新HPへの移行について(重要!)
関係各位 2018年9月3日より、出版協のHPをリニューアルいたしました。 新たなHPのURLはこちらです。 http://www.shuppankyo.or.jp これに伴って、現在ご覧いただいているブログページは更新を終了します。 (過去の記事については現在のまま残します。) 以降の新しい記事については、新HPをご覧ください。 日本出版者協議会
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「盗人の昼寝」という諺がある。「何の気なしにふるまっているように見えながら、実はある目的や思惑を隠し持っている」ことのたとえで、泥棒が昼寝をしているのは夜、盗みを働くための準備であり、一見何気ないふるまいにも悪だくらみが隠されているという意味だそうだ。誰が考えたか知らないが、ずいぶんと穿った見方というか深淵過ぎる人間観だ。人が昼寝している姿を見かけただけで、よくそこまで考えつくものだと感心する。世の中、昼寝以上に怪しいふるまいは山のようにあり、人様の立ち居振る舞いを見るたびにそこに隠された意図をいちいち探るというのは、なかなかに凄まじいテツガクだ。そこまで神経を擦り減らしている人こそ、ゆっくり昼寝でもして、リラックスするとよいのではないだろうか。
しかし、世の中、油断のならないものだということを改めて思い知らされる事件が周りで起きた。そのため、「盗人の昼寝」という諺を改めて考えてみたいとつい思った。
きっかけは、ある著者から入った1本の電話。「わたしの本が無料でダウンロードされ、配布されているらしい」という。詳しく聞けば、正体不明の謎めいたサイトで「本の内容が無料でダウンロードできます」と書いてあるそうだ。
連絡を受け、まったく「寝耳の水」の話だったため、著者に聞いた当該サイトを覗いてみる。「著者による無料ダウンロード」と書いてあり、あたかも著者が許可しているかのように見える。日本語で出版社名が載せられ、表紙画像まで出ている。もちろん、著者や出版社に、事前の申請や断り書きの文章が送られてきた事実はない。完全な海賊販であり、書名のみならず、著者の名前や版元名を許可なく載せていることから、とんでもない犯罪である。
どうかして相手を特定し、このサイトをやめさせることができないだろうか。このサイトにアクセスしてみようかと思ったが、事情をよく知る人たちに相談を持ちかけてみると、それはどうやら危険だということが分かってきた。かつては中国で、この種のサイトが横行し当局とのイタチごっこの捕り物騒ぎが繰り返されていたという。出版物だけでなく、映像や画像、漫画や写真が断りなく掲載されている。最近はそれが南米などに飛び火しているらしい。こうしたサイトはウイルスだらけで、アクセスすること自体危険で、うっかり何かのアイコンをクリックしようものなら感染必至だという。
まして相手を特定し、抗議したり、サイトを停止させるのは至難の技だそうだ。警視庁にはサイバー犯罪についての問い合わせ・届出窓口があるが、外国のサイトは取締りが困難で捕まえられないことも多い。現時点での警察通報はやめにして別の手を探った。政府のほうでも内閣府知的財産戦略局が昨年から対応を検討しているということが分かったが、まだ良案はないそうだ。
では民間はどうかと思い調べてみると、コンテンツ海外流通促進機構(CODA)という大手の音楽産業・映画・アニメ・出版会社が会員となっている団体が、国内外の政府機関や関連団体と連携し、違法アップロードされたコンテンツの削除要請、オンライン侵害者に対する直接的な権利行使等の活動をしていることが分かった。今回の件も対応をお願いしたいと思い、正式な要請の前に知人を通じてその旨を打診してみると、実は違法サイトへ削除要求を出してはいるものの実効性は不透明だという。取り組みがようやく始まったという段階らしく、海賊版撲滅の決定打というにはまだキャリア不足のようだ。
そもそも違法行為なので、削除を含む法的処罰もできてはいる。改正著作権法では、違法ダウンロードは懲役二年または二〇〇万円以下の罰金が科せられるようになった(親告罪)。警察に対応を頼むか考えてみたが、ここでも悩んでしまう。国家は本気になれば通信の遮断はできるだろうし、いくつかの違法サイトが実際に強制的に遮断されているとも聞くが、国家の通信取締りがどこまで許されるのか、というのは大きな問題だ。
