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2015年11月

2015年11月30日 (月)

栗田出版販売の民事再生計画案に反対する

今年も早師走である。出版界は底の見えぬ不況の中で喘いでいる。今年もあまり明るい話はなかったが、その最たるものが栗田出版販売の民事再生申立であった。
11月5日付けで、栗田出版販売の民事再生案が東京地裁から一斉に送られてきた。同時に栗田出版販売から、栗田出版販売株式会社代表取締役名の「弊社再生計画案のご案内」、大阪屋代表取締役名の「栗田出版販売株式会社との『統合』に関しまして」、各社別の「再生計画案における弁済要旨」が送られてきた。
それによると、
①  50万円以下の少額債権(総額7300万円)は全額100%弁済する。
②  非少額債権者は、非少額債権のうち50万円は一律で弁済する。
③  非少額債権のうち50万円を超える債権部分に対して、第一回弁済は13.2%、追加弁済予定として4.2%、合計して17.4%の弁済を目指す。

再生債権額計111億1600万円に対し①から③までの弁済見込額は計23億7800万円となり、予定全体弁済率は21.3%となる。
また再生債権のうち栗田からの返品を大阪屋経由で入帳することに対して出版社からの不満、抗議が強く寄せられたことから、1カ月程度の返品分を再生債権から減額することにした、いわゆる「返品相当額」を加えると、予定全体弁済率は32.0%となるという。
さらに、大阪屋と栗田が共同で設立したOKCに対する栗田の債務を大阪屋も連帯保証しているが、この連帯保証債務16億4500万円の免除を受けた場合は、③の第一回弁済は16%、追加弁済予定として5.0%、合計して21.0%となり、予定全体弁済率は25.5%の見込みという。さらに「返品相当額」を加えると、予定全体弁済率は38.2%となるとのことだ。

この結果、出版社を大多数とする2000社あまりの再生債権者は約900社となり、12月24日の債権者集会で、債権額の過半数、出席債権者の過半数が賛成すれば再生計画案は成立する。再生計画認可決定は来年の1月下旬で、認可決定後4カ月以内(4月末日予定)に第一回弁済が行われ、その後追加弁済が行う予定という。

7月の債権者説明会で、再生案二次卸スキームに出版社の猛烈な抗議が起こった。出版協は7月10日、「栗田出版販売民事再生案スキームを撤回するよう求める」声明を発表し、栗田からの返品を納品もしていない大阪屋から返品入帳するという倍返しの驚くべきスキーム案を撤回するよう求めた。出版梓会などの老舗版元も偕成社や有斐閣、インプレスなど専門書版元中心に約58社が「質問する会」を組織し、事実上反対に回った。こうしたことから、栗田の再生債務者側も返品相当額を再生債権から控除するなどの譲歩案を示した。

今回の再生計画案は、別紙声明1にあるように、「50万円以下の債権者に対する全額弁済および全体としての予定弁済率が、一般的な民事再生事案と比べ高い点は評価できるといえるが、これも再生スキームへの反発を考慮した結果といえよう。
そもそもこの再生案の問題点は、「債権者に債権額以上の加重負担を返品で強いるスキームに拠っていることへの不信感にある。今後、現・栗田出版販売帳合の書店が大阪屋帳合の書店として取引が始まれば、再生債権内に含まれているはずのものが大阪屋の返品となって出版社に戻されてくるだろうことは想像に難くない。」(声明)という点である。
極めて問題のあるスキーム案は維持したまま、通常の民事再生に比べて弁済率を高くすることで、こうした批判にある程度答えようとしたものであることは確かだ。しかし、債権額が多くなるほど弁済率は低くなり、通常の民事再生の弁済率とあまり変わりなくなってしまう。しかも大阪屋経由の返品を栗田の平均返品率40%以上で出版社が入帳せざるを得なくなると、債権額の多い出版社ほどさらに損失が拡大することになる。
出版協としては、こうした再生計画案を一旦認めてしまえば、今後同じようなことがあると前例にされてしまうことを怖れる。したがって、この再生計画案には反対を表明する。そして大阪屋経由の返品入帳が新たな問題として浮上してこよう。

話は変わるが、別紙声明2にあるように、アマゾンはスチューデントポイントに加え、私たちが怖れていた、一般読者向けの抱き合わせのポイントサービスを拡大している。1%から最大10%という。スチューデントポイントと合わせると最大20%になるという。これではリアル書店はたまったものではない。書店をのぞいても、人がいない。書店はどんどん減り続けている。都内の山手線、中央線沿線駅でも書店がなくなったり、1店しかないような駅が増えてきている。
出版社や取次店が再販契約の遵守を毅然として求めていかないと、気が付いたときには書店を見つけるのも大変なような、砂漠になってしまう畏れさえある。その時は出版社も生きていけないことになるだろう。

