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2016年10月28日 (金)

共通番号(マイナンバー)への対処法

FAX新刊選46号(2016年8月)で、「悩ましい共通番号(マイナンバー)への対処」と題して、中小零細出版社(事業者)が、共通番号制度によってこうむる過大な負担とそれにどう対処したらよいかについて述べた。今回は、具体的な対処法を検討したい。とくに、出版社にとって著者への適切な対応は欠くことができないので、この点について触れたい。前回述べた〈著者から個人番号を当面いただかない〉との方針を具体化した文書(案)を末尾に掲げる。この文書は、共通番号制度の概略を述べたあと、その制度の危険性、事業者への過大な負担などを指摘し、当面、個人番号をいただかないことにするという趣旨のものである。
 
あくまでも参考の文案である。各社の事情を勘案して、こうした文書を著者全員に送付するのか、問い合わせがあった著者のみに送付するのか、判断していただきたい。また、その理由付けなどについて各社の事情にあわせた表現を工夫することもおすすめしたい。

いまのところ小社に著者からの個人番号に関する問い合わせはない。またいくつかの出版協会員社に聞いてみてもそうした事実はないという。なぜだろうか。国民の間で共通番号制度の理解が十分でないためか、あるいは個人番号カードがあまり普及していないためか(9月25日時点で、申請受付数は、11,351,999)、その理由は定かでない。
 そうであれば、当面、静観すること(何もしないこと)も選択としてありうる。
 なお、「共通番号いらないネット」による学習会「どうなる番号(マイナンバー)強制?年末調整・確定申告・金融機関の手続き」(2016年11月5日〔土〕14時~ 、東京・文京シビックセンター4階シルバーセンターホール、講師:山崎秀和さん〔共通番号いらないネット世話人、共通番号制を考える会・静岡代表〕)がある(詳しくは、同会HP)。
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執筆者のみなさんへ
         2016年  月 日
         株式会社○○○○ 
 本年1月より共通番号(マイナンバー)制度が実施されています。
 共通番号制度では、事業者に対して税や社会保険事務の書類で個人番号を記入するなどを求めています(詳しいことは内閣府のホームページをご覧ください)。

 事業者には、著者に印税や原稿料をお支払いした場合、税務署に提出する書類(「報酬、料金、契約金及び賞金に支払調書」)に著者の個人番号を記載することが義務づけられています。
 そのため、事業者は、著者のみなさんから個人番号の提示(通知カード)を受ける必要があります。その際、本人確認に必要な通知カード(+健康保険証、あるいは運転免許証)か個人番号カードのコピーも一緒にいただくことになります。
 
 事業者には、提出された個人番号やその関連書類に関して、厳重な管理(「安全管理措置」)が義務付けられています。「安全管理措置」の内容は、多岐にわたり、手間とコストがかかり、中小零細事業者にとっては、とても対応できるものではありません。万が一漏えいした場合は、4年以下の懲役または200万以下の罰金が科せられこともあります。
 日本年金機構からの情報漏えいにも見られるように、高度な安全対策をしていたにもかかわらず個人情報が漏れてしまうことがあります。また、過去このような事故はたえません*。
 
 また、政府は、個人番号カードの普及を進め、住民に日常不断に所持させ、いろいろな機会に使用させるように考えています。そうなると、政府による個人情報の監視・管理などが行われる危険があります。政府は、そのようなことがないように個人情報保護法などによって厳重な保護措置をとるといっていますが、納得できる十分な説明がなされているとは言えません。
 さらにカードの紛失等の機会も増え、犯罪に使われることも懸念されます。

 よって、今回小社としては、検討・熟考した結果、万全の「安全管理措置」がとれませんので、当面個人番号をお預かりしないで、税務署に提出が義務ずけられている書類は個人番号なしで提出する扱いにすることとしました。 
 なお、個人番号の記載がなくても書類が受理されないということはありません(平成 28年4月12日/個人情報保護委員会「特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン(事業者編)及び「(別冊)金融業務における特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン」に関するQ&Aの更新   http://www.ppc.go.jp/files/pdf/280412_guideline_tuikakoushin.pdf)。

 著者におかれましては、小社の考え方と方針をご理解いただきまして、ご協力賜わりますようお願い申し上げます。
 
*過去の情報漏えい事件/2011年9月の三菱重工業へのサイバー攻撃(80台以上感染)、2013年10月のセブン通販サイト(15万件以上)、JAL情報漏えい(4千件以上)、2014年7月のベネッセ個人情報流出事件(2000万件以上)、2015年55月の日本年金機構(100万件以上)、2015年6月の東京商工会議所(1万件以上)など多数。

成澤壽信(現代人文社●出版協副会長

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