著作権法保護が拡大解釈され、自由な表現の萎縮につながったり、強行な取締りが横行する事態を招来することは本意ではないと思い直した。そこで、前段階として文化庁の「海賊版に関するお問合せフォームからメールを出したが、数カ月経った今でも「梨の礫」。
自力救済できればいいのだが、先に述べた理由で、手を出せない。「こうしたサイトには触るな」という忠告を渋々拝受するしかないのか。
ネットの利便性を否定するつもりはないし、技術的にはあらゆるものが複写可能な時代になってもいる。その趨勢は個々人の意図にもはや関係ないところで、人類の知的環境を変え続けていく。しかし、引用でもパロディでもなく、著作物の正当な権利が蹂躙されることは、やはり文化破壊であろう。
「盗人の昼寝」という諺に含蓄を感じるのも殺伐としたものだが、昼寝が悪いわけではない、盗みが悪いのだ。ネットや複写技術が悪いのではなく、著作権侵害やサイバー犯罪が悪い。泥縄のような状態だが、それでも縄を編む手を考えていくつもりだ。
出版協理事 吉田秀登(現代書館)
出版協プレゼンツ/全3回「図書館研修セミナー」(第4報)
ーー日販図書選書センターの実際から
[講師]日販図書館営業部・図書館選書センター長・渡邊真嗣氏
[研修内容]
図書館という市場に本作り、普及の立場でどのようにアプローチするか? 2015年、日販は組織改編で、図書館営業部を発足させ、16年12月には学校図書館司書向け選書施設として、「図書館選書センター」をオープンさせました。学校図書館市場の現状、選書の現状、図書館配本のノウハウを研修します。
[開催日]2018年7月12日(木)
[時間]18:00~20:00(開場17:30)
[参加費]2000円(出版協会員者/賛助会員=1000円)
[定員]50名(予定)
[会場]小石川運動場会議室(Jr飯田橋駅、地下鉄後楽園駅/歩5分)電話03(3811)4507
講師:今人舎代表・稲葉茂勝氏
[研修内容]
日本の図書館仕様書の原型を作ったとされる編集プロダクションのレジェンド。図書館に並ぶ多くの本に「今人舎」「こどもくらぶ」編集が明記されています。各地の講演会で大盛況の講師。ぜひご参加ください。*2020年の教科書改定を控えています。
8月21日(火)
18時開始~20時終了予定
[会場]小石川運動場会議室(同上)
第3回 「学校図書館はどんな目で本を選び、どんな本を求めているか?――選書の現場からの報告と提案」(仮題)
講師:全国学校図書館協議会研究調査部長・内海 淳氏
[研修内容]
全国学校図書館協議会選定(学校図書館向け図書)、よい絵本選定(是非読ませたい絵本)、夏休みの本(緑陰図書)の選定など、学校図書館の充実発展と青少年の読書の振興を図る現場から、出版社と図書館を結ぶ方法を公開します。
9月11日(火)
18時開始~20時終了予定
[会場]小石川運動場会議室(同上)
事務局/水野 寛(みずの・ひろし)
東京都文京区本郷3-31-1 盛和ビル40B
TEL:03-6279-7103/FAX:03-6279-7104
shuppankyo@neo.nifty.jp
http://shuppankyo.cocolog-nifty.com/
一昨年の12月「教育機会確保法」(正式には「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の確保等に関する法律」という)が成立した。
主な内容のひとつは、不登校や在日外国人に対して夜間中学という学びの場の設置を謳ったことである。全国の都道府県で最低1校以上の設置を述べている。夜間中学は正式には「中学校夜間学級」という。現在は8都府県で31校が運営され2,000人弱が学んでいる。7~8割が在日外国人である。これは公立の学校であるが、これとは別に自主夜間中学が運営されており、約7,000人が学んでいる。夜間中学は戦後に開設される。戦争の傷跡からの復興の戦力のために学校に行けない生徒のために、または繁忙期の仕事の手伝いで学校に行けない人のために運営された時代もある。その後は、在日韓国・朝鮮人や被差別部落の人たちなどの学びの場として夜間中学が獲得されていく。
