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2016年9月27日 (火)

凱風社 新田 準さんを偲ぶ

私たちの古い友人、凱風社の新田さんが今年7月9日、16時に亡くなりました。
1946年生まれの、69歳でした。
あまりにも早い死でした。
かなり前から糖尿病を、そして数年前から癌を患っていた事は知っていましたが、亡くなったという知らせを受けたときは、「ウソだろう!」という気持ちで、受け入れることが出来ませんでした。

出版協の前身「出版流通対策協議会(流対協)」の初期の頃から幹事を務め、なにか問題が生じれば、問題解決に全力で関わってくれました。

先日、「新田さんを偲ぶ会」を、彼と関わってきた人たちと共に、ささやかに行いました。
故人の願いは「静かに行かせてくれ」だったのです。取り立てての挨拶も司会者による指名もない会でしたが、友人たちが静かに彼の思い出を語り酒を飲み交わしました。

思えば、彼は様々な会に積極的に関わってきました。出版協、アジアの本の会、平和の棚の会、沖縄ブックフェア等々。
その時々、彼は、あの笑顔と彼独自の博識さでフェアの呼びかけを作り、ポスター、立て看を作ってくれました。
そして、コンピュータ上のトラブルには事細かな指示でトラブルを解消し、運営上のもめ事が有れば、それこそ我が身の問題として、もめ事解消のアドバイスを出し続けてくれました。

彼は大学卒業後、商社に就職し主にヨーロッパ駐在員として東欧諸国を飛び回っていました。そこで培われた語学と、日常会話の奥に潜む微妙な言葉のニュアンスの違いを肌で理解していたようです。プロの翻訳者も時には、彼の微妙な翻訳のニュアンスの違いに舌をまいていたそうです。
そんな彼がグーグル問題の時は大活躍してくれました。2009年グーグルが商業利用を目的に、書籍の全ページを無断スキャニングする暴挙にでたときです。当然流対協は反対行動を起こします。グーグル本社への抗議・拒否表記の仕方、アメリカの出版社・作家組合の動き、フランスのグーグルへの裁判闘争の報告など、世界の動きを新田さんは原文を翻訳し、私たちに知らせてくれました。彼の翻訳がどれほど私たちの活動などに勇気を与えてくれたか、「感謝」です。
さらに、めまぐるしく変動を続けている「書店の新規開店、閉店情報」を知る限りの範囲で、彼は真剣に流し続けてくれました。
彼独特のあの笑顔の裏の、真剣に物事に対応する彼の心を、知れば知るほど「亡くなった」と言うことが悔やまれてなりません。

問題解決に全力で力を出してきた彼でしたが、病には勝てなかったということでしょうか。

思えば、彼は69歳、私は今年71歳。敗戦生まれと初期団塊の世代です。もはや年寄りの部類にどっかりと浸っている年代です。同年代と酒を飲んでも、出る話は、共に現在抱えている体の不調話ばかりです。私が今一番の体が抱えている問題は、りっぱな「椎間板ヘルニア」です。春先まではパンツはおろか、(パンツをはかないという快感に開眼しました)靴下を履く事も困難な状況が続きました。出社、退社のバスを降りてからの家までの片道20分は地獄です。現在は、ある出版社(現代書●)の出している『椎間板ヘルニアは切らずに治す』を毎日お題目のように唱えかつ信じて(本の中身は目を通していません)メスを入れずに痛みとの格闘生活を送っています。

私たち出版業界の仲間内から、訃報の知らせをよく聞くようになってきました。
しみじみ「ああ、働けるのもあと数年あるかな?」が実感です。

新田さん、会う機会が近いかもしれないね。その時も「あの世の差別と闘う協議会」(世差協)で活動していたりしてね。

金岩宏二現代書館)●出版協理事

 

 

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