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2015年7月

2015年7月31日 (金)

栗田破綻と再生スキーム、その陰の本質的危機

出版協 『新刊選』2015年8月号 第34号(通巻258号)

1P…… 栗田破綻と再生スキーム、その陰の本質的危機

竹内淳夫彩流社)●出版協副会長

2P……出版協BOOKS/8月に出る本

3P……出版協BOOKS/8月に出る本

栗田破綻と再生スキーム、その陰の本質的危機

6月26日、栗田出版販売(株)が民事再生法を申請して破綻した。負債総額は134億円弱とのこと。売上げがピーク時の701億円から昨年9月期には329億円まで落ち込み、大型店の閉鎖や縮小、中小書店の転廃業に伴い、書店からの返品率の増加、売掛金の延滞、回収不能の増加などが理由で、平成21年9月以降、6期連続で経常赤字となった。
リストラや資産売却などの手当をしてきたが、昨年の消費税増税の影響で、売れ行きはさらに落ち込み、返品率も上がって、資金不足に陥り、大手版元の支払い猶予などの支援を受けて、正常化を目指したが、その目途も立たず、自力更生をあきらめて民事再生手続きをした、という。

そして、その再生スキームとして発表されたものが、驚くべき方法であった。法的なことではとやかく言えないが、確かに民事再生法は、破綻した企業が債権者の支援を受けて早期に再生する手立ての仕組みであり、他業種ならその可能性は高い。
なぜなら、基本的に商品の返品が無い業種であれば、債権を一端棚上げにして、破綻に至った病巣を整理し、債権者が商品を供給すれば、システムは動きだし、再生への道は開ける。しかし、返品が前提となっている出版業界では、この再生法自体が本質的に馴染まないものと言えるのではないか。返品も凍結して、いわゆる「新栗田」というシステムを動かすのならば異存はない。

しかしながら、再生スキームと言われるものは、資金保証をする立場の大阪屋と近い将来(来年の春とも言われる)統合(合併)する前提で、破綻した「旧栗田」の返品を版元の新売掛金から相殺するという、どう考えても理解に苦しむものである。法的には義務がないとのことで、これはあくまでも「お願い」ということのようだが、実際には後々、各版元と大阪屋との軋轢を生む種を撒くようなことに思える。

現下の業界を考えれば、取次店の寡占化が進むよりは、小なりとも栗田が再生し、活躍するのが望ましいし、それを支援しようという者も少なくないはずだ。返品を相殺するなどという上から目線の押しつけよりも、同じ仲間として、例えば支援金として小口の寄付なり、社債なりの手立てはなかったのだろうか。今回の再生スキームは、出版界に大きな禍根を残すことになるように思われる。

というのは、栗田の破綻への道は、現在業界が抱えている問題の縮図であるからだ。これまでなら、大手版元を中心に業界内でどうにか支え、あるいは金融機関の支援で再生への道を歩めたであろうことが、もう既にその力が無いことを明らかにしただけでなく、金融機関の債権がゼロという事実は、不動産を持たない限り、金融機関の支援の対象にもならない業種という証明にもなった。また、返品商品を担保に再生出来るということは、委託制度というシステムに甘える前例を破綻取次に容認することになるからである。

売上げ減少は止まる様子もなく、益々加速する様相を見せている中で、取次店の苦戦は、単なる栗田の問題だけではない。
書店の減少。大型店の出店と撤退。アマゾン等の通販。流通システムの遅れ。企画の貧困(新規版元の生成)……。そして、栗田の支払いを保証し、統合を目指す大阪屋もつい先年、他業種からの支援を受けて再出発したばかりという現状である。
統合(合併)するなら、債権債務をすべて含めて新しい展開を目指すのが本来の姿だが、それをする余裕もないというのが本音なのだろう。しかし、だからといって、下世話で言う「身軽になって、一緒になろう」ということではいかがなものであろうか。

嫌みを言っても始まらない。栗田の破綻は、我々が抱えている問題を根本的に考える場にしなければならない。それは、書店、取次、版元のそれぞれの利害を超えて、流通問題や再販制度、取引条件など全ての分野で知恵を出し合い、方策を作らない限りこれからの展望は開けない。業界のリーダー諸氏に是非お考え頂きたい。

竹内淳夫彩流社 )●出版協副会長

2015年7月16日 (木)

栗田出版販売民事再生案スキームを撤回するよう求める

7月6日に栗田出版販売民事再生申立てに関する債権者説明会が開かれ、民事再生申立代理人弁護士から民事再生計画案の説明があった。

この再生計画案のスキームは、出版社に売掛金の放棄を強いるばかりでなく、出版社の同意が必要とはいえ、民事再生申立日の前日である6月25日までの栗田出版販売への搬入出版物の返品を大阪屋経由で出版社に返品入帳させ、大阪屋の支払いから控除するという、出版社に二重に負担を強いる内容である。