現在、不登校の児童生徒は10万人以上いる。中学校に限ると約3%の生徒が該当するということである。義務教育未終了者は百数十万にのぼるとされている。この法律はそういう意味では、憲法が保証する教育を受ける権利に対してその端緒を示したものということができるかもしれない。不登校のまま卒業をした「形式卒業者」に対して、以前は卒業を理由に認めていなかった再入学、いわゆる学びなおしを認めている。これは在日外国人にも適用される。また、不登校生徒は夜間中学への転校もできる。フリースクールについてはこの法律でその存在を認めた。そのほか、日本語教育が必要な場合の措置、必要と認められる臨機応変なカリキュラムの作成などを謳っている。
不登校は、児童生徒のいじめや教師の指導という名の暴力に耐えられないときなど、どうしても学校に行けない状況に追い込まれることが多い。または学校自体に馴染めない、きらいというときにも不登校は起きる。従来は、学校に「行けない・行かない」子をいかに行かせるかという問題設定で考えることが基準であった。しかし、この法律ではこのような「不登校児童生徒の休養の必要性」を述べ、学校に行かない権利を認めている。いままでも我慢や無理をしてまで学校へ行かなくてもよいという考えや提言、行動はあったが、このような考えに法的な根拠ができたカタチである。
文字・教育を取り戻す、または獲得する運動はいろいろと取り組まれている。弊社の関係でいえば、被差別部落では1950年代から識字運動・識字教室が生きていく力を取り戻す運動として取り組まれている。差別や貧困により教育の機会を奪われたなかで、文字を取り戻す運動である。現在、日本語獲得や夜間中学との連携を含め、各地で識字運動・識字教室はいろいろな方たちの協力を得ながら活動をしている。高齢者が多いなかで、2010年の調査では30%が30代までである。
国際的には国連の取り組みが知られている。1990年は国際識字年、この当時の非識字人口は文字をもたない文化をふくめ世界人口の6分の1ということである。2003年から2012年は、「国連識字の10年」として、各国それぞれに応じた子どもをふくめた識字活動が展開された。2015年には「持続可能な開発のための2030アジェンダ」で、識字の具体的な目標が掲げられている。
「教育機会確保法」は議員立法である。全国各地の不登校で教育の機会を失ってしまった関係者たちの教育の機会獲得の願いやそうした運動が、やはり在日外国人たちの生きていくために必要な文字などの獲得の願いや運動が、議員たちを動かした面が多いと推察する。また、2016年には「誰もが基礎的な教育を保証される社会の実現をめざして夜間中学、識字学級、地域日本語教室、障害者教育、生活困窮者支援など広い領域を視野に入れた」基礎教育保障学会が設立された。これらの動きはふだんあまり表には出にくい、発言力の弱い人たちの努力の結晶と言ってもよいのではなかろうか。
私たちにとって憲法が保障する必要な教育を受ける権利は、やはり憲法がいうところの不断の努力によってこの権利を保持しなければならないと思う。「教育機会」や基礎教育確保の運動はまさに足が地についた取り組みであり、これらの運動は出版文化との関連でも相互に作用して互いの進展につながるものと思う。
出版協理事 髙野政司(解放出版社 )
●日販レポート
今年3月、日販平林社長の記事が「文化通信」に掲載された。衝撃的な内容だった。結論的な要請は、運賃の分担金増額などを含む条件改定だが、取次経営が全体として赤字構造になっていて、取次との取引が赤字になっている版元口座は放置できない事態という。想像するに書籍に限れば高正味版元、大量送品(高返品率)、低定価(文庫、新書、コミックなど)が赤字の要因になっているのだろう。
また、赤字が大きい版元順に並べると上位何社が条件を改定すれば、当面の収支が改善されるのだろう。版元の対象を絞って取引条件の改定交渉に入るという。すでに日販以外の取次から運賃の高騰分の分担を理由に応分の負担を要請された版元があると聞く。
●詳細な「成績データ」
版元が取次との取引で気にしていたのは、正味と支払い条件、返品手数料、新刊委託部数などの額面であって、取次の経営が版元・書店の業態の中で、どんな構造になっているのか(平たく言って、取次が自社との取引でどんな収益になっているか)については、関心が向かなかったというのが正直なところだろう。
その意味で、日販レポートは衝撃的であった。版元との取引項目ごとに詳細な「成績データ」が作られているとのことだが、そのデータを渡された版元は、さっそく経営分析をしているのだろうが、取次・書店・版元を主要な担い手とする出版業界の収益構造が改善する方向性はどこにあるのだろうか?
