2018年5月 2日 (水)

2018年5月67号(通巻291号)

1p ・・・・・・・・・・「ほんのひとこと」
「そろそろ後継者問題にも関心を向けたい」
      出版協副会長 成澤壽信(現代人文社
2p-5p ・・・・・・・・・・・・・「出版協FAX新刊選 5月に出る本」

2018年4月25日 (水)

そろそろ後継者問題にも関心を向けたい

 最近、こんな記事が目にとまった。

 「予備軍『27万社』の衝撃 後継ぎ不足、企業3割」という見出しで、中小企業の後継者問題をテーマとするものである。それによると、①この20年で中小企業の経営者の年齢分布は47歳から66歳へ高齢化している、②2020年ごろには数十万人の「団塊の世代」の経営者が引退時期となる、③少子化や「家業」意識の薄れもあり、後継ぎのめどが立たない企業は多い、という

 そうしたことから、経営者が60歳以上で後継者が決まっていない中小企業は、日本企業の3分の1にあたる127万社に達する。事業が続けられず廃業すると、2025年ごろまでに650万人分の雇用と22兆円分の国内総生産(GDP)が失われる可能性がある、と警鐘をならしている(朝日新聞デジタル版4月1日)。

 また、昨年7月〜8月に、東京商工会議所が東京23区内の中小・小規模事業者を対象として実施した「事業継承の実態に関するアンケート調査」でもこんな結果が出ている(配布数:非上場の1万社、回収率19.1%)。

  経営者の年齢が60代で3割、70代を超えても半数近くが後継者を決めていない。親族外承継も年々増加し、約4分の1を占めるようになった。親族外の役員・従業員への事業継承では、社内での経験を積みながら暫時承継の準備ができるので、経営理念や経営のナウハウなどの継承はスムーズにいくというメリットはある。

 一方、相続という手段で事業継承する親族内承継とは違って、借入金・債務保証の引き継ぎ・株式の承継などの資金準備が大きな課題である。なによりも大きな問題は、親族外の役員・従業員への事業継承では、後継者養成や後継者選びであるという。

 

 この傾向は、出版協の会員社でも例外ではないだろう。多くの社は、70年代に創業しているし、創業が浅いところでも、70年代から出版社にいて独立したという経営者は珍しくない。私が知る限り、普段は出版協の経営者たちはみな元気で、体力・知力が尽きるまで働くんだという気概をもっている。私から見ても、エネルギーが全身からほとばしっていてさすが出版協の経営者だと感嘆するばかりである。日頃、事業継承・後継者問題にはさほど関心がないように見受けられる。

 事業継承・後継者問題にあまり関心が向かない理由には他にもあるような気がする。多くの中小零細の出版経営者はなんでも屋で、編集をしながら経理も販売もこなしている。金融機関や取次など取引先との関係では個人保証も引き受けている。借入金やその個人保証を残したまま引き受けてもらうことにはなんとなく躊躇を感じるからだろう。

 しかし、酒の席では、本人の健康問題とともに編集者探しや事業継承・後継者の話題は出る。最近、社長が病気で亡くなって経営が難しくなった、高齢でまわりに迷惑をかけたくないので健康であるうちに廃業の道を選んだという話も聞く。

 私も60代前半に比べて体力は相当落ちてきて、元気でやっていけるのはあと10年くらいかなと感じるような年になった。事業継承・後継者問題を本気に検討する必要に迫られている。金融機関は融資の際はかならず後継者はいるのかということを聞いてくる。後継者がいないからといって融資を断られることはないが、金融機関は関心をもっているようである。

 この事業継承・後継者問題で最近いろいろな方と話をすることがあった。事業継承というからには、資金面の手当ては重要だが、いままで培ってきた出版活動をどう継承するかが大きな課題であると指摘された。当然のことであるが、あらためて出版理念や出版傾向というものを整理するいい機会にもなった。

 日本における出版物の多様性は最大の特徴で、それは中小零細出版社によって担われている。日本の出版文化は、中小零細出版社の持続的な発展なくしてはありえない。後継者がなく廃業していっては、先細っていくのは目に見えている。危機的状況である。

