出版情報登録センター(JPRO)本格稼働と…
出版協も加盟している日本出版インフラセンター(JPO)の「出版情報登録センター(JPRO)」が7月1日より本格稼動し始めた。6月30日には、東京・神楽坂の日本出版クラブで「開通式」が開かれ、出版関係者ら約100名が本格稼働を祝った。
JPOでは、これまで「近刊情報センター」と「商品基本情報センター」によって、紙の本の書誌情報を収集してきた。この二つの機能がひとつながりにまとめられた形だ。そこに、これまでは扱っていなかった電子の書誌情報も、登録できる枠組みとなり、紙・電子一体の書誌情報データベースとなる。
この書誌情報には、その本についての「販売促進データ」を付加することもできる。重版、受賞、イベント、プレパブなどの情報やPOPなどの宣伝物データも、期間限定の情報として付加できる。
これらのデータが取次・書店に提供されるので、出版社側から言えば事前注文、事後(発行後)販促ツールとしても活用可能なセンターということになる。
さらに特徴的なのは、「出版権情報」だ。昨年改正され、本年より施行された改正著作権法により、出版権が電子書籍にも拡張されたことで、出版権の有無はこれまで以上に重要な問題となった(つまり、出版権設定の契約がされているのかが、極めて重要な問題になったことは、このかん本欄でもくりかえし書かれてきた通りだ)。今回この出版権の設定がされていることを「登録」し、公開できることとなった。カッコつき登録としたのは、文化庁の著作権登録制度は法的な「対抗要件」となる制度だが、設立された「出版情報登録センター」の出版権情報「登録」は、法的な「対抗要件」になるわけではないからだ。ただし、JPOでは業界の多数が参加する定着した公開システムとすることで、事実上の登録制度として実効性を確保することを目指している。
「商品基本情報センター」は、出版業界自身による紙・電子をあわせた書誌情報(近刊情報・販売促進情報を含む)・出版権情報のデータベースであり、今後、このデータベース情報が、業界の基本データとして活用されていくことが予想される。出版協は、このセンターの設立にあたって高須会長はじめ5名が管理委員会の委員として参加し検討に加わり、設立資金の負担にも応じてきた。本稼働以後も、とりわけ中小出版社の視点から、このセンターが有効に機能していくよう、運営に関与していくことにしている。情報面で不利になりやすい中小出版社が活用できる基本インフラとして定着していくことを願っている。
さて、その「開通式」の席でもあちこちで情報交換が行われていたのが、栗田出版販売株式会社が民事再生法の適用を申請した件だ。6月26日、大手出版社の一部は午前中から対応策をとり始めたようだが、出版協理事会が確認できたのは午後も夕方近くのニュースだった。栗田出版販売から各出版社に「ご連絡(弊社民事再生手続開始申立について)(6月26日付)」をはじめとする17枚のFAXが届いたのは26日深夜、小社に届いたFAXに印字されていたのは27日2時過ぎだ。土日をはさんで29日、出版協では情報収集・情報交換につとめ、臨時理事会を開き当面の対応を検討した。
栗田出版販売の「連絡」では、6月25日までの取引債務を凍結したうえで、26日以降の取引は仕入については大阪屋が、物流・返品実務はOKSと出版共同流通が支援することで、事業を継続するとしている。
地域の読者につながりの深い中小書店との取引の多い老舗の取次、栗田出版販売にはぜひ再生してほしいが、どのような再生への道のりが示されるのか、FAXの文書では不明な点が多々あり、7月6日に行われる「債権者説明会」を注視したい。
この書誌情報には、その本についての「販売促進データ」を付加することもできる。重版、受賞、イベント、プレパブなどの情報やPOPなどの宣伝物データも、期間限定の情報として付加できる。
これらのデータが取次・書店に提供されるので、出版社側から言えば事前注文、事後(発行後)販促ツールとしても活用可能なセンターということになる。
さらに特徴的なのは、「出版権情報」だ。昨年改正され、本年より施行された改正著作権法により、出版権が電子書籍にも拡張されたことで、出版権の有無はこれまで以上に重要な問題となった(つまり、出版権設定の契約がされているのかが、極めて重要な問題になったことは、このかん本欄でもくりかえし書かれてきた通りだ)。今回この出版権の設定がされていることを「登録」し、公開できることとなった。カッコつき登録としたのは、文化庁の著作権登録制度は法的な「対抗要件」となる制度だが、設立された「出版情報登録センター」の出版権情報「登録」は、法的な「対抗要件」になるわけではないからだ。ただし、JPOでは業界の多数が参加する定着した公開システムとすることで、事実上の登録制度として実効性を確保することを目指している。
「商品基本情報センター」は、出版業界自身による紙・電子をあわせた書誌情報(近刊情報・販売促進情報を含む)・出版権情報のデータベースであり、今後、このデータベース情報が、業界の基本データとして活用されていくことが予想される。出版協は、このセンターの設立にあたって高須会長はじめ5名が管理委員会の委員として参加し検討に加わり、設立資金の負担にも応じてきた。本稼働以後も、とりわけ中小出版社の視点から、このセンターが有効に機能していくよう、運営に関与していくことにしている。情報面で不利になりやすい中小出版社が活用できる基本インフラとして定着していくことを願っている。
さて、その「開通式」の席でもあちこちで情報交換が行われていたのが、栗田出版販売株式会社が民事再生法の適用を申請した件だ。6月26日、大手出版社の一部は午前中から対応策をとり始めたようだが、出版協理事会が確認できたのは午後も夕方近くのニュースだった。栗田出版販売から各出版社に「ご連絡(弊社民事再生手続開始申立について)(6月26日付)」をはじめとする17枚のFAXが届いたのは26日深夜、小社に届いたFAXに印字されていたのは27日2時過ぎだ。土日をはさんで29日、出版協では情報収集・情報交換につとめ、臨時理事会を開き当面の対応を検討した。
栗田出版販売の「連絡」では、6月25日までの取引債務を凍結したうえで、26日以降の取引は仕入については大阪屋が、物流・返品実務はOKSと出版共同流通が支援することで、事業を継続するとしている。
地域の読者につながりの深い中小書店との取引の多い老舗の取次、栗田出版販売にはぜひ再生してほしいが、どのような再生への道のりが示されるのか、FAXの文書では不明な点が多々あり、7月6日に行われる「債権者説明会」を注視したい。
水野久(晩成書房)●出版協副会長
『新刊選』2015年7月号 第33号(通巻257号)より
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