●3つの分野の健全性の確保
①書店の健全性の確保──書店への取次出し正味は、平均どのくらいなのだろう。版元出し正味が70%、取次口銭が8%なら、書店の販売粗利は22%。書店も体力がさまざまであり、取次との取引条件も万別だと聞くが、30%の粗利がなければという書店側の主張があると聞く。
②取次の健全性の確保──雑誌の落ち込みが止まらない。雑誌配送システムとして成り立っていた流通が雑誌の部数低減によって流通コストをカバーできない。それを補填できるほど書籍で利益を獲得できない。版元正味を下げる要請が不可避になるのだろう。
③版元の健全性の確保──低正味(65以下か)、支払い保留などの厳しい条件が版元の経営を困難にしている。委託部数の削減、初版実売率の悪化によって、初版部数を減らさざるを得ない。定価を上げることは憚られることから、勢い原価率が上がってしまう。
●三すくみ的状況を脱出するには
以下まったくの試論である。さまざまな段階で大いに議論を活発にしたいものである。
①取次の状況、要請が版元に届いていない点──取次からの発信があった。定価アップ(20年間書籍の平均定価が上がっていなというから当然であろう)。月末新刊見本・委託の集中状態の是正(適切な分散が配本・普及の上で合理的であろう)。常々、取次の窓口では、仕入れ窓口に商談に来る版元営業に折りに触れて要請しているという。
大手版元の営業・編集・制作の意思形成過程がどのようになっているかは知るよしもないが、中小出版の場合、定価を決める場、進行を管理する制作部の段階まで取次の意向が伝わるが却ってむずかしい。営業の課題(取次との間の諸問題)を編集部(者)が共有する社内、業界風土を醸成したいものである。
②出版業界あげての読者へのキャンペーン──出版不況の言葉を知らない人はいない。出版関係者と知ると、「大変ですね」と慰められたり、励まされたりする。相手も出版不況の実態を知っているわけではなく、枕詞として使っているだけで、こちらの方も、「励ましてくれるなら、○○してくれ」という提案できるわけではない。
三者の共通(書店・版元・取次)になりうる目標を掲げてキャンペーンを張っていく必要があると思っている。
定めしそれは、読書の大いなる価値と文化行政的な支援(図書館、読書教育の予算の増額など)、本の価値の体現としての定価のアップ戦略ではないか、と思っている。出版文化を守っていく版元から読者への情報発信も、取次のプロモーション力の発揮も期待したい。
③版元が本を創る力・販売する力を研修する──物はたくさん作らないと上手くならない、たくさん作っているうちに洗練されてくる。ただし、粗製品を乱造しても一向に上手くならない。業界あげての編集・営業ノウハウの共有・教育のシステムの整備が必要だろう。
小さい研修からでいい。編集の先達、営業のプロ、経営の手練から体験や知恵、技術を教わる機会を増やしたいものである。
出版協副会長 上野良治(合同出版)
最近、こんな記事が目にとまった。
「予備軍『27万社』の衝撃 後継ぎ不足、企業3割」という見出しで、中小企業の後継者問題をテーマとするものである。それによると、①この20年で中小企業の経営者の年齢分布は47歳から66歳へ高齢化している、②2020年ごろには数十万人の「団塊の世代」の経営者が引退時期となる、③少子化や「家業」意識の薄れもあり、後継ぎのめどが立たない企業は多い、という。
