「特定秘密保護法案」に反対する声明
「特定秘密保護法案」に反対する声明
2013年10月10日
政府は「特定秘密保護法案」の概要を9月3日に発表して、10月の国会に提出しようとしている。この法案は、これまで何度も立案されては国民が何とか廃案に持ち込んできた「国家機密法」と呼ばれたものの復活である。2011年には「秘密保全法」として再度提出され、出版協は反対声明を出した。多くの反対があり、これも廃案になった。
今回の「特定秘密保護法案」は、概要発表が国会提出1か月前であり、国民へのパブリックコメントの募集も2週間と非常に短い、一方的で強引なやり方であった。よせられたコメントは9万件にのぼり、その8割は、国民の知る権利が損なわれるとした反対意見であったという。政府は反対のコメントを精査し、法案提出をやめるべきである。
法案は国の防衛・外交・安全脅威活動の禁止・テロ活動の防止を対象として「特定秘密」を指定するとしているが、それは行政の「長」が指定することになっている。防衛相や外相は恣意的に特定秘密を指定し、さまざまな情報を国民の眼から隠すことができる。また何が特定秘密にあたるかが、国会や裁判所でチェックできない。秘密指定は30年間続く。特定秘密の定義が曖昧なままその判断が行政の「長」に任されるのはきわめて危険なことである。
安全脅威やテロの分野も解釈次第で、市民レベルの活動にまでも処罰対象になりかねない。特定秘密を取得する行為(内部告発)について、未遂・共謀・教唆・煽動の処罰規定があるからだ。特定秘密を漏らした場合、懲役10年の重罰を科していることも驚きである。現在の国家公務員法では1年、自衛隊法でも5年である。現行法でも十分に対処できるのに、新たな重罰規定は国家公務員への威嚇行為である。
さらに法案は特定秘密を扱う人への「適正評価制度」を導入しようとしている。人の監視を強化することによって情報漏洩を防ごうとするものであるが、調査項目は多岐にわたっている。国籍、外国への渡航歴、ローンの返済状況、精神疾患など、対象も公務員や受託業務を受けた民間人、その家族、友人にまで及ぶ可能性がある。このような 「適正評価制度」はプライバシーの侵害であり、到底容認できない。
現在でも国家公務員法の秘密漏洩罪など国家秘密を守る刑事規定は存在している。この上にさらに、政府は特定秘密の範囲や処罰対象を広げようとしている。公務員・市民が処罰を恐れ、メディアの取材に応じにくくしているのである。民主主義には行政情報の情報公開こそが必要なのであり、情報公開の世界的潮流に逆行しているのである。
「特定秘密保護法案」は、報道・出版の自由を制約し、国民の知る権利を侵害する危険な法律であり、悪用が懸念される法律を新たに作る必要はない。断固反対するものである。
以上
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