国立大学の「文系学部廃止政策」に反対する
安倍政権下にある文部科学省は、2015年6月、全国86の国立大学に対し、今後6年間に教員養成系および人文系の学部の廃止、または再編成を行うよう指示を出した。2013年6月に閣議決定された「国立大学改革プラン」を受けたものであるが、「独立行政法人化」「グローバル化」の押しつけで、今や国立大学は徹底した経済の論理によって文科省に支配されている。文科省の矢継ぎ早の要請で教員への労働負担だけが増え、文系大学の予算配分も権限も削り取られている。すでに地方の国立大学では私立大学への教員の流出が始まっている。
大学教育は金儲けのためにあるわけではない。日本は明治以来、全国に国立大学を設立し、奨学金制度を充実させて、できるだけ多くの若者たちに就学機会を提供しようとしてきた。それは若者が日本の未来を託すことができるような市民的成熟を果たすように支援するためである。国立大学が自国の歴史や文化に対する愛着も関心もなく、ひたすらグローバル資本主義に邁進し、高い地位と年収をめざす学生たちの競争と格付けだけのための場になった国に未来はないだろう。
安倍政権の「教養の必要性の軽視」という教育政策が進めば、政治や社会への批判的視点を持てない、物言わぬ専門家ばかりが育成されることになる。戦前のファシズムへ逆戻りである。そして、日本の出版不況はさらに危機的な状況を迎えるだろう。このままでは、大学教育が重きを置かなくなる人文・社会科学の書籍の需要が急激に低下することは間違いないだろう。
「人間とはなにか」「社会とはなにか」「学問とはなにか」を問い、先人の知的蓄積を継承し、未来を構想するのが「文化的教養」だろう。若者がそれを享受できるような社会にするためにも、今回の国立大学の「文系学部廃止政策」には強く反対するものである。
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