出版者の皆様へ●パブリックコメント提出の呼びかけ
出版者の皆様へ ──パブリックコメント提出の呼びかけ
2013年10月18日
拝啓
拝啓
貴社ますますご繁栄のこととお慶び申し上げます。
さて、ご承知のとおり、文化審議会著作権分科会出版関連小委員会「中間まとめ」への意見募集が10月26日まで行われております。電子出版の普及と海賊版対策のための出版者への権利付与を目的にしていると言われますが、「中間まとめ」では、それらの目的を出版者主導で達することができません。出版者の立場からの意見(パブリックコメント)提出が必要です。
日本書籍出版協会(書協)もパブリックコメントの提出を呼びかけておりますが、出版協としてはその内容について、紙の出版物と電子書籍について一体的な制度設計を求める件、権利の主体を出版者とし、単なる電子配信業者が権利の主体に含まれないように求める件などは、同様に考えておりますが、次の二点については同意できません。
1「中間まとめ」では「紙媒体の設定出版権の再許諾」を認めているのに、反対としている点。
さて、ご承知のとおり、文化審議会著作権分科会出版関連小委員会「中間まとめ」への意見募集が10月26日まで行われております。電子出版の普及と海賊版対策のための出版者への権利付与を目的にしていると言われますが、「中間まとめ」では、それらの目的を出版者主導で達することができません。出版者の立場からの意見(パブリックコメント)提出が必要です。
日本書籍出版協会(書協)もパブリックコメントの提出を呼びかけておりますが、出版協としてはその内容について、紙の出版物と電子書籍について一体的な制度設計を求める件、権利の主体を出版者とし、単なる電子配信業者が権利の主体に含まれないように求める件などは、同様に考えておりますが、次の二点については同意できません。
1「中間まとめ」では「紙媒体の設定出版権の再許諾」を認めているのに、反対としている点。
2 海賊版対策と出版以外の複写等の利用許諾のための「『特定の版面』に限定した権利付与」についての「制度設計」が「中間まとめ」で認められていないにもかかわらず、反論をしていない点。
紙媒体の設定出版権の再許諾は、単行本出版者が文庫出版者へ再許諾をすることができる、つまり条件を含め交渉権を得るための画期的な規定です。
また「特定の版面」も複写の個別許諾や海賊版対策に不可欠です。しかし小委員会ではこの「制度設計」を書協はあえて求めず、著作者団体の反対もあり「中間まとめ」では葬られてしまっています。
下記に、上記二点の部分についてのパブリックコメント文例を示します。
紙媒体の設定出版権の再許諾は、単行本出版者が文庫出版者へ再許諾をすることができる、つまり条件を含め交渉権を得るための画期的な規定です。
また「特定の版面」も複写の個別許諾や海賊版対策に不可欠です。しかし小委員会ではこの「制度設計」を書協はあえて求めず、著作者団体の反対もあり「中間まとめ」では葬られてしまっています。
下記に、上記二点の部分についてのパブリックコメント文例を示します。
これらをご参照の上、パブリックコメントをご提出いたければ幸いです。
敬具
・文化庁意見募集/電子政府の総合窓口(e-Gov)
▼上記2点についてのパブリックコメント文例
【第4章 第4節 2電子書籍に対応した出版権に係る再許諾の在り方】について(29~30頁)
再許諾については、「中間まとめ」のとおり、電子媒体と共に、紙媒体の設定出版権の再許諾が不可欠です。
現在、典型的二次出版である単行本の文庫化にあたっては、現行著作権法では複製権者も出版権者も許諾を出せない「一種の両すくみの関係」(加戸守行『著作権法逐条講義』)にあります。そのため、法的な裏付けのない、当事者間の実務処理によらざるを得ず、一次出版社は大手文庫出版社の提示する条件での合意を強いられているのが現状です。この法的矛盾を解消する意味で紙媒体の設定出版権に再許諾権を付与する意義は大きいと言えます。
もともと類似出版物、競合出版物から一次出版者を守ることが、設定出版権創設の意義であるという観点から見ると、電子媒体と共に、紙媒体の設定出版権の再許諾権を認める「中間まとめ」は妥当であり、いかなる出版社であれ一次出版への敬意は払うべきであり、それこそ著作権法の精神であろうと考えます。
