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2013年9月

2013年9月 2日 (月)

いま出版社に求められていること──本の再販制度の内部崩壊を止めるために

声明(2頁参照)にあるように、ポイントカードによる値引きは、再販制度を内部から崩壊させるものとして、これ以上看過することはできない。

出版協加盟社のうち51社は、8月7日までに、Amazon.com Int'l Sales, Inc.に対し、学生を対象に10%もの高率のポイントサービスを実施しているAmazon Studentプログラムから自社商品を1カ月以内に除外するよう求める申入書を送付し、8月20日までに回答するよう求めた。同時に、除外しない場合は、再販契約書の規定に従い、取次店に対し、同社への出版物の出荷を停止するよう指示することもある旨の警告をした。除外を求めた51社の点数は4万1740点、アマゾンデータベース約70万点の6%にのぼる。

出版協は、会員各社の要望に基づき、昨年10月以来、3度にわたってその中止を求めてきたが、同社が依然として同サービスを実施し続けているためである。

私が代表を務める緑風出版は、8月21日、回答期限の8月20日付けアマゾンジャパン株式会社メディア事業部門長 渡部一文名義で「回答書」を受け取った。これによると」「Amazon.co.jpサイト(以下「弊サイト」は、弊社の関連会社であるAmazon.com Int'l Sales, Inc.が運営管理しているものであり、弊社はAmazon.com Int'l Sales, Inc.の問い合わせ窓口として本書を送付しております)とした上で、「弊サイトといたしましては、再販売価格維持契約の当事者ではない貴社に対して何ら申し上げる立場にないことから、大変申し訳ございませんが貴社の申し入れに対する回答は控えさせて頂きたく存じます」として、回答を拒否してきた。

小社は、この手紙に①代表者印や社印、自筆サインもないこと、②Amazon.com Int'l Sales, Inc.に対し回答を求めたのであって、アマゾンジャパン株式会社に回答を求めたのではないこと、を指摘した上で、
「小社は、日販および大阪屋と再販契約を締結し、前記取次2社は、Amazon.com Int'l Sales, Inc.と再販契約を締結していると取次店から回答を得ております。取次店は『出版業者と再販売価格維持契約書第三条に基づき』、小売業者と再販売価格維持契約を締結しているので、取次店を通じ再販契約を結んでいる小売店であるAmazon.com Int'l Sales, Inc.は、定価販売を遵守するなど、再販売価格維持行為の主体である出版社の指示に契約上従う義務があり、これに関連する質問等について回答するのは当然です」
と述べ、9月5日までに改めて正式回答を求める手紙を8月27日付けでAmazon.com Int'l Sales, Inc.宛に送付した。

同時に、取次店に対しても8月20日期限の回答が遅れているため、改めて期限を区切って督促している。

この一連のやり取りをみても、グローバル企業としてのアマゾンは複雑な会社である。取次店は、米国にあるAmazon.com Int'l Sales, Inc.と取引契約ならびに再販売価格価格維持契約をして、Amazon.com Int'l Sales, Inc.の業務委託をしているアマゾンジャパン株式会社に納品・請求し代金の支払いを受けているという。読者は、アマゾンジャパン株式会社から本を送付してもらい、領収書はAmazon.com Int'l Sales, Inc.名義となる。アマゾン・ドット・コムが国税庁から追徴課税されても税金を払わずにすんだことは有名な話だが、税金に詳しい人の話だと次のようなこともあり得るという。

つまりアマゾンジャパン株式会社は本をAmazon.com Int'l Sales, Inc.に輸出し、Amazon.com Int'l Sales, Inc.は日本の読者に輸出した形をとっているらしいのだ。そうするとアマゾンジャパン株式会社は、トヨタなど日本の輸出企業と同様に仕入れにともなう消費税を消費税の輸出還付金として還付を受けている可能性がある。またAmazon.com Int'l Sales, Inc.から日本の読者に売る場合は、税込み価格であるから、Amazon.com Int'l Sales, Inc.は米国で納税するという名目で消費税を日本に払わなくてすむ。これだけで9パーセント近い。こうしたことが原資になって値引きをされたら、紀伊國屋書店の高井昌史社長ではないが、「一般書店は競争にならない」ということになる。

