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2013年6月

2013年6月14日 (金)

出版協プレスリリース
2013年6月7日

●国会図書館と5日に面談、具体的に成果表れる

6月5日、10時半から12時まで、国会図書館にて、大滝国会図書館館長と面談しました。

大蔵出版が復刻した『大正新脩大蔵経』全88巻全巻、『南伝大蔵経』全70巻中21巻が、 刊行中にもかかわらず、著作権保護期間切れということで、原本がネット公開されていることへの異議申し立て・公開中止要求を軸に、国会図書館のデータネット公開・公立図書館への配信に関して意見を交換しました。

当日の話し合いを受けて、今日(7日)、国会図書館・田中副部長から高須会長に連絡が入り、
「国会図書館がインターネットで公開している、大蔵出版が復刻した『大正新脩大蔵経』、『南伝大蔵経』の原本データについては、今回の申し入れを受けて、国会図書館でどう対処するかという結論が出るまでは、館内閲覧に限定する。上記の結論がでるには、それなりに時間がかかる」
ということになりました。

出版協としては、今回は、面談の成果が迅速に得られたと思います。

今後、書協会員社など会員外の出版社に広く呼びかけて、同様の問題を抱えている出版社を集め、国会図書館の結論が納得できるものになるように、努力していきたいと考えています。

2013年6月 5日 (水)

「児童ポルノ禁止法」改正法案に反対する声明

●声明●2013年6月5日

「児童ポルノ禁止法」改正法案に反対する声明

「児童ポルノ禁止法」改正法案が、5月29日、自民党・公明党・日本維新の会の3党共同で衆議院に提出された。日本出版者協議会(出版協)はこの法案に反対する。
この「改正法案」はすでにある児童ポルノ規制の範囲をこえて、実在しない児童を描いた漫画やアニメを含めて規制が拡大・強化されている。これは、表現の自由を著しく損ねる恐れがある。

性的被害に遭っている児童を守るという本来の目的を大きく逸脱して、漫画やアニメの「非実在青少年」に関わる性表現を規制することには反対である。

さらに単純所持の禁止・処罰化も問題である。

出版協(当時は流対協)は2010年11月の東京都青少年条例に改定に反対声明を出した。同条例に、都民が「児童ポルノをみだりに所持しない責務を有する」とあるのは、権力による恣意的運用の危惧があり、不当な逮捕や、えん罪を起こす疑念があり、加えて、児童ポルノの定義が曖昧なままでの単純所持規制の新設は、過去に入手した出版物を破棄しなければならない義務が生じ、焚書そのものとなり、到底容認できないという観点である。

今回の「改正法案」も現行の曖昧な定義をそのままに「単純所持禁止」と「処罰規定」(1年以下の懲役または100万円以下の罰金)を設けており、反対せざるを得ない。かつて国会において、児童ポルノ処罰法が上程されたが、単純所持の処罰化に疑義が呈され、廃案になったことをふまえるべきである。

今回の「改正法案」では、規制対象が「漫画、アニメ・CG」と書かれており、これらの描写、表現を、公権力が恣意的に拡大解釈して規制できるようにするものであることが、よりはっきりした。

このような規制強化は表現の自由を著しく損ねる恐れがあり、児童を守るという本来の人権擁護の目的とはかけ離れたものとなっており、改めて反対を表明する。
以上

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2013年6月 4日 (火)

Amazon.com Int'l Sales, Inc. へ申入れ●Amazon Student

本日、アマゾンジャパン本社を訪問、
Amazon Student のポイントサービスの中止を求め、
Amazon.com Int'l Sales, Inc. への申入書を手渡しました。

今回は、もし改善されなければ、再販契約にもとづき、
出荷停止も辞さないという警告を含んだ要請になっています。

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●申入書

Amazon.com Int'l Sales, Inc. 御中
 
新緑の侯、貴社ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。

さて、2012年10月17日付および11月12日付の当会からの申し入れに対する2012年10月30日付および11月26日付の貴社回答は、まったく誠意のないものといわざるを得ません。貴社が公表、宣伝、実施しているサービスについての当会からの
 1.「Amazon Student」プログラムの10%ポイント還元特典の速やかな中止、と、
 2.「Amazon.co.jp」の価格表示について、再販対象書籍については「定価」と表示するよ  うに
 という2点の申し入れに付き、「個別の契約内容」に関することだとして、貴社は回答を実質的に拒否しただけでなく、当会の申し入れを完全に無視し、期間限定ではあるにしろ、15%ものポイントサービスまで実施しました。出版協ならびに会員各社は、貴社の「Amazon Student」プログラムの10%ポイント還元を値引きと認定しておりますので、ここに通知致します。

