出版社の権利

2013年10月18日 (金)

出版関連小委員会「中間まとめ」への意見

文化審議会著作権分科会出版関連小委員会「中間まとめ」への意見
 
2013年10月18日

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日本出版者協議会(以下、出版協)は、文化審議会著作権分科会出版関連小委員会「中間まとめ」について、以下のように意見を提出する。

【はじめに】(1頁~2頁)について

○本「中間まとめ」までの審議経過について。

[理由]
出版協は、出版関連小委員会第2回小委(5月29日)の関係団体ヒアリングで、意見表明はしたものの、委員に選出されなかったため議論には参加できず残念であった。

私どもの団体は、中小零細出版社96社で組織される出版業界団体で、もっぱら大手出版社によって組織される日本書籍出版協会とは、出版者への権利付与について大筋では意見の一致をみるものの、いくつかの重要な点で意見を異にするところがある。その意味で出版界の少数意見を取り入れる機会を講じるべきであったと考える。

7月23日「出版関連小委員会への再要望」を提出したが、この再要望は各委員には配布されたものの、傍聴者や報道関係者に配布されなかったことは残念である。再要望は、「出版者の権利のあり方に関する提言」(2013年4月4日付、中山信弘東大名誉教授ほか。以下、中山提言)に沿った結論をだすべきというものである。
本意見は、出版関連小委の議論を踏まえ、中山提言に沿った方向で、現行設定出版権を紙媒体の出版から電子出版への拡張・再構成する内容で結論をまとめることを求めるものである。

○「本中間まとめでは、便宜的に、パソコン、携帯電話、専用端末等の機器を用いて読まれる電子化されたコンテンツを広く『電子書籍』と呼び、電子書籍をインターネット等で配信することを『電子出版』とする。」と定義しているが、この定義に反対である。

[理由]
納本制度審議会での定義にあるように、電子書籍については、パッケージ系電子出版物とオンライン系電子出版物とがあると考えるのが通常の認識と考える。中間まとめの「電子書籍」は「オンライン系電子書籍」と定義できる。

また「電子書籍をインターネット等で配信することを『電子出版』とする」と定義しているが、これは著作権法上の「自動公衆送信」にあたるもので、この行為は「電子配信」であり、「電子出版」とするのはおかしい。

出版者は自らの発意と責任において、その経済的リスクを賭けて企画から編集・制作、流通までの出版行為を引き受けるものであり、出版行為には文書または図画の著作物を印刷する従来の紙の出版と「電子出版」とがある。電子出版には、パッケージ系電子出版とオンライン系電子出版とがあるが、オンライン系電子出版は文書または図画の著作物を自動公衆送信のために送信可能化する行為、電子書籍を創る行為といえる。「中間まとめ」は、出版者などが電子書籍を販売する行為、すなわち「電子配信」を「電子出版」とすることで、単に電子書籍の配信業者を、電子出版を引き受ける電子出版者と定義するという誤りがある。

【第3章第1節 出版社への権利付与についての方策】(13頁~17頁)について

○出版関連小委の議論を踏まえ、出版協としての本「『中間まとめ』への意見」、並びに中山提言に沿って、現行設定出版権を紙媒体の出版から電子出版への拡張・再構成する内容で結論をまとめることを求める。

[理由]
近年の複製複写技術の発展は、紙やデジタルの違法コピーや海賊版を蔓延させ、著作者や出版社に多大な被害を与え、またデジタルネットワーク時代を迎えて出版社の電子出版への対応が緊急の課題となっている。ところが、こうした事態に出版社が対応しようとしても、現行の設定出版権では限界があり有効に対応できず、著作者ももっぱら個人であるため対応が難しいことから、著作者の利益のためにも、事業体である出版者に迅速な組織対応を任せた方が有効であることが明らかになってきた。グーグルブック検索問題や自炊代行問題がその一端といえよう。こうした観点から出版者への権利付与の必要性が議論されてきた。

