再考、再販制度とアマゾンのポイント
出版不況はいよいよ底なし沼に足を入れた。今年上半期の売上げ減は、朝日新聞にまで取り上げられる状況で、前年比5.9%、書籍は5.5%減で4094億円だという。
売上げ減の要因は、この間言われ続けられている単に“活字離れ”や“スマホ・携帯”費用の増大による購買力の低下だけではない。リアル書店の廃業も多く、新刊書籍と触れる機会はますます狭められ、情報はあれど、実物はなかなか自分の手で確かめられない状態にある。
その割には、膨大な出版物が日々生産され、過剰に送り出されている。文化の形成における多様性と知的財産の蓄積という点からすれば、多くの出版物が輩出されることは、喜ぶべきことであり、また誇り得る出来事である。
売上げ減の要因は、この間言われ続けられている単に“活字離れ”や“スマホ・携帯”費用の増大による購買力の低下だけではない。リアル書店の廃業も多く、新刊書籍と触れる機会はますます狭められ、情報はあれど、実物はなかなか自分の手で確かめられない状態にある。
その割には、膨大な出版物が日々生産され、過剰に送り出されている。文化の形成における多様性と知的財産の蓄積という点からすれば、多くの出版物が輩出されることは、喜ぶべきことであり、また誇り得る出来事である。
しかしながら、現状では、出版市場は縮小し、かつて文化の伝達者としての誇りと使命感を持って地域で活動していた“書店”というイメージは見る影もない。
戦後の経済成長と軌を一にしていたとは言え、出版業界の発展を支えてきたシステムが再販制度に基づく定価販売である。いうまでもなく、それは全国一律の販売価格、極端な弱肉強食の取引条件設定の規制、資本力のない版元でも著者の発掘やベストセラー、ロングセラーを生む可能性を保証するものであり、また同時に書店の育成も保証したことは否定できない。
したがって、この再販制度は委託販売制と相まって、戦後復興、高度成長時代、価値の多様化時代、バブル時代までは業界発展の基軸であった。そしてそれを支えたのが取次店のマスセール(雑誌流通)システムの確立であった。だが、価値観が多様化し、マスからミニへと時代が変わりつつあった時に、物流を担うべき取次店が判断を誤ったのだ。
世は情報化時代に入り、物流も宅配時代に入ったにも関わらず、マス流通にとらわれた結果、ミニの流通コストと委託制度の負の面(返品)の対応が遅れ、再販制度そのものが持つ利点を生かし切れない現状を生んだように思われる。
1996年の売上げピークを境に縮小し始めた市場に対して、その拡大策を書店、取次、版元の三位一体で構想するのではなく、売上げ確保のサービスという名目の“値引き”方向に向かったのである。
そんなときに、黒船にたとえられるアマゾンが上陸してきたのだ。以前にも触れたが、アマゾンは再販制度によって橋頭堡を築き、一定の市場占有をした上で、サービスという名の値引き(10%、時には15%)を展開して、リアル書店からの顧客奪取を目指している。
これは、明確な再販契約違反だとの認識で、われわれ出版協の加盟社の有志は、再三そのサービスから自社商品を除外するよう申し入れをしたが、「再販制度は遵守するが、サービスプログラムは止めない」とのことだ。ご存じのように、既に5社が出荷停止を敢行し、3社は現在も実施中である。
また、「除外指導」を求めた小社をはじめ、4社は日販から「除外指導はいたしかねます」という回答があったため、7月20日以降、日販に「再販売価格維持契約書」の第3条「乙は小売業者と再販売価格維持出版物の定価を維持するために必要な契約を締結したうえで販売しなければならない」、第4条「前条の契約を締結しない業者には販売しない」、第5条にある両者は「定価が維持されるよう誠意をもって相互に協力する」とあることから、違約金を請求した。
違約金が支払われるか否か分かりませんが、10%のポイントサービスが再販契約に違反していることは自明でしょう。もし、自社の商品を大幅値引きの対象商品から除外して欲しいという要求が、契約当事者が一方的に無視するならば、再販契約あるいは再販制度の形骸化は一気に進み、出版界の戦国時代が招来するだろう。
戦後の経済成長と軌を一にしていたとは言え、出版業界の発展を支えてきたシステムが再販制度に基づく定価販売である。いうまでもなく、それは全国一律の販売価格、極端な弱肉強食の取引条件設定の規制、資本力のない版元でも著者の発掘やベストセラー、ロングセラーを生む可能性を保証するものであり、また同時に書店の育成も保証したことは否定できない。
したがって、この再販制度は委託販売制と相まって、戦後復興、高度成長時代、価値の多様化時代、バブル時代までは業界発展の基軸であった。そしてそれを支えたのが取次店のマスセール(雑誌流通)システムの確立であった。だが、価値観が多様化し、マスからミニへと時代が変わりつつあった時に、物流を担うべき取次店が判断を誤ったのだ。
世は情報化時代に入り、物流も宅配時代に入ったにも関わらず、マス流通にとらわれた結果、ミニの流通コストと委託制度の負の面(返品)の対応が遅れ、再販制度そのものが持つ利点を生かし切れない現状を生んだように思われる。
1996年の売上げピークを境に縮小し始めた市場に対して、その拡大策を書店、取次、版元の三位一体で構想するのではなく、売上げ確保のサービスという名目の“値引き”方向に向かったのである。
そんなときに、黒船にたとえられるアマゾンが上陸してきたのだ。以前にも触れたが、アマゾンは再販制度によって橋頭堡を築き、一定の市場占有をした上で、サービスという名の値引き(10%、時には15%)を展開して、リアル書店からの顧客奪取を目指している。
これは、明確な再販契約違反だとの認識で、われわれ出版協の加盟社の有志は、再三そのサービスから自社商品を除外するよう申し入れをしたが、「再販制度は遵守するが、サービスプログラムは止めない」とのことだ。ご存じのように、既に5社が出荷停止を敢行し、3社は現在も実施中である。
また、「除外指導」を求めた小社をはじめ、4社は日販から「除外指導はいたしかねます」という回答があったため、7月20日以降、日販に「再販売価格維持契約書」の第3条「乙は小売業者と再販売価格維持出版物の定価を維持するために必要な契約を締結したうえで販売しなければならない」、第4条「前条の契約を締結しない業者には販売しない」、第5条にある両者は「定価が維持されるよう誠意をもって相互に協力する」とあることから、違約金を請求した。
違約金が支払われるか否か分かりませんが、10%のポイントサービスが再販契約に違反していることは自明でしょう。もし、自社の商品を大幅値引きの対象商品から除外して欲しいという要求が、契約当事者が一方的に無視するならば、再販契約あるいは再販制度の形骸化は一気に進み、出版界の戦国時代が招来するだろう。
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