一般書店の営業利益が0.2%~0.3%しかない現在、ポイント合戦に耐えられない書店は倒産・廃業するしかない。長期の出版不況で書店数は減り続け、ピークの2000年12月の2万3776店から倒産廃業が続き約4割減少し、2013年5月には1万4241店となってしまった。いくつもの有名なナショナルチェーンが経営危機になり、印刷資本や取次店の傘下になるほどである。

再販売価格維持契約は、出版社が小売店に対し定価で販売してもらうために、取次店を通じて、出版社→取次店、取次店→小売店、という形で結んでいる。アマゾンジャパン株式会社がいうように、形式的には出版社は再販売価格維持契約の当事者ではないかもしれないが、この理屈は通るまい。取次店はアマゾンと再販契約を結んで「定価を厳守し、割り引きに類する行為をしない」(再販売価格維持契約書第3条)と約定しているからである。

また、書店が再販契約に違反したときは、出版社の「指示」ないし「諒承」のもとに「乙(取次店)は丙(小売店)に対して警告し、違約金の請求、期限付の取引停止の措置をとることができる。」(同第5条)ことになっている。

しかも、公取委は、再販契約違反であるかどうかは「出版社が判断し、その意を受け取次会社も対処できるということです」(野口文雄公取委取引企画課長見解「再販制度の適切な利用に当たっての留意点」、出版ニュース2005年1月下旬号より)との見解を示している。

また、野口課長は「出版社が再販契約に基づいて言う場合であっても、自分の商品についてだけ止めてくれと言えるわけで、他社の商品についてまでは言えない。ポイントカードを実施しているところに対して、ポイントカードシステムを止めろとは言えないのであって、自社の商品は対象外とするようにと言えるということです。表示上から言うと、消費者向けにその旨を表示して貰うことになります」(同上)と述べている。つまり自社商品のポイントサービスからの除外要請については、出版社に許される行為であり、「消費者向けにその旨を表示して貰うことになります」というのは、Amazon.co.jpサイトにその旨の表示を求めることできるということである。野口課長は、現在公取委の審査局長で、独禁法の番人とも言える。出版協の除外申し入れ社は自らの意志で、この見解にそって順法・合法のやり方をとっている。

アマゾンには、書店の売上のトップ企業として、再販契約のルール、業界ルールを守って、その社会的責任をはたしてもらいたい。そして同時に、アマゾンのポイントサービス=値引きだけが問題なのではない。再販制度を壊してしまうような値引きが問題なのである。

出版業界は再販制度を守るために弾力運用をしなければと言ってきた、それが今日の事態を招いたともいえる。もう法定再販制の存続は確定したのである。再販制度を内部から崩してしまうような行為には毅然とした対応が必要だ。かつて書店がポイントサービスによる値引き反対に動いた時も、出版社はこれを見殺しにしてしまった。出版社は再販売価格維持の主体である。出版社が今度は動かなければならない。もし今回も手をこまぬくとすれば、本の再販制度は確実に内部崩壊しよう。そしてその責任は誰でもない。出版社自身にあるのだ。

9月早々にはアマゾンの回答が出てこよう。回答次第では、出荷停止に踏み切ることになる。

高須次郎緑風出版 )●出版協会長
『新刊選』2013年9月号 第11号(通巻235号)より

出版協 『新刊選』 2013年9月号 第11号(通巻235号)

出版協 『新刊選』2013年9月号 第11号(通巻235号)