文科省に設置された「電子書籍の流通と利用の円滑化に関する検討会議」が平成23年12月にまとめた報告でも、「『出版者への権利(著作隣接権)付与』について、出版者から『電子書籍の流通と利用の促進』と『出版物に係る権利侵害への対応』の二つの観点から、その必要性等が主張された」と総括している。

こうした出版者の要望を受けた「印刷文化・電子文化の基盤整備に関する勉強会」(以下、中川勉強会)は、4月4日、中川提言をまとめた。出版関連小委の議論の中心となったこの提言は、「著作者との契約により設定される現行の出版権が、原則として電子出版にも及ぶよう改正」し、「法改正前の作品にも当事者の合意により拡張可能なため、権利を分散化せず、著作者の意思に基づいた活用を期待できる。また、オンライン海賊版の差止などのニーズにも対応できる」というものであった。

具体的には、
① 当事者の特約により、「印刷のみ」「電子出版のみ」という出版権の設定も可能にする→流通の変化にともなう、多様な契約のありかたにも対応。
② 現行出版権の再許諾不可を改め、特約なき限り再許諾可とする→一次出版の後の他社での文庫化や、多数のプラットフォームでの配信などに対応する。
③ 当事者の特約により、特定の版面に対象を限定した上、その複写利用などにも拡張可→企業内複製やイントラネットでの利用許諾などに対応する。
④ 対抗要件としての現行登録制度を拡充し、登録しやすいよう環境を整備する。
ことが提言された。

出版関連小委では、①中山提言の現行設定出版権を紙媒体の出版から電子出版への拡張・再構成する案(9月13日第8回中川勉強会で配布された中山提言を基にした著作権法改正案骨子では「総合出版権」と呼称されているので、以下総合出版権と呼ぶ)を軸に、②日本経団連の提言である電子出版に対応して新たに電子出版権を創設する案が検討された。出版者は総合出版権への拡張・再構成を支持し、著作者団体、電子配信業者は電子出版権の新設を支持した。

「中間まとめ」は「いずれの方法をとる場合でも、紙媒体での出版と電子出版を行う場合には、出版者と著作権者との契約により、双方の権利を一体的に設定することは可能である。また、出版者が多大な労力と資本を投下し著作者と密接な関係の下で創作される著作物については、著作権者と出版者との信頼関係に基づき、紙媒体での出版と電子出版に係る権利が、おのずと同一の出版者に一体的に設定されていくことが想定される」(22頁)と結論して、事実上、②を選択した。

【第4章第2節 1、2電子書籍に対応した出版権の主体の在り方】(19頁~22頁)について

○中山提言に沿って、権利の主体は出版者(自らの発意と責任において出版物を企画編集し出版する者)とし、権利の主体を「電子出版を引き受けるもの」に拡大することに反対する。また紙と電子媒体の一体的設定とし、電子出版も含んだ出版権をデフォルトルール(標準的な内容)とする「総合出版権」の方向で改訂することを求める。

[理由]
総合出版権について吉田大輔氏は「金子(敏哉)講師(中山提言のメンバーで出版関連小委の委員、明治大学法学部講師)の説明によれば、既存の出版権と電子出版権を別々に設定するのではなく、電子出版も含んだ出版権をデフォルトルール(標準的な内容)とした上で、著作権者の意思によって紙媒体のみや電子出版のみといった限定した権利設定も可能とするというもの」(「出版者の権利に関する審議の動向」、出版ニュース2013年9月中旬号)と要約する。

一方、経団連の電子出版権は、「インターネット上で流通する違法電子書籍の問題については、著作権者である作家個々人で対処することは事実上不可能である。他方、出版者は紙の違法出版物に対して、『出版権』の設定による差止めは可能であるが、インターネット上の違法流通を排除する権限は、現行著作権法上に存在しない。」(「電子書籍の流通と利用の促進に資する『電子出版権』の新設を求める」日本経団連、2013年2月19日)との認識で、中山提言と一致するものの、「現在、電子書籍ビジネスが直面している深刻な違法電子書籍被害に鑑みれば、先ずは電子書籍を発行する者に、違法電子書籍に対抗できる権利を与えることが効果的である。」(同)としている。

