかでこそ希望はみえてくるのではないか、と思いつつ、新しい年を微かな期待をもって迎えたい。
 会員社のみなさん、よいお年をお迎え下さい。
出版協理事 石田俊二(三元社

2017年12月 6日 (水)

2017年12月62号(通巻286号)

1p ・・・・・・・・・・・・「ほんのひとこと」

「私・今・そして/あるいは紙々の黄昏」
出版協理事 河野和憲(彩流社
2p-5p ・・・・・・・・・「FAX新刊選12月に出る本」(出版協Books)

2017年12月 4日 (月)

私・今・そして/あるいは紙々の黄昏

 この「季節」がやってきた。ここ数年、弊社(彩流社)では、一橋大学大学院言語社会研究科の院生をインターンとして迎えている。とはいえ、当初はこちらの意気込みもあって、複数の院生を迎え、「出版」にかかわる全般を、それぞれの分野の方々に直接お会いしてレクチャーを受けるという形で、差配人である愚生は奔走してきたのだが、あれやこれやの業務も増え、また寄る年波、肉体的精神的な疲弊が急激にすすんだこともあって、今年はひとりのみ(修士1年・S氏)の迎え入れとなった。
 とはいうものの、せんだって手にした冊子を読んでいたら、次のような文言が目に入ってきた。出版界の先輩、山本光久氏のことばである。「昨今、いわゆる〈人文知〉のみならず広く大学教育一般、いやむしろ教育全般に関して、近視眼的・成果主義的な抑圧政策が強まっていることは誰もが感じていることだろう。直近では、〈大学の専門学校化〉なる〈改革案〉(?)までもが飛び出した。有体に言って、これは常軌を逸した文言である。何を馬鹿な。その一方では、〈ノーベル賞〉的なるものへのあられもない垂涎ぶりがあり、無論これらは表裏一体で、とりわけ若い研究者たちの無用な足枷ともなっている(多くの文学者たちにとって優れた教育者でもあったエズラ・パウンドの口真似をすれば、〈教育機関〉ではなくて〈教育阻害機関〉ということ)。しかし、ここで現政権が、そもそも大学教育の何たるかを全く理解していないなどと今更のように慨嘆してみせても始まるまい。要は、文系・理系を通底する認識の〈筋力〉をいかに鍛えるかが常に問題になるはずだ」(「埋め草的に…」『ガラガラへび』228号・2017年11月、ぱる出版)。
 これまでも、著者・訳者とのお付き合いのなかで、学生の「学力」の低減についての話題を仄聞することが多かったが、この出版不況のなか、なにはともあれ意欲ある学生にはできるかぎり、われわれ出版界の者は「応えていくしかない」のだと奮起を促されたのだった。
 というわけでこの勢いをかって、まずは代表的な「ひとり版元」の下平尾直氏にお会いし、お話を伺った。氏は「出版」にまつわることを大所高所から、さらには微に入り細を穿って、いつにもまして熱く語ってくれた。要諦はコレだ。「なぜ本に惹かれるのか……。簡単なことだ。本には思想があるからさ。本にはなにがしかの思想が書かれている、という意味じゃない。本というものそのものが一個の思想なんだ。きみたちの好きなカネに思想があるように、本にも思想がある。どういう思想かって? 本はひとを幸福にする。本は、執筆者や読者だけでなく、それをつくるひと売るひと流通させるひとなど、それに関わるひとすべてを幸福にするんだ。たとえそれがエロやグロやゴミみたいな政治家や芸能人のゴシップであったとしても、本を媒介にすることによって、ひとは幸せになり、豊かになる。本さえあればカネなんかなくても生きていける。いや、そんなにカネがほしいなら、カネを生み出すことだってできるだろう。だからおれの夢はこの国を、いや、国なんかいらない、この世界を、花やカネやジヒギトリの代わりに本で埋め尽くすことなんだ。それが思想なのさ。あの棚やこの棚にあるすべての本を、ほら、きみの部屋の本棚へ!」(「ページの奴隷、編集者!」『大学出版』112号・2017年秋、大学出版部協会)。嗚呼、むべなるかな。
 そして次はハードルが高い、「紙・印刷・製本」についてのレクチャーである。差配人としては、すでに「年末進行」的繁忙期を意識せざるをえず、普段からお付き合いをいただいている明和印刷・田林明良氏に、印刷・製本に関しての工場見学およびレクチャーを思い切って依頼してみたところ、快諾を得た。ありがたい。「印刷することと出版することは、もはや同義ではない。デジタル・パブリッシングの時代にあっては、両者は異なるものである。また、〈プリントアウトされたもの〉と、〈印刷されたもの〉が肩を並べるようになる。我々はアナログ紙の上に書き、書かれたものを読む。また我々は、電子ペーパーの上に書き、書かれたものを読む。(ポール・)ヴァレリーの細菌には、まだまだやるべきことがたくさん残っている。これから当分のあいだ、我々は依然として紙の時代に生き続けるのである」(ローター・ミュラー『メディアとしての紙の文化史』三谷武司訳、東洋書林)と、愚生のあたまのなかで鳴り響いていた。感謝多謝であった。
 ことほどさように、われわれは、著者・訳者をはじめ、多くの方々のお力添え、協力なしに「本」をかたちにすることなどできない。さらにいえば、「本」をダシにして多くの方々との「つながり」を追求しているといってもいいのかもしれない。
 出版協主催の勉強会でこれまで何度か講師を務めていただいたブックデザイナー・鈴木一誌氏は、著書で次のように記している。「あらゆる書物は、他の書物と引用や参照の関係をもっている。周囲から孤絶した本は、読まれ得ない。一巻の書物という単位すら、仮の仕切りなのかもしれない。デザインは終われない」(『ブックデザイナー鈴木一誌の生活と意見』誠文堂新光社)。 
 まさに拳拳服膺、以て瞑すべし。
出版協理事 河野和憲(彩流社