1P~2P …… いま出版社に求められていること
──本の再販制度の内部崩壊を止めるために

高須次郎緑風出版 )●出版協会長

2P ……声明●ポイントカードによる値引き販売に反対します
──読者、書店、取次店、出版社の皆様へ

3P …… 出版協BOOKS/9月に出る本
4P …… 出版協BOOKS/9月に出る本

出版関連小委員会への再要望

出版関連小委員会への再要望

2013年 7月22日

一般社団法人日本出版者協議会(出版協、旧流対協)は、出版関連小委員会でこれまで議論されている出版者への権利付与の論点について、改めて次のように要望致します。

1 紙の出版物に係る再許諾についての要望

現行の設定出版権は、著作権者の権利である複製権のうち出版を引き受けるものについて出版についての独占的利用を契約で許すものとなっています。一方で著作権法80条3項は、出版権者が第三者に対して出版権の再許諾をすることを許していません。ある出版物を文庫などの形で他社から出版する場合、当該出版者が他社に対し再許諾できるようにすることは、実務上も設定出版権の趣旨からも必要不可欠と考えます。
現行設定出版権は、「立法当時、無断出版や競合出版に対して先行出版者の利益をどのように確保するかという議論が高まっており」(吉田大輔「電子出版に対応した出版権の見直し案について」『出版ニュース2012年10月上旬号』所収)、「無断出版や競合出版から出版者の利益を保護する制度で、著作者(厳密には複製権者)と出版者との間の『出版権設定契約』に基づき、出版者が取得する権利である」(同)。自らの発意と責任、経済的リスクにおいて出版を引き受けた第一次出版者が、他社での文庫化などに対し、再許諾をできるようにすることは、設定出版権の趣旨からも合理的です。

現在、日本の出版社3676社(出版年鑑2013年版)のうち文庫を発行している出版者は九十数社172文庫(同)程度であり、他社への文庫化の許諾は実務上もルール化が求められています。

自社出版物が文庫出版社によって文庫化される場合、もっぱら中小零細出版社である原出版者(一次出版社)は受け身の対応となり、正当かつ充分な経済的補償を受けられないため不満が多く、文庫化に消極的です。

紙の出版物に係る再許諾について、中山提言どおりに可とするよう要望致します。

2 中山提言①「現行出版権の電子への拡大」についての要望

現在、本の電子書籍化は、既存の出版者が保有する紙の本を電子書籍化するというケースが圧倒的です。しかしながら、例えば緊急デジタル化事業においても、そのための法的整備がなされていないことなどから、多くの出版者が積極的になれない問題が生じました。その意味でも、著作権法第80条(出版権の内容)を「出版権者は、設定行為で定めるところにより、頒布の目的をもって、その出版権の目的である著作物を原作のまま印刷その他の機械的又は化学的方法【ないし電子的方法】により文書又は図画【または電子出版物】として複製及び【送信可能化を含む自動公衆送信】する権利を有する。」と改定するなど、紙の本からの電子書籍化を促進にするために、現行設定出版権の電子への拡大という中山提言①で法改正するよう要望します。
また、デジタル・ネットワーク社会に対応した出版物の電子書籍化や海賊版対策など出版物に係る権利侵害への対応から「出版者への権利付与」が検討されてきた経緯を踏まえ、権利の主体については、出版権者とするよう要望します。

3 中山提言③「特定の版面の利用」についての要望

提言①、②では、紙の出版や電子出版に限定されるため、出版物の一部=特定の版面をコピーするなど複写利用する場合、許諾を求められても、許諾したり、使用料を請求したりすることができません。グーグルブック検索問題では、日本の出版社の本がグーグルによって無断スキャニング=複写されても、出版者が権利の当事者となれないということが露呈し、グーグルの違法行為を当事者として差し止めできないことが明らかになったため、著作権者、出版者の対応を混乱させました。

こうした複写利用等の許諾は日常的に出版社に個別に問い合わせが来ますが、法的根拠があいまいなまま、許諾が行われたり、著作権者への問い合わせを促したりするなど、個々ばらばらに処理されているのが現状で、著作権者に経済的利益ももたらされていません。

また小委員会における複製権センターの報告でも、個別の複写許諾は年間数十件とのことで、許諾を受けるべきケースの大半が無断で複写されていると推定され、著作権者、出版者の逸失利益はかなりのものと考えられます(出版協関連団体の著作権管理事業者である一般社団法人日本出版著作権協会の年間処理数と大差がありません)。また近年は大学などでのイントラネットなどでの利用の申し込みも増え、これへの対応も迫られています。

中山提言③は「当事者の特約により、特定の版面に対象を限定した上、その複写利用などにも拡張可」にすることでルール化し、こうした出版実務上の解決に資するものです。著作権者と出版者の特約等により出版物の特定の版面をコピーなど複写利用することや、LAN等のイントラネットで利用するなど、「出版・電子出版とはいえない利用」(「提言に関する補足説明」)が可能となり、出版者が許諾を与えたり、使用料を求めたりすることができるようになれば、著作権者にも経済的利益がもたらされるうえ、問合せ先が出版者に絞られることによって利用者の利便性も向上すると考えられます。