二つの大きな違いはまず、権利を行使できる主体にある。総合出版権では「文書若しくは図画又はこれらに相当する電磁的記録として出版することを引き受ける者」であるのに対し、電子出版権では「電子出版を引き受ける者(電子出版のみを行う者を含む)」が、紙媒体の「出版を引き受ける者」とは独立して設定されているところにある。「出版を引き受ける者」は出版者であるが、「電子出版を引き受ける者」は必ずしも出版者である必要はなく、出版をしない単なる電子配信業者や、いわゆるボーンデジタルといわれる従来の出版物とは言えないコンテンツ等を配信する電子出版者も含まれる、より広い概念となる。電子配信業者は、具体的にはアマゾン、グーグル、アップルなどが想定される。

電子出版権では、既存の出版者が電子出版権をとることも可能であるし、総合出版権でも紙媒体のみや電子出版のみといった権利設定も可能なので大差はなく、著作権者との信頼関係があれば、両方を契約できるので問題はないという、著者団体や法律家の意見も強かった。しかし、著作権法でデフォルトルールとして規定されているのといないのでは、意味合いが違う。

そもそも「電子書籍の流通と利用の促進」と「出版物に係る権利侵害への対応」という観点から出版者への権利付与がこの間議論されてきたのであって、電子出版者への権利付与が議論されてきたわけではない。

ところが経団連案は、出版者が占有する紙の設定出版権の限界を検討することなく、電子出版に係る権利を単独に検討し、設定出版権を電子出版に応用し、電子出版権設定契約に基づく電子出版権を打ち出し、単に電子出版を引き受ける者に電子出版権を付与するとした。

現在の電子出版物、オンライン出版物のほとんどは、出版者が発行する紙の出版物をもとにデジタル化されている。紙の出版物から電子出版物への変換は、出版者が著作権者に電子出版化の許諾をひとつずつ取って処理していて、手間ひまがかかる。電子化が進まないのも当然である。その意味で、電子出版を促進するためには、出版者に総合出版権を付与し、電子出版を引き受けさせ出版義務を課せば、出版者は電子出版を期限内に行うようになり、電子出版は飛躍的に促進されよう。義務を果たさなければ著作権者は電子出版権の消滅請求を行い、別の出版者等で電子出版をすればよい。

第3回出版関連小委で渋谷達紀委員(東京都立大学名誉教授、「電子書籍の流通と利用の円滑化に関する検討会議」座長)は、次のように述べている。

「電子書籍出版権のようなものがあるとすれば、それを付与されるのは現行の出版権を持っている出版社に限るべきではないかと私は思います。ボーンデジタル型のコンテンツを配信する業者がいるだろうと思うんですけれども、(中略)ボーンデジタル型のコンテンツを公衆送信する者に現行の出版権類似の権利を与えるとしますと、ほかの書籍とはみなせないようなデジタル情報を配信する業者にも、みんな同じような権利を与えなければいけなくなり、際限がなくなるんではないかなということを恐れます。」

渋谷委員の指摘の通りで、自らの発意と責任において企画から編集・制作、流通までの出版行為を引き受ける出版者ではなく、著作権者の許諾をとることでもっぱら紙媒体の出版物をデジタルコピーし配信するにすぎない電子配信業者や、およそ出版物とはいえないものを電子出版する者にまで電子出版権を付与する必要はない。