出版流通・販売問題研修会(全3回)の続報

拝啓
 みなさま
 ご健勝にてお過しのことと存じます。
 第1回流通・販売問題研修会(鎌垣大阪屋栗田執行役員ご講演)は、お陰様で満員大盛況で、3時間に
 及ぶ熱のこもった研修になりました(「新文化」11月30日(第3202号)で紹介記事掲載)。
 つづきまして、現状の書籍流通の問題点を踏まえて、
 
 第2回「出版社は流通・販売の課題にどう対応するか——取次・書店・読者にどんな情報を発信するか!」
 を開催いたします。すでに大勢の方々にお申込みを頂いておりますが、余席を設けますので、お早めに
 お申込みください。
 また、第3回(「いま、日販が取り組んでいる流通改善・需要予測 つぎの一手」日販ネット営業部
 部長上原清一講師)もすでに多数のお申込みを頂いております。会場が変わり、日販本社のホールを
 お借りして開催いたします。お早めにご予約ください。http://shuppankyo.cocolog-nifty.com 
 *ご案内重複、ご容赦ください。

■第2回「出版社は流通・販売の課題にどう対応するか——取次・書店・読者にどんな情報を発信するか!」
●講師の紹介:高島利行語研取締役営業部長
東北大学理学部、東京藝術大学美術学部芸術学科。(株)IDGコミュニケーションズ(現(株)IDGジャパ
ン)出版販売部にて勤務。1999年(株)語研営業部入社。2005年2月より現職。
JPO近刊情報センターの起ち上げ時から参加、出版情報インフラ構築、流通問題の論客。JPO普及部会委
員。業務でもさまざまな情報発信を試みている。

■日時:12月7日(木)17時〜20時
会場:小石川運動場会議室(文京区後楽1-8-23) 
アマゾンが提起した出版流通問題、日販の倉庫・物流統合・需要予測システムなど、出版界のVANの
現状と課題、流通・販売問題の最新情報が公開されます。
いまさら聞けない「VAN」「在庫ステータス」「パブライン」など重要キーワードも丁寧に解説、すぐ
に使える役立つ、新刊・既刊情報を発信する際の有効例・失敗事例も種々紹介されます。
営業・広報・編集を問わずご聴講ください。どなたでも聴講できます。取材フリー。(出版協研修担当)

■申し込み先 日本出版者協議会(出版協)事務局・水野
shuppankyo@neo.nifty.jp

2017年11月 8日 (水)

出版流通・販売問題研修会のご案内(全3回)

研修会受講のご案内
【出版協プレゼンツ 出版流通・販売問題研修会】(全3回 2017年11月6日/第1報)
 