 中小零細出版社では、毎日のことで忙しく先のことまで考えられないという向きもあるが、日本の出版文化の維持発展のためには、そろそろ事業継承・後継者問題にも関心を向ける必要があるのではないか。出版協としても事業継承・後継者問題に助言できるような体制づくりができなればいいなと思う。

出版協副会長 成澤壽信(現代人文社

 

2018年4月11日 (水)

自民党文科部会議員・文科省による教育現場への介入に抗議する

政府行政機関を政権政党が自らの道具視し、行政機関の側もそれに進んで忖度する歪んだ構造が、また一つ白日の下に晒された。 

この2月、名古屋市立中学校で、前文部科学省事務次官の前川喜平氏が、「総合的学習の時間」で講演したことについて、文科省が名古屋市教育委員会に対して、30にものぼる質問項目を送り、前川氏を呼んだ理由や講演内容、謝礼の有無などを執拗に質し、さらには録音データの提供まで求めたことが明らかになった。

この調査に関して文科省は当初、前川氏の講演は報道で知った、質問は「自らの判断」とのみ主張していたが、319日になって、自民党文部科学部会会長の赤池誠章・同会長代理の池田佳隆両議員が、前川氏の講演を知って文科省に照会したことによって、この問題が浮上したことが明らかになった。さらに、文科省は、質問項目を事前に池田議員に見せ、その意見を反映させたものを市教委に送っていた。

その本質は、あきらかに加計学園獣医学部新設問題で「行政が歪められた」などの発言を続ける前川氏をやり玉に上げ、政権の意に沿わない人物に発言の場を与えることを躊躇させ、現場を萎縮させる効果を狙った行為にほかならない。明らかに、自民党文教族と文部官僚による事後検閲であり、学校現場への不当な介入であることははっきりしている。
 戦前・戦中の教育のありかたに対する反省にもとづいて制定された旧教育基本法は、第一次安倍政権のもとで、「公共」や日本の「文化伝統」を強調する方向で「改正」されてしまったが、現行の教育基本法においても、その第16条で「教育は、不当な支配に服することなく、この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべきもの」と規定している。その主旨が、時の政治権力による教育内容への介入から現場を守るための規定であることは明らかである。 

池田議員はかつて、「教育で大切なことは、日本人が長年培ってきた道徳的価値観を教えること」と述べ、安倍政権の進める道徳教科化を後押しした。ここにあるのは、内心の自由に属する個々人の価値観に、上から一定の枠をはめることが教育の役割であるとする思想である。私たち日本出版者協議会は、内心の自由、言論表現の自由を擁護する立場から、権力者によってひきおこされた前川氏と学校現場に対する言論弾圧事件に対して強く抗議する。

 

 

 

 

 

東京都迷惑防止条例の「改正」に反対する

 

 3月22日、東京都議会警察・消防委員会は、東京都迷惑防止条例の「改正」案(「公衆に著しく迷惑をかける暴力行為等の防止に関する条例の一部を改正する条例案」)を賛成多数で可決した。「改正」案は、29日の本会議で可決・成立する見込みと報じられている。
 私たちは、今回の「改正」案が、捜査機関による恣意的な濫用の危険を拡大し、労働運動や市民運動の規制、報道・取材活動への侵害等を可能とし、言論表現の自由を保障する憲法21条に違反するものであるととらえ、これに強く反対する。

 そもそも現行の条例自体が、警察による濫用の恐れを危惧され、批判を浴びて一度は廃案とされた代物であった。その「つきまとい行為等」規制については、「ストーカー規制法」が、規制するところの行為を「恋愛感情」等の充足目的の行為に限定しているのと異なり、「ねたみ、恨みその他の悪意の感情を充足する目的」という、きわめて主観的かつ曖昧な要件をもって、処罰範囲の拡大を可能とするものであった。その判断は事実上、現場の警察官に委ねられており、労働運動や市民運動が規制対象となりうる可能性があることは明らかだった。

 今回の「改正」案は、これらに加えて「みだりにうろつくこと」「電子メール(SSを含む)を送信すること」「監視していると告げること」「名誉を害する事項を告げること」「性的羞恥心を害する事項を告げること」を、新たな規制対象として処罰するというものである。