文庫出版社などが、「二次出版の実務は通常再許諾では行われていない」(出版広報センター「出版権」緊急説明会資料)ことを理由に反対していますが、これは前述のような現状を述べているに過ぎず、反対の理由になっていません。
「単行本が絶版となると文庫の再許諾権も無くなるのではないか」(同)という反対理由もあがっていますが、これも単行本が絶版になれば著作権者は設定出版権の消滅請求を行い、当該文庫出版者に出版権を再設定すればすむことであり、何も問題はありません。
さらに反対理由として、「出版ブローカーも出版者となることになるのではないか」(同)と指摘していますが、これも反対の理由になっていません。繰り返しになりますが、出版権を設定された出版者は、著作権法81条に基づき当該著作物の原稿等の引渡後6カ月以内に出版しなければならない義務を負い、この約束を果たすことができなければ設定出版権の消滅請求をされるだけです。紙媒体の出版をしない者が他人に対し再許諾を行うことはできないわけで、この紙の再許諾を付与することによって出版ブローカーが成立する根拠はないと考えられます。
▼上記2点についてのパブリックコメント文例
【第4章 第4節 2電子書籍に対応した出版権に係る再許諾の在り方】について(29~30頁)
再許諾については、「中間まとめ」のとおり、電子媒体と共に、紙媒体の設定出版権の再許諾が不可欠です。
現在、典型的二次出版である単行本の文庫化にあたっては、現行著作権法では複製権者も出版権者も許諾を出せない「一種の両すくみの関係」(加戸守行『著作権法逐条講義』)にあります。そのため、法的な裏付けのない、当事者間の実務処理によらざるを得ず、一次出版社は大手文庫出版社の提示する条件での合意を強いられているのが現状です。この法的矛盾を解消する意味で紙媒体の設定出版権に再許諾権を付与する意義は大きいと言えます。
もともと類似出版物、競合出版物から一次出版者を守ることが、設定出版権創設の意義であるという観点から見ると、電子媒体と共に、紙媒体の設定出版権の再許諾権を認める「中間まとめ」は妥当であり、いかなる出版社であれ一次出版への敬意は払うべきであり、それこそ著作権法の精神であろうと考えます。
文庫出版社などが、「二次出版の実務は通常再許諾では行われていない」(出版広報センター「出版権」緊急説明会資料)ことを理由に反対していますが、これは前述のような現状を述べているに過ぎず、反対の理由になっていません。
「単行本が絶版となると文庫の再許諾権も無くなるのではないか」(同)という反対理由もあがっていますが、これも単行本が絶版になれば著作権者は設定出版権の消滅請求を行い、当該文庫出版者に出版権を再設定すればすむことであり、何も問題はありません。
さらに反対理由として、「出版ブローカーも出版者となることになるのではないか」(同)と指摘していますが、これも反対の理由になっていません。繰り返しになりますが、出版権を設定された出版者は、著作権法81条に基づき当該著作物の原稿等の引渡後6カ月以内に出版しなければならない義務を負い、この約束を果たすことができなければ設定出版権の消滅請求をされるだけです。紙媒体の出版をしない者が他人に対し再許諾を行うことはできないわけで、この紙の再許諾を付与することによって出版ブローカーが成立する根拠はないと考えられます。
【第4章 第3節 3「特定の版面」に対象を限定した権利の付与の是非】について(23~29頁)
「特定の版面」に対象を限定した権利の付与は、海賊版対策ならびに、出版以外の複写等の許諾の促進に不可欠です。
「特定の版面」に限定した権利の創設の意義は次のように考えられます。
①総合出版権を設定することなしに(=著作物の独占的利用権限を設定せずに)、出版者に対して特定の版面の利用を認める(=特定の版面を利用した侵害についての対抗手段を出版者に付与する)ことができる。
②総合出版権を設定した者との関係においても、例えば、紙媒体書籍の出版しか予定していない出版者にとって電子書籍に係る総合出版権を設定することは事実上不可能であり、そうすると、出版物をデッドコピーしたインターネット上の海賊版への対策を講じることは極めて困難であるところ、特定版面権(特定出版物権)を重ねて設定することで上記のような態様の侵害についても対抗できるようになる。