 日頃からの出版活動に対し敬意を表します。
 さて、この度、出版協では、連続3回の【出版流通・販売問題研修会】を企画いたしました。
 ご案内のように大阪屋・栗田の再編、アマゾンのバックオーダー中止と直取引への勧誘、日販の流通
 倉庫統合、日本出版インフラセンター(JPO)の出版情報システムの第二段階への移行など、大きな動
 きが起こっています。
 これらの最先端の状況を知り、次の一手を考えていく情報を共有するため、以下の講師陣による研修
 を計画いたしました。
いずれも出版流通・販売・情報システムの最前端で業務に携わる【プロ中のプロ】のお三方でござい
ます。このお三方の研修・情報提供の機会は、稀有なことと存じます。
 定員が限られております。ぜひ、出版協事務局までお早目にご予約ください。
 
 ご案内 出版流通・販売問題研修会(連続全3回)出版協/第1報)
(1)仮題「大阪屋栗田がいま考えていること——新販路の拡大という取り組みを中心に」
鎌垣英人様(大阪屋栗田 執行役員)
11月22日(水)
17時開始〜20時終了予定
小石川運動場会議室:文京区後楽1-8-23 電話03(3811)4507(JR飯田橋駅、地下鉄
後楽園駅)

主な項目】

 

●大阪屋栗田現況報告

 

●出版業界の現在の課題とその取り組み

 

1)取次というインフラの課題

物流(運輸)、倉庫

 

2)現在の書店モデルの課題

雑誌コミックの大幅売上減、打開策としての「本」以外の商材の現状

 

3)新しい書店モデルの創造

 

①書籍偏重小規模モデル(本専業)

 

②書籍と他商材(カフェ含む)との複合型

 

③別事業店舗に小ロットの書籍展開(ホワイエモデル) 

 

★研修の内容、目的から出版社の書店・取次担当者の方々、書店の方々、これから本を商材として
扱いたい小売店の方々の受講を歓迎いたします。大阪屋栗田の書店への新展開、新戦略が解説され
ます。
 
(2)仮題「流通・販売の課題に出版社はどう対応するか——取次・書店・読者に販促のための情報を
どのように届けるか」
高島利行様(語研営業部長)
12月7日(木)
17時開始〜20時終了予定
小石川運動場会議室(同上)
 
★出版情報集積・配信インフラの現状、出版社が出版情報を発信する際の手法事例などが紹介されます。
 
 
(3)仮題「いま、日販が取り組んでいる流通改善 つぎの一手」
上原清一様(日販ネット営業部部長)
主な項目
日販における物流統合後のネット書店用在庫の稼働状況
Webエリア在庫のメンテナンスはどう変わったか
販売・受注実績から需要予測へ
越境ECとの連携
複数ECサイト出店事例
 
★日販物流センターの統合の状況や「需要予測」を使った(アマゾン等の)「予測在庫化」の取り組み
など、新しい取り組みの結果をまじえての明るい未来につながる話などが情報提供されます。
2018年2月2日(金)
18時開始〜21時終了予定
日販本社ビル/お茶の水(5階会議室)
 
★研修の内容に鑑み、受講対象者を出版社(出版協の会員社・非会員は問わず)に限らせていただきます。
 
 
お申込み方法
*研修費:出版協会員社・賛助会員=各回1000円(非会員各回2000円)
*懇親会(お申し込みください)、研修後に開催。ネットワークを広げる機会としてご利用ください。
 参加人数、お名前、版元名、懇親会の参加有無をメールにてお申し込みください。
 全3回を受講いただくと、より全体像が鮮明になると存じます。
 ご取材の際(第1/第2講座)は、その旨、お申し添えください。 
 
 
*申し込み先
一般社団法人・日本出版者協議会(出版協) 事務局:水野寛
東京都文京区本郷3-31-1 盛和ビル40B
TEL:03-6279-7103/FAX:03-6279-7104
Email:shuppankyo@neo.nifty.jp

2017年11月 6日 (月)

2017年11月61号(通巻285号)

1p ・・・・・・・・「ほんのひとこと」

「出版協ブックフェス開催しました」
出版協理事 金岩宏二(現代書館
2p-5p ・・・・・・・「FAX新刊選11月に出る本」(出版協Books)