これによれば、仮に1000万円の売掛金を持つ出版社は1000万円を失うだけでなく、栗田出版販売の返品が5割ある場合、さらに500万円分の返品を大阪屋経由で買い取らされることになり、合計1500万円の過重な負担を強いられることになる。

債権者説明会でも出版社各社の怒りが爆発したように、売掛金を失うばかりか、自社の返品を大阪屋経由で買わされるなどという事態は、およそ商道徳・商慣習に反するものであり、債権者の利益を不当に害するものであって、絶対に許されるものではない。この再生計画案スキームは栗田出版販売の膨大な債務を、すべて出版社に押しつけた上で、同社を身軽にして帳合書店ごと来春、大阪屋に統合しようという乱暴で身勝手な計画といわざるをえない。

このようなことが許されるならば、すでに始まっている連鎖倒産が示すように、多くの出版社が経営危機に追い込まれ、日本の出版文化は危殆に瀕することとなる。


中小出版社90社で組織される日本出版者協議会は、民事再生申立代理人並びに栗田出版販売に対し直ちに再生計画案スキームを撤回するよう求めると共に、裁判所におかれては、かかる債権者の利益を不当に害する再生計画案を認めないよう強く要請する。                      

沖縄 2 紙への言論弾圧に抗議する

沖縄県民が反対している辺野古新基地建設問題で、2015625日、作家・百田尚樹氏と自民党議員から、憲法21条「言論・出版・表現の自由」を真っ向から否定し、沖縄を侮辱する発言が相次いだ。自民党議員の勉強会で、「沖縄のマスコミをこらしめるためには広告収入をなくせばいい」という議員の発言があり、それに応えて講師の百田氏が「沖縄の2つの新聞はつぶさなければいけない」という暴言をはいている。私的発言ではなく、安倍政権の方向性そのものを示唆していると思われる。自民党議員が百田氏の発言をうながしている形になっており、これは憲法を無視した報道・言論統制である。

 

百田氏は普天間基地についても「飛行場の周りに行けば商売になるということで人が住みだした」「基地の周りは田んぼだらけだったのが、40年たって街の真ん中に基地がある」と発言し、普天間の歴史を全く踏まえていない。もともと市街地の中心に住んでいた人々を強制的に立ち退かせ、米軍ヘリコプター部隊が移ってきたのであって、こうして「日本で一番危険な飛行場」となってしまったのだ。2004年の普天間米軍ヘリコプター墜落事故の恐怖はいまだぬぐい去れていない。基地撤去どころか移設地として辺野古の珊瑚の海に滑走路を造ることを強行しようとしている。

沖縄県民の怒りは、昨年の県知事選挙で辺野古基地反対の翁長知事を選んでいる。しかし、日本政府・安倍内閣はその翁長知事とまともな話し合いをすることを拒否し、沖縄県民を無視している。基地を撤去しようという外交努力を全くしていない。

 

安倍政権は、昨年の集団的自衛権の閣議決定から現在の安保関連法案へと、憲法無視の戦争参加への道を進もうとしている。その中での沖縄への差別発言であり、見逃すことができない問題として、強く抗議するものである。           

2015年7月 3日 (金)

「ヘイト表現」と「表現の自由」を考える

●日本出版者協議会プレゼンツ●トークイベント●

「ヘイト表現」と「表現の自由」を考える

パネリスト

木瀬貴吉(ころから代表)×平井康嗣(週刊金曜日編集長)×
岩井信(弁護士)×青山賢治(日本出版者協議会「出版の自由」委員会委員長)

司会
深田卓(インパクト出版会代表)

日時
7月23日(木) 19時(開場18時30分)~21時

場所
水道橋・会議室「内海」2階会場

内海地図

【概要】
「嫌韓本」や「嫌中本」、あるいは差別を助長するようなヘイト本が書店の
平台を賑わすようになって久しい。
なかにはベストセラーになった本も散見され、「神風の到来」とばかりに、
ヘイト本の出版にいそしむ出版社も少なくない。またそうしたヘイト本に
追随するかたちで、日常社会(あるいはネット社会)における差別圧力も
日増しに強くなってきており、嫌悪感を覚えるような差別用語を耳にしない日はない。

私たちは、そうした状況をどう考え、どのように向き合っていけばいいのだどうか。
今回のトークイベントでは、メディアの現場、司法の現場でこのような問題に
取り組んでいる識者をお招きし、様々な見解とこれからのビジョンを議論してみたい。

【参加費】1,000円

懇親会(21時30分より/会費3000円程度)

【協賛】株式会社金曜日

『「ヘイト表現」と「表現の自由」を考える』集会協賛メッセージ

活字の世界に生きる者にとって、「表現の自由とは何か」は永遠(とわ)の命題です。
原則としてあらゆる「表現」が「自由」なのは当然のことですが、たとえばヘイトスピーチは
「表現」か否かとなると意見が分かれます。
仮に「表現」に値しなければアプリオリに「自由」が認められることにはなりません。