出版協としては、改めて、中山提言に沿った「総合出版権」の方向で改訂することを求めるものである。同時に、権利の主体は出版者(自らの発意と責任において出版物を企画編集し出版する者)とし、権利の主体を拡大することに反対する。
──紙の出版者が電子出版権を得られないと深刻な事態が起きる
仮に紙の出版者が電子出版権を得られない場合、どういうことが起こるのか。この点の危惧を6月24日の第4回小委で、森田宏樹主査代理(東大大学院法学政治学研究科教授)が次のように指摘している。

「例えば、紙媒体の書籍についてスキャナーがなされ、サイトにアップされた場合に、紙媒体の書籍の出版権と電子書籍の出版権の双方を有する出版社は、公衆送信権に基づいてその差止めを請求することが可能でありますが、紙媒体の書籍の出版権のみの付与を受けた出版者については、紙媒体の書籍の出版に必要な範囲での支分権として、その頒布目的の複製権しかないということになりますと、公衆送信権はありませんので、それに基づいて海賊版を差し止めるということはできないことになります。」

これは、グーグルブック検索問題の時に、日本の出版社がなす術がなかった状況そのものである。アマゾンやグーグルなどの電子配信業者は、すでに、「なか見!検索」などに応じた出版者の本をスキャンするなど、様々な方法で無断を含めスキャンしており、電子書籍として電子配信する条件をすでに整えていると見るべきであろう。

こうした電子配信業者が「電子出版を引き受ける者」として著作者と契約しさえすれば、紙媒体の出版権しかない出版者は、電子配信業者によってコピーされた電子書籍を電子配信されてもなにもできないことになる。まして公正取引委員会が電子書籍を非再販商品としている現状で安売りなど恣意的な値付けで販売された場合、紙の出版物の打撃は大きく、多くの出版社は立ち行かなくなる。これでは、何のための出版者への権利付与なのか。

もともとこのような電子配信業者は、自らの発意と責任において出版物を企画編集する者ではなく、もっぱら既存の紙の出版物からデジタルスキャンするだけのコピー業者にすぎず、本来の出版者とはいえない。出版者と電子配信業者つまり電子書籍販売業者という役割の違う者を同列におき、後者にまで電子出版権を付与しようというのが電子出版権新設案といえる。「中間まとめ」でも、「電子書籍に対応した出版権の客体に関しては、現行の出版権で対象となっている文書又は図画に相当するものを対象とすることが適当であると考える。」(「中間まとめ」22頁)と結論しているわけで、「現行の出版権で対象となっている文書又は図画に相当する」電子書籍に対応した出版権は、出版者に付与されるのが自然であり、そうすべきである。そう規定されたからといって、電子配信業者が出版をすれば出版者になれるわけで、電子配信業者に不利益はなく問題はない。

【第4章第2節 3電子書籍に対応した出版権の客体の在り方】(22頁)について

○「中間まとめ」の通りである。「電子書籍に対応した出版権の客体に関しては、現行の出版権で対象となっている文書又は図画に相当するものを対象とすることが適当であると考える。」(「中間まとめ」22頁)と規定する以上、現行出版権の拡張として権利の主体も、出版者とすべきである。

【第4章第3節 権利の内容1、2】(23頁)について

○権利の内容としては、「中間まとめ」の理由の通り、「複製権及び公衆送信権が適当である」。

【第4章第3節 3「特定の版面」に限定した権利の付与の是非】(23頁~29頁)について

○「特定の版面」に対象を限定した権利の創設が、海賊版対策ならびに、出版以外の複写等の許諾の促進に不可欠である。

[理由]
仮に経団連案の電子出版権新設が採用された場合には、紙媒体の出版権しかない出版者がデジタル海賊版などへの対策が取れるようにすることが不可欠であるが、「中間まとめ」は、そのための方法でもある中山提言③「特定の版面」に限定した権利付与を葬ってしまった。