出版協ブックフェス開催しました

 9月9日(土曜日)、「第0回 出版協ブックフェス」を、東京の千代田区「在日本韓国YMCAアジア青少年センター」で開催しました(朝10時~18時まで)。
 出版協として開催した初めての「ブックフェア」でした。当日は爽やかな秋晴れで、来客萬来ならば言うことなしで楽しい年末が迎えられるはずでしたが、なかなか期待通りに行かないのも、世の常でしょうか。
 以下、反省点も含め今後のために報告いたします。
●出展社 あけび書房、凱風社、解放出版社、海鳴社、共和国、現代書館、現代人文社、合同出版、こぶし書房、コモンズ、彩流社、三一書房、三元社、自然食通信社、社会評論社、不知火書房、新宿書房、新泉社、知泉書館、筑波書房、南方新社、パイインターナショナル、晩成書房、批評社、ぺりかん社、木犀社、唯学書房、リベルタ出版、緑風出版 
計29社。
●売上 全社総額 約40万円弱
●メディア掲載実績 事前掲載・新文化、図書新聞、週刊読書人、毎日新聞朝刊、東京新聞朝刊
●その他事前告知手段 ポスター掲示・東京堂書店神保町店、千駄木往来堂書店、千代田区図書館 ならびにTwitter
 参加された出版社から以下の三点のご意見を頂きました。
①集客・売上が少なすぎた。その原因として、告知不足、場所が悪い、出版協の単独開催であったのも客を呼べなかった一つの要素かもしれない。
②合計3回あった、トークイベントが販売の妨げとなっていたのではないか(ブックフェスの会場とイベント会場が同じ所で、トークを聞くために集まった来場者が会場の中央の席に座ってしまった。そのため、トークがいったん始まったら終わるまで、会場内を回って展示してある本を眺めるということがまったくできない雰囲気となってしまった)。また、トークイベントの内容も一般読者向きというよりは業界・関係者向けではなかったのか?
③定価販売だけでなく、もっとこの日だけの値下げ販売も検討してよかったのではないか? 等々。
・開催会場に関しては、古くからの本屋街である神保町にも近く、必ずしも不利な条件とはいえないのではないか(会場を1日借りる経費も、都内の他の会場と比較すると格段に安かったのです)。
・トークイベントに関しては、反省すべき点が多かったと思います。イベントの内容はまだまだ考える余地はあったと考えます。トークイベントの設営はブックフェスの会場中央に椅子を配置したことで、お客様が通路を回遊できなくなりました。イベント用に会議室を別に借りるなどすべきでした。
・値下げ販売に関しては、出版協が主催する以上、定価販売以外の案は考えられませんが、B本や、ヤレ本についてはその旨、明記の上で販売可、と事前説明会の際に各社へ伝えています。
 イベント運営では様々な問題点・反省点がありますが、やはり最大の問題点で課題なのは「集客」問題です。来場者アンケートによると、今回のフェスを知るきっかけとして一番多かったのはTwitter(56%)でした。そのほかは口コミ、知人の紹介が多く、意外にもマスメディアや書店告知経由での認知はゼロでした。 
 今回の「ブックフェス、イベントに行ってみよう」という要因として、一番多かったのはSNS(Twitter)。これは、新刊・既刊の告知にも有効です。このSNSへの取組を大きな課題として考えていこうと提案します(参加社のうち半数はSNSを実施していないことに鑑み、まずはSNSとは何かからの勉強会を開催していく予定です)。
 また、告知の方法としてインターネットのみならず、神保町界隈の書店さんでチラシを配布する方法なども考えられました。これについては、各版元の協力が必要です。さらに、出品書籍のジャンルによりマニアに告知する方法も必要で、そうした告知方法も検討すべきだと思います。マスメディア経由の認知ゼロはショックですが、良い方法があれば出し合いましょう。
 次回の開催は現段階では決定してはいませんが、「これにめげず、壁をぶち破って次回も開催したら」という心強い声援も頂いております。知恵を振り絞って、頑張っていきましょう。
出版協理事 金岩宏二(現代書館

2017年10月 6日 (金)

2017年10月60号(通巻284号)

1p ・・・・・・・・・・「ほんのひとこと」
「遺品が語る沖縄戦」
出版協理事 髙野政司(解放出版社
2p-5p ・・・・・・・・FAX新刊選10月に出る本/出版協Books

