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2013年10月15日 (火)

〈Amazon Student プログラム〉問題●日販に再要望書

学生を対象にした10%ポイント還元という〈Amazon Studentプログラム〉をめぐるやりとりが続いている。

8月まで、出版協は会員の要望を受けて、アマゾン側には値引きに当たる同サービスの中止を、またアマゾンに商品を卸している日販と大阪屋には、再販契約を遵守するようアマゾンに指導することを求める要望をくり返してきたが、アマゾンは一向に同サービスを中止しなかった。

出版協としてこれ以上申し入れを続けても効果は期待できないとみて、小社は、8月6日付で、Amazon.com Int'l Sales, Inc. に対して、当方は〈Amazon Studentプログラム〉を再販契約違反の値引きと判断しているので、小社の出版物を同サービスの対象から1か月以内に除外するよう求め、それがなされなければ出荷停止も検討せざるを得ない旨の警告を含んだ要望書を送付した。同時に取次の日販・大阪屋にも、アマゾンが小社の要望に応えるよう指導し、その指導内容と結果を知らせることを求める要望書を送付した。小社と同様の思いで、出版協の会員51社(全会員98社の半数超)も同様の趣旨の申入れを行っている。

回答期限とした8月20日の日付でアマゾンジャパン(株)渡部一文メディア事業部長名義で回答が届いた。しかしその答えは、またしても「再販契約の当事者でない」小社には答える立場にないとするものだった。

こうなると、小社の直接の再販契約の相手であり、アマゾンとの再販契約の当事者である…つまり、再販契約の要の位置にある取次店の回答が重要になるのは言うまでもない。日販からは9月2日付で安西浩和専務取締役名義で回答が届いた。そこに記された「アマゾンジャパン社様から示された見解」は以下の4点だ。
①再販制度を崩壊させるといった意図は全くない。再販制度をこれからも尊重していく。
②Amazon Studentプログラムは学生の読書環境を支援したいという目的のサービスで、利用した学生からも一定の評価や支持を得ている。
③Amazon Studentプログラムが再販契約違反かどうかを判断するのは出版社だと認識している。出版社が違反と判断して出荷停止となる可能性は、取次の事前説明で認識している。
④Amazon Studentプログラムは今後も継続する。(以上、回答原文のまま)

日販自体の立場については、「弊社はAmazon.com Int'l Sales, Inc. 様と再販売価格維持契約書を締結しており、今後とも再販制度を維持することは重要と考えております。しかし貴社もご案内の通り、そもそも再販商品に対するポイント付与が再販契約違反に該当するかどうかについては様々な解釈があり、少なくとも司法や行政における統一的な解釈基準が示されていない現状の下では、弊社が独自に判断することは困難であることをご理解いただきたく存じます。」という。小社が知るかぎり、この回答は要望を出した各社すべてに同文だ。

小社が要望した〈Amazon Student〉プログラムのサービス対象からの小社出版物の除外には何も触れていない全く不十分な回答なので、直ちに改めてその点を確認する要望書を日販あてに送付した。小社の思いも記しているのでそのまま掲載する。
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アマゾン・ポイントサービスから小社商品を除外するよう指導を求める再要望
2013年9月6日

謹啓

日頃は、小社出版物の販売にご尽力いただき、誠にありがとうございます。
このたびは、Amazon.com Int'l Sales, Inc.の「〈Amazon Student〉プログラム」のポイントサービスの対象から小社出版物を除外するよう、Amazon.com Int'l Sales, Inc.に対して貴社の指導を求める旨の、小社8月6日付要望書について、9月2日付で貴社専務取締役安西浩和様名にてご回答いただきありがとうございます。

しかし、下記の理由により、改めて要望を申し上げる次第です。
(1)〈Amazon Studentプログラム〉と再販価格維持契約の関係について
貴社ご回答によると、アマゾンジャパン社様は「再販制度を崩壊させるといった意図は全くない。これからも再販制度を維持尊重していく。(見解①)」としつつ、同プログラムが再販契約に違反しない論拠を示しておりません。