 とりわけ、「みだりにうろつくこと」「監視していると告げること」「名誉を害する事項を告げること」という項目は、労働運動における争議行為や、政治家やその政策を批判する市民運動の諸活動に適用され、その弾圧に使われる可能性が高い。また、マスコミ等言論機関や、フリージャーナリストの正当な取材活動に対しても、これらを理由として処罰することが可能である。さらに、「名誉を害する事項を告げること」に関しては、刑法の名誉棄損罪などのような限定がなく、単に主観的名誉感情が「害された」とするだけでこの条項に該当するとされる。それが親告罪でなく、「被害者」の告発がなくても捜査機関によって逮捕・起訴が可能となることの問題も大きい。

 この「改正」案は、捜査機関の権限を肥大化し、その恣意的運用を拡大するものであると言わざるを得ない。そしてそれは、言論表現の自由、知る権利、報道の自由という、私たちの活動に直結する問題にほかならないと考える。以上の点から、私たちはこの「改正」案に強く反対し、その廃案を求めるものである。 

 

 

 

2018年4月 4日 (水)

2018年4月66号(通巻290号)

1p ・・・・・・・・・・「ほんのひとこと」
取引格差の是正を  出版協会長 水野 久(晩成書房 
2p-5p ・・・・・・・・・・・出版協 FAX新刊選「4月に出る本」

取引格差の是正を

 昨年は、アマゾンの「バックオーダー」発注停止問題が、大きな話題となった。

 昨年4月に突然、出版各社に通告があり、7月から実施されたこのアマゾンの施策は、ロングテールの商品を多く持つ出版協会員各社にとって大きい影響を及ぼす可能性があることから、出版協では日販との情報交換に務めた。

 アマゾンは「バックオーダー」発注停止について、流通上の問題の解決を掲げているが、アマゾンが唯一の解決法として示した直取引(e託取引)への勧誘こそが、アマゾンのねらいであることは明らかだろう。「バックオーダー」の発注を停止すれば、アマゾンにとって、当面、読者の注文に応えられない商品が増えることになる。それを押しても強行したことから、アマゾンの、ここで一気に直取引を増やすという強い意思が感じられる。

 取次店を経由しないアマゾンとのe託取引は、各出版社が取次店と結んでいる再販契約とは何ら関わりのない取り引きとなり、定価販売が守られる保証はない。また、当初示される取引条件が変更されない保証もない。出版協では、再販制擁護の点からも、取引条件面からも、会員各社には慎重な判断を呼びかけてきた。

 会員社に適切な判断材料を提供するために、日販との情報交換は不可欠だった。この問題は、日販側もネット営業部が出版社への情報公開に積極的だった。出版社側に不安が広がれば、アマゾンと出版社の直取引(取次はずし)が拡大する可能性があることもそうさせた理由のひとつだろう。アマゾンの通告以後、日販ネット営業部とは、日販の倉庫統合問題、統合後の王子在庫問題などについて、さまざまな形での情報の交換を行い、ロングテール商品の販売に関して、取次在庫の多品種化を図り、アマゾンのみならず他の書店からの注文に対しても対応できる(つまり「バックオーダー」にさせない)商品を増やす体制づくりを進めていることなどを、会員社に発信することができた。

 今後も取次各社とは、情報交換・意見交換の機会を増やしていきたい。特に、アマゾンとの直取引の問題は、既存の取次の版元ごとの取引格差の問題とも関わっている。新規版元、また低正味版元への取引格差を是正していかなければ、アマゾンとの直取引が見かけ上、魅力をもってしまうことになる。この点は引き続き取次各社に是正を求めていきたい。

 ——と、昨年の問題を振り返って、3月7日に開催した出版協の定時総会の報告にしようと考えていたのだが、総会直後、取次に大きな動きがあることを知った。

 取次4社が物流費高騰を理由に出版社への追加負担の要請を開始したことが報道されたのだ(3月9日付「日本経済新聞」)。すでに2月段階から、取引額の大きい大手・中堅版元から交渉が始まっているという。3月19日付「文化通信」は、トップで「出版社に条件変更求める」として日販・平林彰社長へのインタビュー記事を大きく掲載した。

 雑誌の落ち込みと輸送経費の高騰、書籍の構造的な赤字などが理由とされ、「書籍の流通モデルを確立し、そこに雑誌の流通が載る」(平岩社長)と、雑誌流通に依存してきた物流体制の転換を目指すことが示され、そのために出版社に、正味引き下げを含む負担を要請するとされている。