この「特定の版面」について、第8回中川勉強会配布の中山提言を基にした「著作権法改正案骨子」は次のように創設の意義を述べている。

試案によると「特定の版面」は「特定版面権(特定出版物権)(仮称)の設定」として、次のようにその創設の意義が説かれている。

「①総合出版権を設定することなしに(=著作物の独占的利用権限を設定せずに)、出版者に対して特定の版面の利用を認める(=特定の版面を利用した侵害についての対抗手段を出版者に付与する)ことができる。
②総合出版権を設定した者との関係においても、例えば、紙媒体書籍の出版しか予定していない出版者にとって電子書籍に係る総合出版権を設定することは事実上不可能であり、そうすると、出版物をデッドコピーしたインターネット上の海賊版への対策を講じることは極めて困難であるところ、特定版面権(特定出版物権)を重ねて設定することで上記のような態様の侵害についても対抗できるようになる。」

第5回出版関連小委で金子委員は、次のように補足説明している。
「提言の〔3〕については、複写利用など、出版とは言えない利用にも出版権の対象を拡大するものであるというものであります。(中略)特に著作者の団体等に加盟していない著作者などについては出版者に対してそのような権利を預けたいというニーズがあるのではないかと。特に我々のような学術論文の著者等についてはそのようなニーズもあるのではないかと考えて、このような〔3〕の提言の中に企業内複製等も含めた形に入れたわけであります。」

再許諾が紙媒体と電子出版にも認められれば、出版という範囲での利用は進むであろう。しかし紙媒体の複写や企業内複製、紙媒体のデジタル複製、電子媒体でのイントラネットなど、出版物の特定な部分に限ってのさまざま複写、複製、送信の許諾要請が様々にある。こうした需要に円滑に応えていくとともに、違法なデジタル複製に対して紙媒体のみの出版者でも対応ができるようにしたのが、この「特定の版面の利用」の意義であり、ぜひとも必要な所以である。

ところが、「『特定の版面』に対象を限定した権利の法制化に反対する意見が多勢を占め、日本書籍出版協会からも、海賊版対策が可能な方策が講じられるならば、『特定の版面』に対象を限定した権利にはこだわらないとの意見が表明された結果、(中略)法制化に向けた合意形成には至らなかった」(中間まとめ25頁)。書協は「JRRC(日本複製権センター) や一般社団法人出版者著作権管理機構(JCOPY)による現行の許諾実務に大きな影響を与える可能性」との理由からだ。しかし、これらの団体が大半の出版者や著作権者を網羅しているわけではない。出版協は旧流対協時代にこれらの団体に加盟を断られた経緯がある。金子委員がいうように「ニーズがある」のである。

しかも、書協が望んだ出版物(特に雑誌)をデッドコピーしたネット上の海賊版対策は、「電子書籍に対応した出版権の創設」で対応することとなった。紙のみの設定出版権しかない出版社は、デジタル海賊版対策を著者任せとするしかない。海賊版対策にならないような改正は無意味である。

【第4章第4節、第5節、第6節】(29頁~32頁)

○再許諾については、「中間まとめ」のとおり、電子媒体と共に、紙媒体の設定出版権の再許諾が不可欠である。

[理由]
再許諾の関係では、電子出版権とともに紙の設定出版権にも再許諾を与えることを「中間まとめ」が中山提言通り認めた点は評価される。書協や雑協は紙の設定出版権の再許諾にも反対しているが、これはわずか数十社の文庫出版社が他社単行本等を自社の文庫に収録する都合だけを考えた対応で、出版界の大局を見通した判断とはおよそ言えない。紙の再許諾に反対する書協・雑協の理由も理由になっていない。

書協、雑協などが反対する理由1に「二次出版の実務は通常再許諾では行われていない」(出版広報センター「出版権」緊急説明会資料)という理由を掲げているが、これは理由ではなく現状を述べているに過ぎなく、現行著作権法では複製権者も出版権者の許諾を出せない「一種の両すくみの関係」(加戸守行『著作権法逐条講義』)にある以上仕方のないことで、当該出版者に再許諾の権利がない以上それを行使できるわけがない。この法的矛盾を解消する意味で紙媒体の設定出版権に再許諾を付与する意義があると言える。

