東京地裁による『日本会議の研究』販売差し止め決定に抗議する
『日本会議の研究』(菅野完著、扶桑社、2016年5月)で名誉を毀損されたとして、宗教団体元幹部の男性が販売差し止めなどを求めた仮処分申し立てで、東京地裁(関述之裁判長)は1月6日、名誉権の侵害を認め、当該本の販売を禁止する決定を出した。
地裁が問題としたのは、1970年代に同宗教団体青年会の機関紙拡大運動の中で、メンバーの学生らがサラ金にまで手を出して購入することを余儀なくされ、「結果、自殺者も出たという。しかし、そんなことはA〔仮処分申立人〕には馬耳東風であった」とのくだりで、「この部分は真実でない可能性が高く、販売を続けると、男性は重大かつ著しく回復困難な損害を被る」として、販売差し止めの判断を下したのである。
出版物の販売を差し止めるという行為は、憲法で保障された「言論・出版・表現の自由」を侵し、読者の「知る権利」を奪ってしまうものであるため、よほど慎重に扱わなければならない。従来の司法では、「一定の要件を満たしたときに限って、例外的に許される」とされてきたことを、いま一度思い起こすべきである。
しかるに今回の地裁の判断はあまりに粗雑で、説得力に欠けると言わざるをえない。「この部分は真実でない可能性が高く」という予断をもって、販売差し止めの「一定要件を満たした」ものなのだとすれば、およそ「自由な出版活動」「言論・出版・表現の自由」などは成立困難になってしまうであろう。
出版に携わる者の団体である日本出版者協議会は、今回の東京地裁決定に強く抗議するものである。
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