私どもは、再販制度を維持し、再販契約を誠実に遵守することが、出版および出版関連業界の発展につながり、ひいては多様な表現、多様な言論、つまり、言論・出版・表現の自由を支えてゆくことになる、と考えております。こうした再販制度を維持してゆくうえで、今や業界のリーディング・カンパニーの一翼をになう貴社の責任がきわめて大きいのは言うまでもありません。

その意味で、貴社が、私どもの上記2点の申し入れ、すなわち、値引き販売の中止および定価による価格表示の遵守の要求に、すみやかに対応されるよう、再度、強く要請致します。

なお、かりに貴社が今後も何の対応もとらないということであれば、私ども出版協の会員各社が、取次店との再販契約にもとづき、貴社に対する自社商品の出荷を停止するよう取次店に要請し、取次店がそれを実行するという事態にたちいたる可能性も、残念ながら、否定できません。

以上、7月1日までに文書でご回答下さい。具体的な対応策についての回答がない場合には、上記のような事態が惹起される可能性がありますが、それはすべて貴社の責任によるものであることを、あらかじめ警告致します。

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2013年6月 3日 (月)

出版協『新刊選』2013年6号 第8号(通巻232号)

出版協 『新刊選』
2013年6号 第8号(通巻232号)
1P …… 著作権隣接権から設定出版権の拡大への転換

高須次郎
緑風出版 )●出版協会長

2P ……文化審議会・著作権分科会・出版関連小委員会第2回提出書類

3P
……出版協BOOKS/6月に出る本

4P
…… 出版協BOOKS/6月に出る本

著作権隣接権から設定出版権の拡大への転換

去る5月29日に出版者への権利付与等を検討する文化審議会著作権分科会出版関連小委員会の第2回委員会が開催された。この日の委員会は、第1回委員会で事務局から提案された「『出版者への権利付与等』についての方策」について、関連11団体からのヒアリングを行い、権利付与の方向を決定する場であった。

「『出版者への権利付与等』についての方策」は、(A)著作隣接権の創設、(B)電子書籍に対応した出版権の整備、(C)訴権の付与(独占的ライセンシーへの差止請求権の付与の制度化)、(D)契約による対応、の4方策である。これら4方策は、文科省の「電子書籍の流通と利用の円滑化に関する検討会議」で検討され見送られた内容である。この検討会議では、出版界が出版者への権利付与を著作隣接権として実現することを明確に説得的に主張しなかったことが、見送りの原因ともなった。

これを受け、書協首脳が継続審議を文化庁に働きかける一方、2012年2月に衆議院議員の中川正春元文科副大臣(民主党)ら議員を中心に「印刷文化・電子文化の基盤整備に関する勉強会」が立ち上げられたのを機会に、議員立法による著作隣接権の制定を目指し、「出版物に係る権利(仮称)法制度骨子案」という形で具体的提言が打ち出された。

出版協は、「骨子案の問題点は、出版物として最初に固定した出版者の権利を守ろうというのではなく、出版者の権利を出版物に係る権利に置き換え、新たに組み直せば別の出版物原版となり、先行する出版物原版の権利が及ばないとの構成をとったところにある。そこには電子出版の流通促進という名分を借りて、文庫化が簡単にできるという文庫出版社の戦略が垣間見える。しかしこれでは競合出版と海賊出版を可能にし、アマゾンなど電子書店に出版物原版を奪われ、また出版物原版の真偽をめぐる紛争、裁判沙汰を蔓延させる可能性さえある。」「最初に発行した出版者へのリスペクトが皆無なのである」(高須次郎「日本出版者協議会の発足とその課題」『出版ニュース』2013年1月上・中旬号)等と骨子案の問題点を指摘し、練り直しを求めたが、そうはいかなかった。また設定出版権の電子出版への拡大を論文等で示唆していた文化庁の前次長吉田大輔氏の骨子案への批判も妥当なもので、「吉田氏の電子出版権の立場はとらないが、同感である」(同『出版ニュース』)と考え、出版協としては骨子案から離脱し、設定出版権の電子への拡大への方針転換を検討しはじめた。

