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2018年4月11日 (水)

東京都迷惑防止条例の「改正」に反対する

 

 3月22日、東京都議会警察・消防委員会は、東京都迷惑防止条例の「改正」案(「公衆に著しく迷惑をかける暴力行為等の防止に関する条例の一部を改正する条例案」)を賛成多数で可決した。「改正」案は、29日の本会議で可決・成立する見込みと報じられている。
 私たちは、今回の「改正」案が、捜査機関による恣意的な濫用の危険を拡大し、労働運動や市民運動の規制、報道・取材活動への侵害等を可能とし、言論表現の自由を保障する憲法21条に違反するものであるととらえ、これに強く反対する。

 そもそも現行の条例自体が、警察による濫用の恐れを危惧され、批判を浴びて一度は廃案とされた代物であった。その「つきまとい行為等」規制については、「ストーカー規制法」が、規制するところの行為を「恋愛感情」等の充足目的の行為に限定しているのと異なり、「ねたみ、恨みその他の悪意の感情を充足する目的」という、きわめて主観的かつ曖昧な要件をもって、処罰範囲の拡大を可能とするものであった。その判断は事実上、現場の警察官に委ねられており、労働運動や市民運動が規制対象となりうる可能性があることは明らかだった。

 今回の「改正」案は、これらに加えて「みだりにうろつくこと」「電子メール(SSを含む)を送信すること」「監視していると告げること」「名誉を害する事項を告げること」「性的羞恥心を害する事項を告げること」を、新たな規制対象として処罰するというものである。

 とりわけ、「みだりにうろつくこと」「監視していると告げること」「名誉を害する事項を告げること」という項目は、労働運動における争議行為や、政治家やその政策を批判する市民運動の諸活動に適用され、その弾圧に使われる可能性が高い。また、マスコミ等言論機関や、フリージャーナリストの正当な取材活動に対しても、これらを理由として処罰することが可能である。さらに、「名誉を害する事項を告げること」に関しては、刑法の名誉棄損罪などのような限定がなく、単に主観的名誉感情が「害された」とするだけでこの条項に該当するとされる。それが親告罪でなく、「被害者」の告発がなくても捜査機関によって逮捕・起訴が可能となることの問題も大きい。

 この「改正」案は、捜査機関の権限を肥大化し、その恣意的運用を拡大するものであると言わざるを得ない。そしてそれは、言論表現の自由、知る権利、報道の自由という、私たちの活動に直結する問題にほかならないと考える。以上の点から、私たちはこの「改正」案に強く反対し、その廃案を求めるものである。 

 

 

 

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