そうしたことから、経営者が60歳以上で後継者が決まっていない中小企業は、日本企業の3分の1にあたる127万社に達する。事業が続けられず廃業すると、2025年ごろまでに650万人分の雇用と22兆円分の国内総生産(GDP)が失われる可能性がある、と警鐘をならしている(朝日新聞デジタル版4月1日)。
また、昨年7月〜8月に、東京商工会議所が東京23区内の中小・小規模事業者を対象として実施した「事業継承の実態に関するアンケート調査」でもこんな結果が出ている(配布数:非上場の1万社、回収率19.1%)。
経営者の年齢が60代で3割、70代を超えても半数近くが後継者を決めていない。親族外承継も年々増加し、約4分の1を占めるようになった。親族外の役員・従業員への事業継承では、社内での経験を積みながら暫時承継の準備ができるので、経営理念や経営のナウハウなどの継承はスムーズにいくというメリットはある。
一方、相続という手段で事業継承する親族内承継とは違って、借入金・債務保証の引き継ぎ・株式の承継などの資金準備が大きな課題である。なによりも大きな問題は、親族外の役員・従業員への事業継承では、後継者養成や後継者選びであるという。
この傾向は、出版協の会員社でも例外ではないだろう。多くの社は、70年代に創業しているし、創業が浅いところでも、70年代から出版社にいて独立したという経営者は珍しくない。私が知る限り、普段は出版協の経営者たちはみな元気で、体力・知力が尽きるまで働くんだという気概をもっている。私から見ても、エネルギーが全身からほとばしっていてさすが出版協の経営者だと感嘆するばかりである。日頃、事業継承・後継者問題にはさほど関心がないように見受けられる。
事業継承・後継者問題にあまり関心が向かない理由には他にもあるような気がする。多くの中小零細の出版経営者はなんでも屋で、編集をしながら経理も販売もこなしている。金融機関や取次など取引先との関係では個人保証も引き受けている。借入金やその個人保証を残したまま引き受けてもらうことにはなんとなく躊躇を感じるからだろう。
しかし、酒の席では、本人の健康問題とともに編集者探しや事業継承・後継者の話題は出る。最近、社長が病気で亡くなって経営が難しくなった、高齢でまわりに迷惑をかけたくないので健康であるうちに廃業の道を選んだという話も聞く。
私も60代前半に比べて体力は相当落ちてきて、元気でやっていけるのはあと10年くらいかなと感じるような年になった。事業継承・後継者問題を本気に検討する必要に迫られている。金融機関は融資の際はかならず後継者はいるのかということを聞いてくる。後継者がいないからといって融資を断られることはないが、金融機関は関心をもっているようである。
この事業継承・後継者問題で最近いろいろな方と話をすることがあった。事業継承というからには、資金面の手当ては重要だが、いままで培ってきた出版活動をどう継承するかが大きな課題であると指摘された。当然のことであるが、あらためて出版理念や出版傾向というものを整理するいい機会にもなった。
日本における出版物の多様性は最大の特徴で、それは中小零細出版社によって担われている。日本の出版文化は、中小零細出版社の持続的な発展なくしてはありえない。後継者がなく廃業していっては、先細っていくのは目に見えている。危機的状況である。
中小零細出版社では、毎日のことで忙しく先のことまで考えられないという向きもあるが、日本の出版文化の維持発展のためには、そろそろ事業継承・後継者問題にも関心を向ける必要があるのではないか。出版協としても事業継承・後継者問題に助言できるような体制づくりができなればいいなと思う。
出版協副会長 成澤壽信(現代人文社 )