 出版をめぐる状況が引き続き厳しいことは言うまでもない。1996 年の2 兆6,564 億円をピークに、減少を続ける紙の書籍・雑誌の推定販売金額は2017年は1兆3,701億円にまで減少した(出版科学研究所の調べ)。特に雑誌は、1996年の1兆5,633億円から、2016年の7,339億円へと急速な落ち込みだ。こうした長期の落ち込みの中で、2015年には栗田出版販売の民事再生、2016年には太洋社の自己破産と中堅取次店の破綻が続いた。いうまでもなく出版社数、書店数の減少も歯止めがかかっていない。

 何らかの変化が求められていることは間違いない。しかし、正味問題に踏み込むという今回の取次の提起は、今後の出版界の構造の根幹にかかわる大きな問題だ。根本的なビジョンとして、全体の取引の格差を解消する方向が明確に示されなければ、もともと低正味や支払保留など条件面で不利な状態にある中小出版社の理解は得られるはずもない。条件変更は最終的に個別交渉であることは言うまでもないが、提案は業界全体に関わるものであり、まず出版各社が検討できる論拠と全体像を示して、広く納得を得る努力をすべきだ。取次には、提起の根拠について充分な説明を求めたい。一方的に期限を区切って、強引に交渉を進めるようなことがあってはならない。

 それにしても複数の取次と同時進行で交渉を行うのは、ただでさえ交渉力の乏しい中小出版社には負担が大きい。今回の取次の足並みをそろえた交渉開始は、独占禁止法上、問題はないのだろうか。

 取次の交渉は取引額の大きい大手・中堅出版各社から始まっているとのことで、出版協に加盟する中小出版社のほとんどには現在のところ取次からの連絡はないようだが、条件面で不利な中小出版社が、個別交渉の下で更なる過重な負担を強いられ、取引格差が拡大するようなことがないよう、状況を把握し、的確に情報発信していきたい。

出版協会長 水野 久(晩成書房

 

2018年3月14日 (水)

会員社一覧●2018年3月現在

あ】

阿吽社

亜紀書房
あけび書房
梓出版社
あっぷる出版社
アーニ出版
ありな書房
一光社
インパクト出版会

【か】
海象社
解放出版社
海鳴社
花伝社
雁思社
吉夏社
気天舎
教育史料出版会
共和国
雲母書房
健学社
健康と良い友だち社
現代企画室
現代書館
現代人文社
皓星社
合同出版
コスモの本
こぶし書房
コモンズ

【さ】
桜井書店
彩流社
三一書房
三元社
三陸書房
自然食通信社
時潮社
社会評論社
出版人
松柏社
不知火書房
新宿書房
新泉社
水声社
数学書房
スタジオタッククリエイティブ
青灯社
世織書房
せりか書房
千書房
創森社
創土社
草風館

【た】
大蔵出版
知泉書館
筑波書房
柘植書房新社
東京漫画社
東信堂
同時代社
道玄坂書房

【な】
七つ森書館
南方新社
日本経済評論社

【は】
パイインターナショナル
白澤社
晩成書房
ひとなる書房
批評社
風濤社
風媒社
ブロンズ新社
ぺりかん社
北樹出版
歩行社
ポラーノ出版
本の泉社
ほんの木

【ま】
明月堂書店
めこん
木犀社

【や】
唯学書房
有志舎

【ら】
リベルタ出版
緑風出版
ロクリン社
論創社
 

2018年3月65号(通巻289号)

1p ・・・・・・・・・・「ほんのひとこと」
「「取次外し」への違和感
出版協理事 廣嶋武人(ぺりかん社
2p-5p ・・・・・・・・出版協「FAX新刊選3月に出る本」

2018年3月 9日 (金)

「取次外し」への違和感

 良くも悪くもアマゾンの動向が業界の話題をさらうようになってからもう何年も経ってしまっているが、今回もアマゾンの話題である。

 