私は、民族差別や人格攻撃の言辞は「表現」ではなく「暴力」と考えます。
しかし、直ちに権力機構によって取り締まるべきかとなると、そこにはまた多様な見解が
あります。
実りある論議から、私たちの進むべき道が見えてくることを期待します。
(『週刊金曜日』発行人/北村 肇 2015.7.23)

【申込方法】
日本出版者協議会事務局に、FAXかメールにてご予約ください。
FAX:03-6279-7104 E-mail:shuppankyo@neo.nifty.jp
お問い合わせ:03-6279-7103
【主催】日本出版者協議会

開催日時:2015年7月23日(火)19:00~

チラシでみる

2015年7月 1日 (水)

出版協 『新刊選』2015年7月号 第33号(通巻257号)

1P  …… 出版情報登録センター(JPRO)本格稼働と…
水野久
晩成書房 )●出版協副会長

2P  ……出版協BOOKS/7月に出る本 
3P  ……出版協BOOKS/7月に出る本

出版情報登録センター(JPRO)本格稼働と…

出版協も加盟している日本出版インフラセンター(JPO)の「出版情報登録センター(JPRO)」が7月1日より本格稼動し始めた。6月30日には、東京・神楽坂の日本出版クラブで「開通式」が開かれ、出版関係者ら約100名が本格稼働を祝った。
 
JPOでは、これまで「近刊情報センター」と「商品基本情報センター」によって、紙の本の書誌情報を収集してきた。この二つの機能がひとつながりにまとめられた形だ。そこに、これまでは扱っていなかった電子の書誌情報も、登録できる枠組みとなり、紙・電子一体の書誌情報データベースとなる。

この書誌情報には、その本についての「販売促進データ」を付加することもできる。重版、受賞、イベント、プレパブなどの情報やPOPなどの宣伝物データも、期間限定の情報として付加できる。

これらのデータが取次・書店に提供されるので、出版社側から言えば事前注文、事後(発行後)販促ツールとしても活用可能なセンターということになる。

さらに特徴的なのは、「出版権情報」だ。昨年改正され、本年より施行された改正著作権法により、出版権が電子書籍にも拡張されたことで、出版権の有無はこれまで以上に重要な問題となった(つまり、出版権設定の契約がされているのかが、極めて重要な問題になったことは、このかん本欄でもくりかえし書かれてきた通りだ)。今回この出版権の設定がされていることを「登録」し、公開できることとなった。カッコつき登録としたのは、文化庁の著作権登録制度は法的な「対抗要件」となる制度だが、設立された「出版情報登録センター」の出版権情報「登録」は、法的な「対抗要件」になるわけではないからだ。ただし、JPOでは業界の多数が参加する定着した公開システムとすることで、事実上の登録制度として実効性を確保することを目指している。

「商品基本情報センター」は、出版業界自身による紙・電子をあわせた書誌情報(近刊情報・販売促進情報を含む)・出版権情報のデータベースであり、今後、このデータベース情報が、業界の基本データとして活用されていくことが予想される。出版協は、このセンターの設立にあたって高須会長はじめ5名が管理委員会の委員として参加し検討に加わり、設立資金の負担にも応じてきた。本稼働以後も、とりわけ中小出版社の視点から、このセンターが有効に機能していくよう、運営に関与していくことにしている。情報面で不利になりやすい中小出版社が活用できる基本インフラとして定着していくことを願っている。

さて、その「開通式」の席でもあちこちで情報交換が行われていたのが、栗田出版販売株式会社が民事再生法の適用を申請した件だ。6月26日、大手出版社の一部は午前中から対応策をとり始めたようだが、出版協理事会が確認できたのは午後も夕方近くのニュースだった。栗田出版販売から各出版社に「ご連絡(弊社民事再生手続開始申立について)(6月26日付)」をはじめとする17枚のFAXが届いたのは26日深夜、小社に届いたFAXに印字されていたのは27日2時過ぎだ。土日をはさんで29日、出版協では情報収集・情報交換につとめ、臨時理事会を開き当面の対応を検討した。

栗田出版販売の「連絡」では、6月25日までの取引債務を凍結したうえで、26日以降の取引は仕入については大阪屋が、物流・返品実務はOKSと出版共同流通が支援することで、事業を継続するとしている。

地域の読者につながりの深い中小書店との取引の多い老舗の取次、栗田出版販売にはぜひ再生してほしいが、どのような再生への道のりが示されるのか、FAXの文書では不明な点が多々あり、7月6日に行われる「債権者説明会」を注視したい。

水野久晩成書房●出版協副会長
『新刊選』2015年7月号 第33号(通巻257号)より

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