遺品が語る沖縄戦

「空気なんか、読まなくていいじゃない。ほんを読もうよ。」のキャッチフレーズの下、第0回出版協ブックフェスを9月9日に東京の神保町近くで行いました。関係各位の皆さま、またご来場くださった方々に感謝の言葉を申し上げます。
 今年の夏はこうしたイベントをはじめ、いくつかのトーク会、フィールドワークや展示会に参加しました。その中で今回の「遺品が語る沖縄戦」の展示を見る機会をえました。場所は大阪市内のさるお寺の中で実施され、この後、ほかの地域でも開催の予定ということです。
 沖縄は、1945年3月、先の太平洋戦争でご存知のように日本で地上戦が行われた唯一の地です。その沖縄で、各地の壕に入りながらたった一人で沖縄戦の遺骨・遺品を収集されてこられた国吉勇さんがおられます。その方は老齢のため、2016年3月に収集をやめ、ご自身が造られた戦争資料館で約12万点の遺品を展示し、来館者に自ら説明されているそうです。
 展示会は、この遺品を保存・継承することと、収集の活動を全国に向けて発信することで、沖縄戦の凄惨さを全国で共有し、これからの平和について議論する場を創出することをめざした若者たちが、開催しました。
 今回の展示は、沖縄にある戦争資料館から53点を選んで運んでこられたものです。70年以上も経っているモノばかりですので、輸送や収納の作業など大変だったとのことです。すべて当時の「現物」であるため、見る側では直接に手で触れたり、持ちたくなる方もいます。そのときは主催の方々が瞬時に、そしてやさしく注意をしています。53点の内訳は「住民の生活用品」が11点、「壕を支えた道具」6点、「日本軍の武器」10点、「医療を支えた道具」14点、「日本兵の持ち物」12点でした。
 どれも年数物ですが、カタチはそれなりに分かるモノばかりでした。それらが見つかった場所やその状態の説明文を読み、また話を聞きながら、「現物」から受けた私の衝撃や感想を文章で伝えるのはなかなか難しいことですが、以下、数点について、その紹介をさせていただきたいと思います(以下の文章で「 」は各々の遺留品の説明書からの引用です)。
 糸満喜屋武陣地壕で収容の万年筆(住民の生活用品)は「余暇時間に壕で手紙を書くのに使ったもの。多く出土する遺品の一つで、…戦争資料館にも200本以上収容されている。当時、万年筆にフルネームを彫り込む習慣があったため、遺族に返還できることも多い。」
 糸満大里陣地壕で収容の工作用のドリルの刃(壕を支えた道具)は「壕を掘るときの工作(例えば壕に電気を通すために壁に穴を開けるとき)に使われた。ドリルの刃が収容されたのはこの1点だけ」とのことです。
 真玉嶽陣地壕で収容の陶器製手榴弾<残骸>(日本軍の武器)は「鉄不足のため、沖縄の伝統産業である陶器で作らせた手榴弾。投げにくく、殺傷能力も金属製には劣った。」
 曲がった注射器(医療を支えた道具)。糸満新垣病院壕で収容。「ガラス製だが、火炎放射器で焼かれたために変形した。当時の壕の温度は1300度に達したと推測される。」
 杯(日本兵の持ち物)。白梅の塔の壕で収容。「銅製、切り込み隊が切り込みを行う前に、酒を飲み交わしたときに使われたと思われる。追い詰められて人が結集した場所などでまれに発見されることがある。」
 一式固定重機関砲<残骸>。「収容されたそのままの形を復元したもの。激戦地の壕のヘドロの中から出土した。重機関砲は1点しか収容されておらず、大変貴重である。重機関砲は、当初戦闘機の零戦に付けられていたものであったが、地上戦が激化したとき零戦から外して地上戦で使われたこともあった。今回は展示していないが、この銃と共に三脚が出土したため、地上戦で使われた可能性が高い。」展示者の話によると、地上戦では3分位しか続けて撃てないとのことです。熱を持ちすぎて支障が出るため、休んで冷やさなければならないとのことでした。あの零戦で使うなら風圧で冷却されるため休む必要はないとのこと、まさに飛行機で使用するための武器としてつくられたものです。
 今の沖縄における基地問題などを考えるうえでも貴重な機会であり、とても感慨深い時が過ごせました。
出版協理事 髙野政司(解放出版社

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