また理由2に「単行本が絶版となると文庫の再許諾権も無くなるのではないか」(同)というが、これも理由になっていない。単行本が絶版になれば著作権者は設定出版権の消滅請求を行い、当該文庫出版者に出版権を再設定すればすむことであり、何も問題はない。

さらに理由3として、「出版ブローカーも出版者となることになるのではないか」(同)というが、これも理解に苦しむ。出版権を設定された出版者は、著作権法81条に基づき当該著作物の原稿等の引渡後6カ月以内に出版しなければならない義務を負い、この約束を果たすことができなければ設定出版権の消滅請求をされるだけである。紙媒体の出版をしない者が他人に対し再許諾を行うことはできないわけで、この紙の再許諾を付与することによって出版ブローカーが成立する根拠はないと考えられる。このような出版ブローカー云々は妄想である。

前記吉田大輔氏は、もともと設定出版権は現行とほぼ同じ出版権制度として一九三四年に法制化されたが、「立法当時、無断出版や競合出版に対して先行出版者の利益をどのように確保するかという議論が高まっており、制度導入時の立法作業担当者も、その趣旨をどのような方法で実現するかについて様々な案を検討したようである」(吉田大輔「電子出版に対応した出版権の見直し案について」、『出版ニュース』2012年10月上旬号)と類似出版物、競合出版物から一次出版者の権利を守ることが、設定出版権創設の意義であると述べている。

その観点から見ると、書協などの反対論は、文庫出版者でない出版者がほとんどの出版界の要望に応えたものとは言えず、いわば「紙のコピー出版者」である文庫出版者の都合ばかりが目立つものとなっている。いかなる出版社であれ、一次出版への敬意は払うべきであり、それこそが著作権法の精神と考える。

【終わりに】(33頁~34頁)について

○権利の主体は出版者(自らの発意と責任において出版物を企画編集し出版する者)とし、権利の主体を「電子出版を引き受けるもの」に拡大することに反対する。また紙と電子媒体の一体的設定し、電子出版も含んだ出版権をデフォルトルール(標準的な内容)する「総合出版権」の方向で改訂することを求める。
権利の内容としては、「中間まとめ」の理由の通り、「複製権及び公衆送信権が適当である」。

「特定の版面」に対象を限定した権利の創設が、海賊版対策ならびに、出版以外の複写等の許諾の促進に不可欠であるため、この権利を創設すべきである。

再許諾については、電子媒体と共に、紙媒体の設定出版権の再許諾が不可欠である。
以上、重複があるが、中山提言に沿って出版者への権利付与が行われるべきである。

中山提言の提起した中山信弘名誉教授は、「中間まとめ(案)」を議論した第8回中川勉強会で、グーグルなどの「敵が箱根の山を越えてきているのに、いつまで小田原評定をしているのか」「提言は最低限一致できるものにした」と指摘した。出版協は、「中間まとめ」を中山提言に沿った方向で改訂することを強く要求する。「中間まとめ」の内容で著作権法が改正されるならば、アメリカ等の電子配信業者の天下となり、日本の出版は確実に崩壊しよう。
なお、【その他】として、下記のことを要望する。

5月29日ヒアリング並びに7月23日付「出版関連小委員会への再要望」で要望したとおり、現行設定出版権及び今回の権利付与では対象外となってしまう出版物のうち、とくに文化的学術的観点から、下記の出版物を出版した出版者の権利を、ヨーロッパ連合諸国で行っているように、一定の条件をつけて一定期間保護するための法的整備を要望する。

一 古典を新たに組み直したり、翻刻、復刻するなどして出版した出版者。
二 著作権が消滅した未発行の著作物を発行した出版者。

以上

※10月21日、文化庁にパブリックコメントとして提出

2013年10月16日 (水)