出版物の特定の部分に限っての利用については、紙媒体の複写や企業内複製、紙媒体のデジタル複製、電子媒体でのイントラネットなど、さまざま複写、複製、送信の許諾要請が現実にあります。こうした需要に円滑に応えていくとともに、違法なデジタル複製に対して紙媒体のみの出版者でも対応ができるようにするのが、この「特定の版面」に対象を限定した権利の付与の意義であり、ぜひとも必要な所以です(第8回中川勉強会配布の「著作権法改正案骨子」などを参照)。
小委員会の審議過程で、書協は「海賊版対策が可能な方策が講じられるならば」という条件付きで「『特定の版面』に対象を限定した権利にはこだわらない」とし、あえてこの権利の創設を求めませんでした。その理由として「JRRC(日本複写権センター) や一般社団法人出版者著作権管理機構(JCOPY)による現行の許諾実務に大きな影響を与える可能性」をあげています。しかし、これらの団体が出版者や著作権者を網羅しているわけではありません。
しかも、書協が望んだ出版物(特に雑誌)をデッドコピーしたネット上の海賊版対策は、「電子書籍に対応した出版権の創設」で対応することとなっており、これでは紙のみの設定出版権しかない出版社は対抗できません。
というのは、設定出版権の紙から電子への拡張・再構成でなく、「中間まとめ」のとおり電子出版権が独立して新設された場合、次の問題が起こるからです。紙媒体の出版権のみの出版者は、紙媒体の出版に必要な範囲での複製権しかなく、公衆送信権はありませんので、自社の紙の出版物をスキャンされてデジタル海賊版を作られた場合、これを差し止めることはできないのです。
改めて、「特定の版面」に対象を限定した権利の付与を求めます。
「特定の版面」に対象を限定した権利の付与は、海賊版対策ならびに、出版以外の複写等の許諾の促進に不可欠です。
「特定の版面」に限定した権利の創設の意義は次のように考えられます。
①総合出版権を設定することなしに(=著作物の独占的利用権限を設定せずに)、出版者に対して特定の版面の利用を認める(=特定の版面を利用した侵害についての対抗手段を出版者に付与する)ことができる。
②総合出版権を設定した者との関係においても、例えば、紙媒体書籍の出版しか予定していない出版者にとって電子書籍に係る総合出版権を設定することは事実上不可能であり、そうすると、出版物をデッドコピーしたインターネット上の海賊版への対策を講じることは極めて困難であるところ、特定版面権(特定出版物権)を重ねて設定することで上記のような態様の侵害についても対抗できるようになる。
出版物の特定の部分に限っての利用については、紙媒体の複写や企業内複製、紙媒体のデジタル複製、電子媒体でのイントラネットなど、さまざま複写、複製、送信の許諾要請が現実にあります。こうした需要に円滑に応えていくとともに、違法なデジタル複製に対して紙媒体のみの出版者でも対応ができるようにするのが、この「特定の版面」に対象を限定した権利の付与の意義であり、ぜひとも必要な所以です(第8回中川勉強会配布の「著作権法改正案骨子」などを参照)。
小委員会の審議過程で、書協は「海賊版対策が可能な方策が講じられるならば」という条件付きで「『特定の版面』に対象を限定した権利にはこだわらない」とし、あえてこの権利の創設を求めませんでした。その理由として「JRRC(日本複写権センター) や一般社団法人出版者著作権管理機構(JCOPY)による現行の許諾実務に大きな影響を与える可能性」をあげています。しかし、これらの団体が出版者や著作権者を網羅しているわけではありません。
しかも、書協が望んだ出版物(特に雑誌)をデッドコピーしたネット上の海賊版対策は、「電子書籍に対応した出版権の創設」で対応することとなっており、これでは紙のみの設定出版権しかない出版社は対抗できません。
というのは、設定出版権の紙から電子への拡張・再構成でなく、「中間まとめ」のとおり電子出版権が独立して新設された場合、次の問題が起こるからです。紙媒体の出版権のみの出版者は、紙媒体の出版に必要な範囲での複製権しかなく、公衆送信権はありませんので、自社の紙の出版物をスキャンされてデジタル海賊版を作られた場合、これを差し止めることはできないのです。
改めて、「特定の版面」に対象を限定した権利の付与を求めます。
※なお、出版協としての「中間まとめ」への意見全文を出版協ブログにアップしますので、ご参照ください。
●問い合わせ等は、事務局(木下)まで
shuppankyo@neo.nifty.jp
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