出版情報登録センターについて
出版界自身の手で紙と電子の書籍情報を一本化し、新たに出版権設定情報を併せた出版物の基本的なデータセンターを設立することをめざして、日本出版インフラセンター(JPO)は「出版情報登録センター」を7月にも本稼働させる目標で作業を進めている。
書誌情報については、これまでの「近刊情報センター」(JPO)、「Books.or.jp」(書協の書誌データ)、「共通書誌情報システム」(出版デジタル機構の電子書籍書誌情報)等の蓄積を生かす形で、紙と電子の書誌情報を一本化するものだ。既刊情報、近刊情報を登録でき、近刊情報は確定した書誌情報に修正できる。書誌情報とともに「販売促進情報」も追加可能となる。これは、重版、受賞、イベント、プレパブ、映像化・キャラクター化・ゲーム化などの情報が可能となる予定だ。出版社の営業活動に直結した情報を登録でき、出版界が共通で利用することで、出版社の情報発信先が一本化される利点がある。
当面、書誌情報は取次・書店がアクセス(配信・検索)できる形となっている。一般読者への情報提供は、取次・書店を通じての形としている。既存のデータベースの守備範囲との関係はあるだろうが、将来的には一般読者が直接アクセスできるようになるのが自然だろう。
出版情報登録センターで新たに加わるのが「出版権情報」だ。出版権設定情報と出版権者の情報が登録可能となる。
昨年の著作権法改正により、紙・電子それぞれに出版権設定が可能となり、電子書籍の流通も促進されることが予想される中で、出版権設定契約の有無はこれまで以上の重要性を持つことになった。そして、出版権者の権利を守ることとともに、著作権法改正案の付帯決議には「将来的な利活用の促進も視野に入れつつ、出版権の登録・管理制度等を早急に整備する」とされた。この「出版権の登録制度」を、出版界の主導でつくろうというのが、この出版情報登録センターの目的の重要な柱だ。
もちろん現在、文化庁の出版権登録制度はある。だが、登録料(1件3万円)の問題もあり、実際に登録されている出版物は年間数件程度(!)と本当にごくわずかだ。それに代わる、簡単に登録できる制度としてのセンターだ。では、このセンターに登録することで、文化庁に登録するような法的な「対抗要件」となりうるのかというのが、出版情報登録センター構想の始めから論議になってきた。
結論的に言って、法的な「対抗要件」とはなりえない。ただしJPOは、「定着した公開システム」下では、それを確認しないことは過失にあたると判断されやすいので、出版情報登録センターの出版権情報の公開を定着させることで、事実上の登録制度となりうることが期待できるとしている。そして「定着したシステム」と認められるためには、登録の実績・件数が大きな指標になるという。簡単に言えば、法的に即「対抗要件」とはなりえないが、出版界の大勢が認めるシステムになれば、法的にも無視できない物になる、ということだ。
出版協もこの出版情報登録センター設立に向けては、昨年の著作権法改正以降、JPOの出版権・書誌情報基盤整備委員会に3人の理事がメンバーとなり、検討に参加してきた。今年からは出版情報登録センター管理委員会に改組され、さらに2人の理事がメンバー参加して関わっていく。出版者にとって、そして出版界全体にとって有益なシステムとして機能していくように願っている。
水野久(晩成書房)●出版協副会長
書誌情報については、これまでの「近刊情報センター」(JPO)、「Books.or.jp」(書協の書誌データ)、「共通書誌情報システム」(出版デジタル機構の電子書籍書誌情報)等の蓄積を生かす形で、紙と電子の書誌情報を一本化するものだ。既刊情報、近刊情報を登録でき、近刊情報は確定した書誌情報に修正できる。書誌情報とともに「販売促進情報」も追加可能となる。これは、重版、受賞、イベント、プレパブ、映像化・キャラクター化・ゲーム化などの情報が可能となる予定だ。出版社の営業活動に直結した情報を登録でき、出版界が共通で利用することで、出版社の情報発信先が一本化される利点がある。
当面、書誌情報は取次・書店がアクセス(配信・検索)できる形となっている。一般読者への情報提供は、取次・書店を通じての形としている。既存のデータベースの守備範囲との関係はあるだろうが、将来的には一般読者が直接アクセスできるようになるのが自然だろう。
出版情報登録センターで新たに加わるのが「出版権情報」だ。出版権設定情報と出版権者の情報が登録可能となる。
昨年の著作権法改正により、紙・電子それぞれに出版権設定が可能となり、電子書籍の流通も促進されることが予想される中で、出版権設定契約の有無はこれまで以上の重要性を持つことになった。そして、出版権者の権利を守ることとともに、著作権法改正案の付帯決議には「将来的な利活用の促進も視野に入れつつ、出版権の登録・管理制度等を早急に整備する」とされた。この「出版権の登録制度」を、出版界の主導でつくろうというのが、この出版情報登録センターの目的の重要な柱だ。
もちろん現在、文化庁の出版権登録制度はある。だが、登録料(1件3万円)の問題もあり、実際に登録されている出版物は年間数件程度(!)と本当にごくわずかだ。それに代わる、簡単に登録できる制度としてのセンターだ。では、このセンターに登録することで、文化庁に登録するような法的な「対抗要件」となりうるのかというのが、出版情報登録センター構想の始めから論議になってきた。
結論的に言って、法的な「対抗要件」とはなりえない。ただしJPOは、「定着した公開システム」下では、それを確認しないことは過失にあたると判断されやすいので、出版情報登録センターの出版権情報の公開を定着させることで、事実上の登録制度となりうることが期待できるとしている。そして「定着したシステム」と認められるためには、登録の実績・件数が大きな指標になるという。簡単に言えば、法的に即「対抗要件」とはなりえないが、出版界の大勢が認めるシステムになれば、法的にも無視できない物になる、ということだ。
出版協もこの出版情報登録センター設立に向けては、昨年の著作権法改正以降、JPOの出版権・書誌情報基盤整備委員会に3人の理事がメンバーとなり、検討に参加してきた。今年からは出版情報登録センター管理委員会に改組され、さらに2人の理事がメンバー参加して関わっていく。出版者にとって、そして出版界全体にとって有益なシステムとして機能していくように願っている。
水野久(晩成書房)●出版協副会長
『新刊選』2015年4月号 第30号(通巻254号)より
« 出版協 『新刊選』 2015年4月号 第30号(通巻254号) | トップページ | 再び“混迷の出版界”で考える! »
「ほんのひとこと」カテゴリの記事
- 「盗人の昼寝」(2018.08.08)
- 「教育機会確保法」を考える(2018.07.02)
- そうか! 物価の優等生だったのか?(2018.05.28)
- そろそろ後継者問題にも関心を向けたい(2018.04.25)
- 取引格差の是正を(2018.04.04)