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2016年2月

2016年2月29日 (月)

出版協「新刊選」2016年3月号第41号(通巻265号)

1P…… 太洋社は自主廃業できるのか

高須次郎緑風出版 )●出版協会長
2P……1P続き
3P……出版協BOOKS/3月に出る本
4P……出版協BOOKS/3月に出る本

太洋社は自主廃業できるのか

嫌な話ばかりが続く。昨年の栗田出版販売の民事再生につづいて、今度は太洋社が自主廃業するという。昨年から経営危機と自主廃業の噂が流れていたので予想はしていたが、都内老舗書店の芳林堂書店の太洋社への支払いが滞っていたため、太洋社が遂に商品供給をストップしたことから、一気に噂が広がった。ただ自主廃業かどうかは不明だった。2月5日に太洋社からのFAXが送られてきて、8日に自主廃業に向けての説明会があるとの連絡が出張先に入った。

業界紙によると、業界第5位の太洋社は2005年6月期に売上高487億円を記録したが、それ以降売上高が減少し、2015年6月期の売上高は171億円にまで落ち込み、純損失約8億2300万円を計上していた。このため2010年頃から本社など不動産の売却で凌いできたが、4年連続の赤字決算で、再建の見込みが立たず、自主廃業を決めた模様であるという。

太洋社がこの10年間で三分の一近く売上げを減少させたのは、単に出版不況と言うだけでは説明がつかない。書籍・雑誌の推定販売金額は、2005年に2兆1964億円から2015年は1兆5220億円に約30%減少している。この比率を当てはめると太洋社の売上は340億円程度の水準に止まっていていいはずだ。ところがさらに170億円程度の売上を失っている。原因は帳合書店が他取次店に奪われたということらしい。

業界紙や小社の記録を辿ると、2008年に文真堂書店がトーハンへ帳合変更をしたのを皮切りに、2012年には、いまじん(大垣店、大桑店)が日販に、こまつ書店(6店舗。10月、トーハン)、喜久屋書店小樽店など5店舗(12月、トーハン)、東武ブックス(十数店舗)、メロンブックス、ブックスフジ(2店舗。13年2月)などが帳合変更し、43億円の返品が発生した。書泉を吸収したアニメイトも他帳合となった。13年にはハイパーブックス(滋賀6店舗)、15年2月にはTRCが日販に、同年9月にはブックスタマ(12店舗。15年9月)がトーハンに帳合変更した。本年になって大洋図書のFC店188店が日販へと帳合変更した。
こうしてみると、トーハン、日販による草刈り場の様相を呈している。出版不況のなかで生き残りを懸けた大手取次店による帳合はぎ取りにあい、今日の事態を迎えたといえよう。これで耐えるのは難しい。しかし、太洋社側にも対処の仕様はなかったのか?

その8日の説明会場は、栗田出版販売民事再生説明会と同じ会場、ベルマール汐留で、ほぼ満席であった。自主廃業ということなら焦げ付きはないので、さほどの緊張はないようにうかがわれた。
説明会は、5日にファックスされた「書籍・雑誌等の供給継続のお願い」と同じ文書を同社社長が改めて読み上げ説明した。出版不況にともない、入金の遅れがちな一部の取引書店を支援してきたが、入金が滞り「売掛金の焦げ付き発生の畏れ」等があり、また帳合変更などにより「売上高が激減」したため、「今後の弊社事業の行く末を見据えますと、いずれ、自主廃業を想定せざるをえないことから」、出版社への支払いに応じられるうち、自主廃業することとしたと述べた。

具体的には、出版社には①引き続いての書籍・雑誌等の供給継続、②常備伝票切り替え、書店には、③帳合変更をお願いすると述べた。ただし帳合変更は、太洋社に対する買掛金の精算が必要であり、帳合変更の「引き受け先がない書店は廃業することになる」と言い切った。出版社からは、自主廃業のタイムスケジュール、昨年末の経営数字、売掛金の焦げ付きや資産内容などについて質問が相次いだ。