中山提言③「特定の版面の利用」についても、提言どおりに可とするよう要望致します。

以上

出版関連小委員会への要望

出版関連小委員会への要望


2013年 5月29日


一般社団法人日本出版者協議会について

一般社団法人日本出版者協議会(以下出版協)は、著作物再販制度の擁護、出版の自由、中小出版社への取引条件差別の是正などを目的に、1979年に結成された出版流通対策協議会(以下流対協)を前身とする出版業界団体で、会員社は現在95社。もっぱら人文社会科学、自然科学などの学術専門書、教養書など少量出版物を発行する中小零細出版社で構成される。

要 望


1 出版者への権利付与等については、「B 電子出版に対応した出版権の整備」を希望します。出版者への権利付与については、現在も著作隣接権が望ましいと考えていますが、「印刷文化・電子文化の基盤整備に関する勉強会」(座長・中川正春衆議院議員=中川勉強会)によって提案された「出版物に係る権利(仮称)法制度骨子案」では、原出版者(一次出版者)の権利保護やオンライン出版への対応等で不備な点があると考え、現行設定出版権の拡大再構成を内容とする「出版者の権利のあり方に関する提言」(座長中山信弘東大名誉教授)を基本とした「中川勉強会提言」による整備を要望します。

2 整備の内容は、現行の設定出版権をオンライン出版(電子出版)に拡大するだけではなく、デジタルネットワーク時代の出版実務の諸問題に包括的に対応しうる内容に改訂されるよう要望します。具体的には以下の通りです。
3 現行の設定出版権のオンライン出版(電子出版)への拡大については、著作権法第79条を、複製権者は「その著作物を文書又は図画【またはオンライン出版物(電子出版)】として出版することを引き受ける者に対し、出版権を設定することができる」、著作権法第80条(出版権の内容)を「出版権者は、設定行為で定めるところにより、頒布の目的をもって、その出版権の目的である著作物を原作のまま印刷その他の機械的又は化学的方法【並びに電子的方法】により文書又は図画【またはオンライン出版物(電子出版)】として複製及び【送信可能化を含む自動公衆送信】する権利を有する。」とするなど、【 】内を改訂追加することで、一通の設定出版権契約書によって、紙とオンラインの設定出版権による出版が可能となるように整備されることを要望します。

4 紙での出版ないしオンライン出版の設定出版権に第三者への再利用許諾(サブライセンス)を特約なき限り出版者に付与することが、実務上必要不可欠と考えます。著作権法第80条3項を再利用許諾の内容に改訂されることを要望します。

5 コピー等の複写利用については、特約なき限り再利用許諾を出版者に付与することが、実務上必要不可欠と考えます。

6 設定出版権では対象外となってしまう出版物のうち、とくに文化的学術的観点から、下記の出版物を出版した出版者を、一定の条件をつけて一定期間保護するための法的整備を要望します。
 一 古典を新たに組直したり、翻刻、復刻するなどして出版した出版者。
 二 著作権が消滅した未発行の著作物を発行した出版者。

7 いわゆる孤児出版物の出版を促進できるようにするなどのため、現行登録制度を簡素化し、権利情報が容易に明らかになり、孤児出版物を含め出版物の権利処理の環境が整えられるよう要望します。

理 由


1 出版実務上の問題点

出版社が現在ビジネス上抱えている問題点は、主に以下に要約される。

①私的利用の範囲を超えた違法なコピー等の複写、複製(それらのネットへのアップロード等を含む)の蔓延やいわゆる自炊問題などの増大とそれへの対応。

②グーグルブック検索和解問題や内外での海賊版出版などへの対応。

③自社出版物のコピー要請、試験問題集などでの利用、テレビ等での利用、大学内などでのLAN、ネット書店などでの広告利用など、増大する出版物の複写、複製、公衆送信への対応。

④自社出版物が文庫出版社によって文庫化される場合、もっぱら中小出版社である原出版者(一次出版社)は受け身の対応となり、正当かつ充分な経済的補償を受けられないため、不満が多い。