こうしたなか2月19日に日本経団連が「電子書籍の流通と利用の促進に資する『電子出版権』の新設を求める」政策提言が打ち出され、3月13日の中川勉強会ガイドライン委員会に提言の説明に招かれた経団連に対し、「現行の紙の設定出版権にも第三者への再利用許諾(サブライセンス)を付与すること」を要望した。これを受け、書協や中川勉強会の内部では、骨子案で行くのか、設定出版権の電子出版への拡大で行くのかで意見が分かれた。中川勉強会は、急遽、隣接権に批判的な中山信弘東大名誉教授らの著作権学者に検討を依頼、同研究会から、電子出版等への「現行出版権の拡張・再構成」を内容とする「出版者の権利のあり方に関する提言」が打ち出された。この提言を4月4日に開催された第7回中川勉強会で諒承、中川勉強会の最終提言として、立法化するよう文化審議会著作権分科会へ提出した。出版協もこの勉強会に正式メンバーとして参加、中山提言を指示する旨の意見を表明した。

こうした紆余曲折を経て、5月13日に、著作権分科会出版関連小委員会の第1回会議が開催され、この会議で日本印刷産業協会提出資料 、日本漫画家協会書協 提出資料 がヒアリングを受け、日本印刷産業協会は経団連案を、書協は中山提言をそれぞれ支持し、漫画家協会は隣接権には反対だが現行出版権の拡大には話し合いの余地はあるとしながらも法改正に疑問とした。

そして29日の第2回会議を迎え、日本文藝家協会をはじめ11団体が次々にヒアリングを受けた。

日本文藝家協会日本美術著作権連合 提出資料は、現行法での対処を優先すべきで、新たな法制化には慎重で、Dの個別契約で対処できるとした。インターネットユーザー協会提出資料 もD案を支持した。日本美術著作権連合は、「著作権者の権利と利益を現状より縮小しないと約束する」など3条件を約束するなら、「(B)電子書籍に対応した出版権の整備」を考える余地はあるとした。日本写真著作権協会提出資料新聞協会、読者利用者側の主婦連合会 提出資料がB案を支持したのをはじめ、他の団体は、中山提言、経済団連案のニュアンスの違いはあるものの、B案を支持した。出版協もB案の中山提言を支持した(提出書類)。日本楽譜出版協会提出資料)は、クラシック楽譜などのコピー被害が著しいため、従来通りAの著作隣接権案を支持した。また電子出版制作・流通協議会 提出資料 からは特に態度表明がなかった。

ヒアリングの印象では、B案支持が大勢を占めた。小委員会委員間の討論の後、委員会主査の土井一史日大大学院知的財産研究科教授が、意見を集約し、小委員会としては「(B)電子書籍に対応した出版権の整備」を軸に今後検討していくことが決まった。

中山提言は、著作者との契約により設定される現行出版権を、電子出版に及ぶように著作権法を改正するものである。具体的には、(1)現行設定出版権における出版者による再許諾不可を改め、特約なき限り再許諾可とし、一次出版の後の他社での文庫化や、多数のプラットフォームでの配信などに出版者が対応できるようにする。また、(2)当事者の特約により、特定の版面に対象を限定した上で、その複写利用などにも拡張し、企業内複製やイントラネットでの利用許諾に対応できるようにする。などを骨子としている。

今後は、中山案の(2)の論点を中心に、(1)のうちの出版者に紙の再利用許諾を付与することなどが主な論点となりながら、中山案を軸に日本経団連案を含め議論が交わされていく模様だ。

出版協としては、設定出版権の電子出版への拡大案は、著作隣接権とは似て非なる「出版物に係る権利(仮称)法制度骨子案」よりは、ましであると判断して、B案を採った。しかし設定出版権の拡大に方針を切り替えたことで、保護の埒外になってしまった、著作権保護期間切れの出版物を新たに組み直したり、復刻や翻刻して出版物の刊行した出版者を、EU並みに保護するなどの対策を求めることが重要である。紙の再利用許諾は文庫化の対応策として必要なことはいうまでもない。

高須次郎(緑風出版)●出版協会長
出版協 『新刊選』
2013年6月号 第8号(通巻232号)より

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