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2018年7月

2018年7月13日 (金)

図書館研修セミナーのご案内(続報)

出版協プレゼンツ/全3回「図書館研修セミナー」(第4報)

どなたでも、参加していただけます。出版関係者の方々のご参加をお待ちしております。

7月12日(木曜日)、第1回の図書館研修セミナーは好評のうちに終了いたしました。
第1回 どのような本が図書館に選書されていくか?

ーー日販図書選書センターの実際から

[講師]日販図書館営業部・図書館選書センター長・渡邊真嗣氏
[研修内容]
図書館という市場に本作り、普及の立場でどのようにアプローチするか? 2015年、日販は組織改編で、図書館営業部を発足させ、16年12月には学校図書館司書向け選書施設として、「図書館選書センター」をオープンさせました。学校図書館市場の現状、選書の現状、図書館配本のノウハウを研修します。
[開催日]2018年7月12日(木)
[時間]18:00~20:00(開場17:30)
[参加費]2000円(出版協会員者/賛助会員=1000円)
[定員]50名(予定)
[会場]小石川運動場会議室(Jr飯田橋駅、地下鉄後楽園駅/歩5分)電話03(3811)4507

第2回、第3回はこれから募集開始です。
第2回 「図書館に置かれやすい本、置かれにくい本――編集プロダクションの本作りノウハウと図書館市場の狙い目」(仮題)

講師:今人舎代表・稲葉茂勝氏
[研修内容]
日本の図書館仕様書の原型を作ったとされる編集プロダクションのレジェンド。図書館に並ぶ多くの本に「今人舎」「こどもくらぶ」編集が明記されています。各地の講演会で大盛況の講師。ぜひご参加ください。*2020年の教科書改定を控えています。
8月21日(火)
18時開始~20時終了予定
[会場]小石川運動場会議室(同上)

第3回 「学校図書館はどんな目で本を選び、どんな本を求めているか?――選書の現場からの報告と提案」(仮題)

講師:全国学校図書館協議会研究調査部長・内海 淳氏
[研修内容]
全国学校図書館協議会選定(学校図書館向け図書)、よい絵本選定(是非読ませたい絵本)、夏休みの本(緑陰図書)の選定など、学校図書館の充実発展と青少年の読書の振興を図る現場から、出版社と図書館を結ぶ方法を公開します。
9月11日(火)
18時開始~20時終了予定
[会場]小石川運動場会議室(同上)

申し込みは先着順です。メールでの申し込みが便利、以下の事務局へ。すぐにお返事します。第1回~第3回まで通しで申し込まれた方は、お名前は登録済みです。
●一般社団法人・日本出版者協議会(出版協)

事務局/水野 寛(みずの・ひろし)
東京都文京区本郷3-31-1 盛和ビル40B
TEL:03-6279-7103/FAX:03-6279-7104
shuppankyo@neo.nifty.jp
http://shuppankyo.cocolog-nifty.com/


2018年7月 6日 (金)

2018年7月69号(通巻293号)

1p ・・・・・・・・・・ほんのひとこと
 「教育機会確保法」を考える
  出版協理事 髙野政司(解放出版社
2p-4p ・・・・・・・・「出版協Books 7月に出る本」

2018年7月 2日 (月)

「教育機会確保法」を考える

一昨年の12月「教育機会確保法」(正式には「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の確保等に関する法律」という)が成立した。

主な内容のひとつは、不登校や在日外国人に対して夜間中学という学びの場の設置を謳ったことである。全国の都道府県で最低1校以上の設置を述べている。夜間中学は正式には「中学校夜間学級」という。現在は8都府県で31校が運営され2,000人弱が学んでいる。78割が在日外国人である。これは公立の学校であるが、これとは別に自主夜間中学が運営されており、約7,000人が学んでいる。夜間中学は戦後に開設される。戦争の傷跡からの復興の戦力のために学校に行けない生徒のために、または繁忙期の仕事の手伝いで学校に行けない人のために運営された時代もある。その後は、在日韓国・朝鮮人や被差別部落の人たちなどの学びの場として夜間中学が獲得されていく。

現在、不登校の児童生徒は10万人以上いる。中学校に限ると約3%の生徒が該当するということである。義務教育未終了者は百数十万にのぼるとされている。この法律はそういう意味では、憲法が保証する教育を受ける権利に対してその端緒を示したものということができるかもしれない。不登校のまま卒業をした「形式卒業者」に対して、以前は卒業を理由に認めていなかった再入学、いわゆる学びなおしを認めている。これは在日外国人にも適用される。また、不登校生徒は夜間中学への転校もできる。フリースクールについてはこの法律でその存在を認めた。そのほか、日本語教育が必要な場合の措置、必要と認められる臨機応変なカリキュラムの作成などを謳っている。

不登校は、児童生徒のいじめや教師の指導という名の暴力に耐えられないときなど、どうしても学校に行けない状況に追い込まれることが多い。または学校自体に馴染めない、きらいというときにも不登校は起きる。従来は、学校に「行けない・行かない」子をいかに行かせるかという問題設定で考えることが基準であった。しかし、この法律ではこのような「不登校児童生徒の休養の必要性」を述べ、学校に行かない権利を認めている。いままでも我慢や無理をしてまで学校へ行かなくてもよいという考えや提言、行動はあったが、このような考えに法的な根拠ができたカタチである。

文字・教育を取り戻す、または獲得する運動はいろいろと取り組まれている。弊社の関係でいえば、被差別部落では1950年代から識字運動・識字教室が生きていく力を取り戻す運動として取り組まれている。差別や貧困により教育の機会を奪われたなかで、文字を取り戻す運動である。現在、日本語獲得や夜間中学との連携を含め、各地で識字運動・識字教室はいろいろな方たちの協力を得ながら活動をしている。高齢者が多いなかで、2010年の調査では30%が30代までである。

国際的には国連の取り組みが知られている。1990年は国際識字年、この当時の非識字人口は文字をもたない文化をふくめ世界人口の6分の1ということである。2003年から2012年は、「国連識字の10年」として、各国それぞれに応じた子どもをふくめた識字活動が展開された。2015年には「持続可能な開発のための2030アジェンダ」で、識字の具体的な目標が掲げられている。

「教育機会確保法」は議員立法である。全国各地の不登校で教育の機会を失ってしまった関係者たちの教育の機会獲得の願いやそうした運動が、やはり在日外国人たちの生きていくために必要な文字などの獲得の願いや運動が、議員たちを動かした面が多いと推察する。また、2016年には「誰もが基礎的な教育を保証される社会の実現をめざして夜間中学、識字学級、地域日本語教室、障害者教育、生活困窮者支援など広い領域を視野に入れた」基礎教育保障学会が設立された。これらの動きはふだんあまり表には出にくい、発言力の弱い人たちの努力の結晶と言ってもよいのではなかろうか。

私たちにとって憲法が保障する必要な教育を受ける権利は、やはり憲法がいうところの不断の努力によってこの権利を保持しなければならないと思う。「教育機会」や基礎教育確保の運動はまさに足が地についた取り組みであり、これらの運動は出版文化との関連でも相互に作用して互いの進展につながるものと思う。

出版協理事 髙野政司(解放出版社

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