⑤出版物を電子化しオンライン書店等を通じて販売する(オンライン配信)などの電子書籍ビジネスへの対応、デジタルネットワーク社会への対応。


2 出版者が法的当事者となれないことが著作権者の利益を毀損している

①などに対し、著作権者はもっぱら個人であり、対応が難しく、出版者は単独で差し止めができない、訴訟の当事者になれない等の問題があり、著作権者の許諾ないし委任を一件ずつ求め対応することは、労力的時間的に手間がかかり、放置しがちで、著作権者、出版者の経済的損失は大きくなっている。


②についても、許諾や訴訟の法的当事者になれないため、①と同様の問題点がある。グーグルブック検索和解問題では、流対協(現出版協)はオプトアウトを呼びかけ会員社がオプトアウトを実施したが、法的裏付けに問題がない訳ではなかった。

③についても、法的当事者になれないため、①、②と同様の問題点がある。著作権者と出版者の契約等により出版物の特定の版面をコピーするなど複写利用することや、限定された電子的データを複製しLAN等で利用したりネット書店などの広告で利用することについて、出版者が許諾を与えられるようにすることが、実務上不可欠である。


④についても、現行著作権法80条3項などにより出版者は文庫化の許諾を行えないため、文庫出版社の提案通りに対応せざるを得ない場合が多い。無名の著作者のパイオニア的な一次出版物を多く出版し、経済的にも余裕があるとはいえない出版協会員社のような出版社としては、正当な経済補償が受けられるよう一次出版の再許諾の権利が不可欠である。

⑤については出版者に電子出版権が設定されていないため、出版物を電子化し多様なプラットホームに再許諾を行っていく動機に乏しく、電子化の障害となっている。経産省緊急デジタル化事業においても出版協会員社のほとんどは、同事業に参加しておらず、その理由のひとつに上記の理由があげられた(なお、出版協会員社の多くは自社内でDTPを行い、電子データで保存しており、オンライン出版の技術的体勢はほぼ整っている)。

①、③は日本複製権センター(JRRC)、出版者著作権管理機構(JCOPY)で一部対応しているが、日本出版者協議会は流対協時代に参加を求めたものの、JCOPYの前身である出版者著作権協議会(出著協)に団体参加を認められなかったため、分配金を得ていない。

このような諸問題への対応を有効に行うためには、出版者に電子書籍ビジネスや著作権ビジネスの当事者としての権利が付与されなければ、充分に対応できない。現行設定出版権契約にこうしたビジネスの委任条項を個別特約することでは不十分で、ビジネスそのものも発展しない。また、前記諸問題への対応をもっぱら個人である著作権者に任すのは負担が多く、法人である出版社が組織的に担う方が有効である。出版者が法的当事者となれないことなどが著作権者の利益を大きく毀損しているので、早急な法的整備が必要である。

3 著作権が消滅した古典や未発行の著作物を発行した出版者の保護

貴第一回委員会配布「参考資料4」にあるように、(1)文化的学術的観点から、著作権が消滅した学術的刊行物を発行した出版者や、(2)著作権が消滅した未発行の著作物を発行した出版者に対して、英独仏などEU諸国では出版者への権利保護が与えられている。


日本楽譜出版協会会員社のクラシック音楽楽譜のコピー被害や出版協会員社の大蔵出版が発行する仏教古典『大正新脩大蔵経』(全88巻)の国立国会図書館によるデジタル配信などは、出版社の経済的被害のみならず、発意と責任において出版物を発行していく出版者の出版意欲を毀損するもので、ひいては日本の芸術学問の発展にとってマイナスの影響を及ぼすものと考えられる。

以上の観点から要望6を提起する。

4 現行登録制度を改善し、孤児作品などの出版促進も含め出版物の権利処理の簡素化の必要

著作権者が不明のいわゆる孤児作品の出版については、著作権法第67条の文化庁の裁定でも可能であるが、制度そのものが使い勝手が悪くあまり利用されていない。現行登録制度を登録しやすいよう整備し、権利情報が明確になり、権利処理を簡素かつ迅速化し、孤児作品の出版が促進される必要がある。ただし、国立国会図書館のナショナル・アーカイブの利活用と直結させる必要はないと考える。

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