貴社は〈Amazon Studentプログラム〉について「さまざまな解釈があり」「弊社が判断することは困難」と、ポイント付与についての一般論を記されていますが、今回の具体的事例について、Amazon.com Int'l Sales, Inc.は再販維持契約の当事者である貴社に、〈Amazon Studentプログラム〉が再販維持契約に違反しない旨の説明をしたことと拝察いたします。その説明についての貴社の判断は結構ですので、Amazon.com Int'l Sales, Inc.による説明の内容を正確にお知らせください。


小社では、前回要望書にて申し上げました通り、ポイントカードによる販売行為は、公正取引委員会の判断をまつまでもなく、値引であり、再販売価格維持契約違反であると判断しており、再販制度そのものを崩壊させかねないものとして、小社商品のAmazon.com Int'l Sales, Inc.への出荷停止を見据えて重大な決断をしようとしております。そのために、〈Amazon Studentプログラム〉についてAmazon.com Int'l Sales,Inc.側がどういう解釈・論拠をもって再販維持契約に違反しないとしているのかは、重要なポイントです。Amazon.com Int'l Sales, Inc.は、再販維持契約の当事者でない小社には説明不要としており、小社がそれを知りうるのは、同社との契約当事者である貴社の回答によるしかありません。

再販契約の結節点として小社と小売店を繋ぐ貴社には、本来ならそのお立場でのご見解をうかがいたいのですが、「判断することは困難」とのことですので、貴社の判断はともかく、Amazon.com Int'l Sales, Inc.側の説明の内容をお知らせいただくよう要望いたします。

(2)小社の出版物を〈Amazon Studentプログラム〉の対象から除外する件について
貴社ご回答では、アマゾンジャパン社様の見解として「Amazon Studentプログラムは今後も継続する(見解④)」と記されていますが、そもそも小社の要望書は同プログラムの中止を求めておりません(心中熱望してはおりますが)。

小社の要望は、同プログラムのサービスの対象から小社商品を早急に除外することのみを求めたものです。これは「出版社が再販契約に基づいて言う場合であっても、自分の商品についてだけ止めてくれと言えるわけで、他社の商品についてまでは言えない。ポイントカードを実施しているところに対して、ポイントカードシステムを止めろとは言えないのであって、自社の商品は対象外とするようにと言えるということです。表示上から言うと、消費者向けにその旨を表示して貰うことになります」という野口文雄公取委取引企画課長の見解(「再販制度の適切な利用に当たっての留意点」、出版ニュース2005年1月下旬号)に沿った、きわめて穏当なものです。

〈Amazon Studentプログラム〉の存続がアマゾンジャパン社様の意志であることは伝わって参りましたが、肝心の小社の要望への答えにはなっておりません。

改めて、小社の出版物を〈Amazon Studentプログラム〉の対象から早急に除外するようAmazon.com Int'l Sales, Inc.にご指導の上、そのご指導の結果内容をお知らせいただくよう要望いたします。

まことに勝手ですが、前回要望から既に1か月を経過していることもあり、9月13日までのご回答をお願いいたします。

出版物の再販制度の今後に大きな影響を及ぼさざるを得ない問題として、再販契約の要、再販制度の重要な担い手である貴社の指導力の発揮を切に希望いたします。

謹白

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再要望は小社だけでなく、他社からも送付されたと認識している。小社の再要望書では日販がポイントカードについて再販契約違反に該当するかどうか「判断することは困難」としているのを追認した内容になっているが、その点についても、公正取引委員会の見解や、出版再販研究委員会の「再販契約の手引き」を示して、日販が「判断することは困難」としていること自体に疑義を呈している社もあると聞いている。

日販担当者によると「回答に向け鋭意努力中」とのことだが、9月30日現在、回答はまだない。

水野久
晩成書房  )●出版協副会長
『新刊選』2013年10月号 第12号(通巻236号)より

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