 2018年2月15日の毎日新聞・朝刊に「印刷工場から本を直接調達[アマゾンが「取次外し」]」という記事が掲載された。

 その要旨は

1)バックオーダー中止で一部の商品だけでも直接取引する出版社が2017年中に660社増えて計約2300社に上った。

2)「アマゾン限定本」の扱いを始めた。

3)品切れ・絶版本を数百部単位で印刷会社から直接納品してもらうようにする。

といったところであろうか。

いずれも取引・物流に取次が介在しない点で「取次外し」ということになるのだろうが、会長の水野もコメントを寄せているとおり「中小出版社にとっては、すぐに関係する話とは受け止めていない」だろう。

 

 1)については、残念ながら新規に設立する出版社にとって現行の取次店の取引条件を考えると魅力的に見える。支払サイトだけでも資金繰りはかなり楽になる可能性がある。しかし、既存の出版社にとって初期の取引条件が圧倒的に良好というわけではない上、その条件が維持されるのか否かが不明瞭のため、全面的に直接取引に移行することは、考え難い。出版社側の管理の手間を考えるとトータルで有利な条件かということも再確認する必要があるため、会員各社には慌てないようにとお知らせしてある。

 また、アマゾンは「顧客のため」というのであろうが、その最大の武器であるはずの「ロングテール」商品は、「はやく」ではなく「入手できるか」に大きな意味があるはずだが、場合によってはアマゾンから入手できないという事態になりえることが容易に想像がつきそうなのだが、理解に苦しむところだ。

 加えて、出版協は、以前と比べ、日販のネット営業部と密に情報交換を行っていて、情報不足による不安に駆られる状態ではない。

 どちらにしても取次を回避して直接取引をしなければならない大きな動機には結びつかないだろう。

 

2)に関しては、CDの新作発売時には、比較的普通にとられている販売政策の亜流にもみえる。

昨今(特にアイドル関係の)CDが発売される際には、初回限定版を何種類かと通常版を用意した上、販売店によって種類の違う特典を付けることは、常態であって、それがアイドルの書籍に応用されたということであろう。

むしろ、CDと違って(シュリンク?)ラップ(に加えてスリップも?)が必須ではない書籍で「オリジナルカバー」と「生写真」の特典で、本文部分が共通であれば、大きな手間や、リスクがあるわけではないので、今までなかったことの方が不思議なほどである。

 

 3)については、印刷会社として名前があがっている2社と、想定されている増刷部数から、あまりリアリティがない。

 今後はわからないが、出版協の多くの社は、名前の挙がっている印刷会社2社には、こちらが取引を希望しても与信を盾に相手にしてもらえなかったこともあったはずで、取引先として入っている可能性は少なく、入っていてもメインではない上、この「増刷想定部数300から500部」というところから、いわゆるPODなどの技術を使った「小ロット印刷」によるものと推察されるが、増刷500部になれば通常方式で印刷したものと原価の点では大きな差は出てこなくなるはずで、わざわざ新規取引を始めて、アマゾンのためだけに商品をそろえることは考えにくい。

 また、何らかの理由で印刷所から直接書店に書籍を運び入れることがあったとしても、取引上は取次店経由になるはずだ。

 アマゾン側は「私たちは閲覧数のデータを持っている」というが、過去に人間の判断による発注ならば、まず慎重になるであろう大量発注をした上、返品の申し入れをしてきたことのあるところのデータをみたところで、どれだけの説得力と販売力をもつのかは甚だ疑わしいと考え、返品に備えるのが普通であろう。

 

 2月1日の文藝春秋に関する日経新聞の記事にしても、今回のアマゾンの発表にしてもなんともいえない違和感がある。

 直接取引が利益率を上げるのに大きな効果があるから、誘導したいのであろう。であれば、なぜ「直接取引以外は扱わない」と宣言しないのであろうか。

 「バックオーダー中止」を宣言したものの、取次の商品調達力には当面かなわず、失策を糊塗するために一生懸命「取次外し」という、気分だけの既成事実を積み重ねようとしていると思うのは、穿ち過ぎだろうか。

出版協理事 廣嶋武人(ぺりかん社

2018年2月20日 (火)

2018年2月64号(通巻288号)

1p  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・「ほんのひとこと」
「デジタルメディアと出版宣伝・広報との親和性」
出版協理事・三芳寛要(パイインターナショナル 
2p-5p ・・・・・・・・・・・・・・出版協「FAX新刊選2月に出る本」

«デジタルメディアと出版宣伝・広報との親和性