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2014年12月 5日 (金)

出版社は未来を見据え、 誰と手を携えるべきなのか?─アマゾン出荷停止3社、停止を3カ月延長

アマゾンの「Amazon Studentポイントサービス」が、再販契約違反の大幅値引きに当たるとして、同サービスからの自社商品の除外を求めて出荷停止している緑風出版、晩成書房、水声社の3社は、11月6日、文京区民センターで記者会見を開き、引き続き3カ月の出荷停止を行うことを発表した。

今回、出荷停止延長を6カ月とせず、3カ月にしたのは、①来年1月から改正著作権法の施行に伴い、電子書籍の販売が活発化し、電子書籍の安売りがアマゾンなどで大々的に行われることも予想され、紙媒体の書籍への影響などを見定める必要があること、②取次店との話し合いを密にしたいことなどが理由である。

記者会見では、大手出版社も動きだしたとして、情勢が変化してきたことを報告した。具体的には、小学館の相賀昌宏社長が、アマゾンジャパンの渡部一文バイスプレジデント兼ハードライン事業本部・書籍事業本部部門長事業部門長らに対し、Amazon Studentポイントは大幅な値引きであり再販契約に違反しているので、自社出版物を同サービスから除外するよう口頭で申し入れた。席上、相賀社長はアマゾンジャパンでは責任ある対応ができないのであれば、アマゾン・ドット・コムのベゾス会長に直接、要望してもよいと述べ、また、「Amazon Studentポイントサービス」とは違う方法による学生読者開拓を、担当者レベルで期間を区切って研究することを提案したという。

周知のように、小学館の相賀社長は日本書籍出版協会の理事長で、業界4団体で構成する出版再販研究委員会の委員長でもある。したがって、この動きが小学館・集英社などの一ツ橋グループばかりでなく、他の大手出版社に波及することは必至であろう。

これに先立ち、再販契約違反の違約金を日本出版販売に請求している彩流社、出荷停止している3社並びに日本出版者協議会は、11月5日、日販に対し再販契約を遵守し、会員社の要望に誠意をもって応えるよう申し入れを行った。席上、出版社側は、別紙申入書にあるように、日販が「ポイント付与が再販契約違反に該当するかどうかについては多様な解釈があり」(日販回答)、Amazon Studentポイントサービスについて日販自身が「独自に判断するのは困難」(同)という理由で「指導できない」などと回答することは、取次店自らが再販制度を否定するもので、重大な問題だ。

しかも公正取引委員会は、ポイントサービスが再販契約に違反するかどうかは「出版社が判断し、その意を受けて取次会社も対処できるということです」、したがって取次店は「ポイントカードをどのように考えるかは出版社の判断ですので、出版社の意向を受けて対処してほしいとおもいます」との見解(2004年12月9日、野口文雄公取委取引企画課長見解)をだしているのに、日販はこれを真っ向から否定し、出版社の「違反」という判断を日販の勝手な判断で覆しており、越権行為で許されないと質した。

これに対し日販は、「状況が変わったことは認識している」、「再販契約の認識についても検討したい」、「回答には少し時間をもらいたい」と答えた。

また相賀社長の動きを事前に把握していなかった日販は、小出版社によるアマゾンへの抗議行動で納まると考えていたのか(?)、相賀社長のアマゾンへの申し入れの模様が伝わると驚いて、急遽対策を練っているというが、首脳部で意見が分かれているとの情報もある。山はようやく動きだした。

 11月14日には、Amazon.com.とアシェットとの和解のニュースが飛び込んできた。世界出版社売上げ6位のフランスの出版社であるアシェットが、電子書籍の価格決定権を求めたのに対し、Amazon.com.が同社の近刊予約注文ボタンの削除、在庫補充の拒否など、さまざまに「嫌がらせ的な手法」でアシェットを締め付けたが、最終的にはアシェットの要求が通って和解した。

これは対岸の火事ではない。日本でも電子書籍の価格決定権を有しているのは小学館、講談社、文藝春秋など5、6社で、KADOKAWA、新潮社などの大手すらもっていない。電子書籍価格決定権をアマゾンに握られたら大幅ポイントや安売りをされて、紙媒体の書籍の売れ行きに大きなマイナスの影響がでることは必至で、それでなくとも苦しい出版社や書店は経営危機に陥る。またアマゾン・ベンダーセントラルの情報を取次経由の出版社には有料化するなど、密かにさまざまな方法で取次店外し、直取引が拡大している。そしてアマゾンへの依存度が高まるにつれて、アシェットにしたような、嫌がらせ的手法を駆使して出版社に取引条件切り下げを迫っている。このまま行けば出版社も書店も取次店もアマゾンにやられてしまう。

アマゾンへの出荷停止を初めてそろそろ8カ月目に入るのだが、有隣堂などの書店が応援フェアしてくれたり、東京書店組合などが支持声明をだしてくれた。取次店や他のネット書店からも各社の在庫充実を心がけていただいた。日本の出版界も捨てたものではない。小社の経験でいうと、売り上げは一時的にダウンしたが、すでに回復し、対日販・全取次店の売り上げは、別の要因もあるが前年より伸びている。「アマゾンのシェアが2割もあるから、そんなことはできない」という出版社の言い分も分かるが、アマゾンへ出荷停止したら、一時的に売り上げは落ちるが、そのまま2割落ちるわけではあるまい。読者はもともとAという本がほしいのだ。Aという本がアマゾンで買えなければ、他の書店に買いに行くのは当たり前である。書店の店頭で本に出会って買うことはあっても、アマゾンで本を見て買うことはまずあるまい。

共に出荷停止している水声社は、今年のノーベル文学賞のパトリック・モディアノの本を2冊出しているが、アマゾンは大量発注したが入手できなかった。アマゾンとて本を調達できなければどうしようもない。彼らの弱点はロングテールの一部が切れて、入手できない本が一部でもあることだ。いま出版社は自らの未来を見据えて、だれと手を携えて行ったらいいかを決断すべきときにきている。

後日、日販から申し入れへの回答は11月末日に延期してほしいとの連絡があった。回答を期待したい。

高須次郎緑風出版●出版協会長

『新刊選』2014年12月号 第26号(通巻250号)より

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