会場からの質問で、①昨年12月末の書店売掛金47億5000万円、出版社買掛金47億数千万円、年末の中間決算の数字は「営業損失については、億単位での赤字を計上、②不動産は戸田の物流センターその他で約14億円、③有価証券1億円、借入金7億、などが明らかになった。借入金を返済しても7億円は残るといわれても、売掛金がスムーズに完済されての話で、書店に対する売掛金の焦げ付き率が不明であるとの答えだ。「今現在は自主廃業を目指しておりますが、将来どのようになるのかはということについて確定的なお話をするのは難しい状況です」、「3月以降の支払いについては、資産の精査を進めた結果次第」、「自主廃業のタイムスケジュールは分からない」、と同社社長の曖昧な説明が続くと、参加出版社のあいだに戸惑いと不信感が広がった。売掛金の焦げ付きや不動産も十数億円ということから、自主廃業自体にも疑問符が投げかけられた。これでは、書店への商品供給の継続を求められても不安が先立ち、送品を止める出版社が多いと見られる。

書店にはすぐ影響がでてきた。カルコスや知遊堂は帳合を変更したが、友朋堂書店は閉店した。太洋社の取引書店は約300法人800書店というが、今回の太洋社の自主廃業で、廃業書店が一気に増えると思われる。3月上旬が次の山場となろう。私の留守に友朋堂書店から常備返品の連絡がきて、店舗は閉鎖したが再開を期すので、その時はよろしくと挨拶を頂き、こちらこそよろしくと答えたそうだ。土浦からつくばセンターを経て歩いて同店を初めて訪問した若い頃を思い出した。なんとかがんばってもらいたい。

新刊選のこの「ひとこと」を書き上げて、事務局に送信しようとしているところに、太洋社からFAXが入って来た。「中間決算書送付および弊社の状況ご報告」(1月22日付)である。
1 中間売上高は63億2100万円、
間経常損失3億210万円、中間期純損失1億9400万  で、売上は 急減した。
2 売掛金47億のうち大口取引書店の売掛金12億円が焦げ付く可能性があり、他の「主要延滞売掛先」も焦げ付く事態にあり、「およそ売掛金の半分近くが焦付くこととなります」。
3 不動産については、引き合いはあるが、まだ一件も売却できていない。
4 帳合変更は見込みを含め50社350店舗で、「帳合変更に伴なう回収実績は平成28年2月末時点でおよそ9億400万円」で、「帳合変更を諦め、個別取立の強化を検討せざるをえない」。
と危機的現状を報告した。返品が4割も来れば、残りはわずかとなろう。

同社はこうした現況を踏まえ、「弊社では、書籍等の供給を継続して頂いているお取引出版社さまにご迷惑をお掛けすることのないように、現時点では、主に、帳合変更が現に進んでいるお取引書店様からの注文・取引に係る書籍等について供給を継続して頂けるように取次業務内容を慎重に点検する」とともに、出版社には「これまでとは異なり、配本先にもご留意頂いたうえ、既に帳合変更の手筈が整ったお取引書店様への書籍等の供給に遺漏なきようご協力をお願い申し上げます」とある。

太洋社の取引先300法人800書店の残り250法人450書店には雑誌書籍を流さずに取立に徹するというのである。
これでは、太洋社自身の自主廃業の展望もなくなり、膨大な書店が廃業に追い込まれるという、最悪の事態を迎えそうだ。             

帝国データバンクの大型倒産情報によると、2月26日、芳林堂書店が東京地裁に自己破産を申請し同日付で破産手続き開始決定を受けた。負債は20億円。関連店舗は高田馬場本店他8店舗とのことである。別情報によると、店舗事業等はアニメートグループの書泉に引き継がれるまで営業継続とのことである。これで太洋社はますます追い詰められたといえよう。           

    

高須次郎緑風出版 )●出版協会長

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