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2016年12月13日 (火)

七つ森書館への不当判決に再度抗議する

日本出版者協議会加盟の出版社である七つ森書館が20125月に刊行した再刊本をめぐり、同年10月、これを「著作権侵害」だとして読売新聞東京本社が同社を訴えた訴訟で、東京地裁が読売勝訴の不当判決を下したことについては、当会の2014930日付声明「七つ森書館への不当判決に抗議する」に述べたとおりである。

 

その後、これを不服として七つ森側が控訴、上告したにもかかわらず、本年6月、最高裁はこれを棄却、七つ森書館は203万余円の賠償金支払いを余儀なくされた。
裁判の最大の争点は、20115月に両社が取り交わした出版契約書が有効かどうかにあった。読売側は、「社を代表する権限を有していなかった」社会部次長が署名・捺印した出版契約は無効であると主張し、七つ森側は、「読売本社が、H次長を代理人として本件出版契約を締結し、著者名を『読売社会部清武班』とする本再刊本の出版を承諾していたことは、まぎれもない事実である」と応じたのだが、司法は読売側のおかしな主張を全面的に認めてしまった格好である。

 

しかし、裁判の過程でこの元次長が、「私が独断でやった」「七つ森にうそをついた」と証言した(泥をかぶった)ことから、先の訴訟の地裁・高裁判決は、「無権限であるにもかかわらずそれを秘して締結手続を進めた」元次長の責任を指摘し、高裁判決では読売新聞社の「使用者責任」にも言及していた。

こうした経緯を経て、20156月、七つ森側が元次長とその使用者の読売新聞社に対し、2000万円の賠償責任を求めて提訴したのが、今回の裁判だった。

しかるに今回2016125日の東京地裁判決は、「七つ森側が読売側の指摘を受けた後、販売を強行して生じた損害は、読売社員の行為とは関係ない」などとして、七つ森側の請求を棄却したのである。

 

判決は、「契約」というものに対する市民感覚から大きく逸脱しているばかりでなく、小零細出版に対する大手メディアの出版妨害をまたしても追認したものであり、「不当判決」と言わざるをえない。

 

出版社82社で構成する日本出版者協議会は、きわめて不公正な今回の判決に強く抗議するものである。

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