出版社がポイントサービスを再販契約違反の値引きと判断した場合、小売店は該当社の商品の除外をしなければならない。アマゾンは再販契約に従い該当社の商品の除外を行う義務がある。現に楽天ブックは出版社の除外要請に応じている。アマゾンは出版社のポイント除外要請に従うべきである。従わないのなら、出荷停止で臨むしかない。出版協会員社の小社緑風出版、水声社、晩成書房のアマゾンへの出荷停止もまもなく21カ月目にはいる。
アマゾンを怖れるあまり、出版社が手を拱いていれば出版業界は崩壊する。そう時間は残されていないのだ。それで良いのなら何をか言わんや、である。

    

高須次郎緑風出版 )●出版協会長

2015年11月20日 (金)

アマゾンに対して、高率ポイント付与からの除外要請の受け入れを求める声明

出版協会員社三十余社は、Amazon Studentプログラムのポイント付与を再販契約違反と判断し、2013年7月以来、同プログラムのポイント付与対象からの自社商品の除外を要請してきているが、アマゾンからは、これまで何の回答もなされていない。一方、楽天では、楽天ヤングのポイントからの除外要請を受け入れ、対象除外の出版社名をサイト上で明記している。

 

 Amazon Studentプログラムの10%という高率のポイント付与は、再販制度をまったく無視した値引き販売であり、当初、学生だけに限られていたこうしたポイント付与が、確認した限りでは、通常販売においても、任意の書籍に1%から10%までのポイントを付与する形で行われている。Amazon Student会員であれば、このポイントが上乗せされ、最大20%のポイント付与という大幅な値引きとなる。

 

 どういう基準で任意の書籍ごとにポイント付与がなされているのかは不明であるが、付与されるポイント率は、常に変動していて、同じ本でも翌日には、ポイントが上がっていたり下がっていたりしている。

 

これまでアマゾンは、直接取引(契約)関係にないという理由で、出版協会員社との協議に一切応じず、取次を通じての度重なる除外要請にも応えることがない、いわばやりたい放題の状態である。こうしたポイント付与の原資がどこから出るのかはわからないが、国内書店の取引条件からは考えられない値引率である。まして、再販契約を順守する通常のリアル書店、国内の他のネット書店は、再販契約無視のアマゾンの高率ポイントにより営業上不当なハンデを負わされており、アマゾンの寡占状態になることを危惧する。

 

出版協は、アマゾンに対して、こうした高率のポイント付与を再販契約違反と判断し、同サービス対象からの自社商品の除外を要請した出版社の商品を、各社の要望に沿って、直ちにポイント付与の対象から除外するよう、改めて求める。

 

わが国の出版文化を支えてきた出版物の再販制が溶解することを許さず、これ以上街から書店が消えていくという事態をくい止めるためには、個々の出版社がアマゾンに対して強い態度で臨むしかないであろう。事態は刻一刻と悪化している。

 

以上

 

栗田出版販売株式会社の民事再生計画案に反対を表明する

 

11月に入り、50万円を超える再生債権のある出版社各社に、東京地裁からは再生計画に関する議決票・通知書および再生計画案・意見書の写しが、また、栗田出版販売からは補足資料として、「弊社再生計画案のご案内」「栗田出版販売株式会社との「統合」に関しまして」および各社別に弁済予定額の入った「再生計画案における弁済要旨」が送付された。

 

それらによるとスポンサー企業が大阪屋一社になり、2月1日をめどに10月にすでに設立済みの大阪屋の完全子会社「栗田」に栗田出版販売を吸収分割の上、「栗田」と大阪屋が4月1日をめどに合併し存続会社を大阪屋にするという。また、予定弁済率は21.3%で、OKCに対する連帯保証債務の免除を受けた場合は最大25.5%の可能性もあるという。

 

50万円以下の債権者に対する全額弁済および全体としての予定弁済率が、一般的な民再生事案と比べ高い点は評価できるといえるが、そもそもこの再生案の問題点は、債権者に債権額以上の加重負担を返品で強いるスキームに拠っていることへの不信感にある。今後、現・栗田出版販売帳合の書店が大阪屋帳合の書店として取引が始まれば、再生債権内に含まれているはずのものが大阪屋の返品となって出版社に戻されてくるだろうことは想像に難くない。

 

さらに、この再生案では合併後も従業員の雇用は継続されるというが、民事再生申し立て以降の役員以下、栗田出版販売各位の当事者意識の薄さが不信感を増幅させた面も大きい。

 

元来、事業合併と債務解消は別の次元で考えられるべき問題であり、加えて、出版及びその関連業界は公共性の高さから、公正性・公平性・透明性が求められるべきであり、この点からもこの再生案自体に首肯できない。

 

中小出版社88社で組織される日本出版者協議会は、この再生案そのものに対する不信、また諸過程の公正性・公平性・透明性の不足をもって、ここに栗田出版販売の民事再生計画案に反対を表明する。

 

以上

 

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