出版者の皆様へ●パブリックコメント提出の呼びかけ

出版者の皆様へ ──パブリックコメント提出の呼びかけ
 
2013年10月18日

拝啓
貴社ますますご繁栄のこととお慶び申し上げます。

さて、ご承知のとおり、文化審議会著作権分科会出版関連小委員会「中間まとめ」への意見募集が10月26日まで行われております。電子出版の普及と海賊版対策のための出版者への権利付与を目的にしていると言われますが、「中間まとめ」では、それらの目的を出版者主導で達することができません。出版者の立場からの意見(パブリックコメント)提出が必要です。

日本書籍出版協会(書協)もパブリックコメントの提出を呼びかけておりますが、出版協としてはその内容について、紙の出版物と電子書籍について一体的な制度設計を求める件、権利の主体を出版者とし、単なる電子配信業者が権利の主体に含まれないように求める件などは、同様に考えておりますが、次の二点については同意できません。

1「中間まとめ」では「紙媒体の設定出版権の再許諾」を認めているのに、反対としている点。
2 海賊版対策と出版以外の複写等の利用許諾のための「『特定の版面』に限定した権利付与」についての「制度設計」が「中間まとめ」で認められていないにもかかわらず、反論をしていない点。

紙媒体の設定出版権の再許諾は、単行本出版者が文庫出版者へ再許諾をすることができる、つまり条件を含め交渉権を得るための画期的な規定です。

また「特定の版面」も複写の個別許諾や海賊版対策に不可欠です。しかし小委員会ではこの「制度設計」を書協はあえて求めず、著作者団体の反対もあり「中間まとめ」では葬られてしまっています。

下記に、上記二点の部分についてのパブリックコメント文例を示します。
これらをご参照の上、パブリックコメントをご提出いたければ幸いです。
敬具
 
文化庁意見募集/電子政府の総合窓口(e-Gov)


▼上記2点についてのパブリックコメント文例

【第4章 第4節 2電子書籍に対応した出版権に係る再許諾の在り方】について(29~30頁)

再許諾については、「中間まとめ」のとおり、電子媒体と共に、紙媒体の設定出版権の再許諾が不可欠です。

現在、典型的二次出版である単行本の文庫化にあたっては、現行著作権法では複製権者も出版権者も許諾を出せない「一種の両すくみの関係」(加戸守行『著作権法逐条講義』)にあります。そのため、法的な裏付けのない、当事者間の実務処理によらざるを得ず、一次出版社は大手文庫出版社の提示する条件での合意を強いられているのが現状です。この法的矛盾を解消する意味で紙媒体の設定出版権に再許諾権を付与する意義は大きいと言えます。

もともと類似出版物、競合出版物から一次出版者を守ることが、設定出版権創設の意義であるという観点から見ると、電子媒体と共に、紙媒体の設定出版権の再許諾権を認める「中間まとめ」は妥当であり、いかなる出版社であれ一次出版への敬意は払うべきであり、それこそ著作権法の精神であろうと考えます。

文庫出版社などが、「二次出版の実務は通常再許諾では行われていない」(出版広報センター「出版権」緊急説明会資料)ことを理由に反対していますが、これは前述のような現状を述べているに過ぎず、反対の理由になっていません。

「単行本が絶版となると文庫の再許諾権も無くなるのではないか」(同)という反対理由もあがっていますが、これも単行本が絶版になれば著作権者は設定出版権の消滅請求を行い、当該文庫出版者に出版権を再設定すればすむことであり、何も問題はありません。

さらに反対理由として、「出版ブローカーも出版者となることになるのではないか」(同)と指摘していますが、これも反対の理由になっていません。繰り返しになりますが、出版権を設定された出版者は、著作権法81条に基づき当該著作物の原稿等の引渡後6カ月以内に出版しなければならない義務を負い、この約束を果たすことができなければ設定出版権の消滅請求をされるだけです。紙媒体の出版をしない者が他人に対し再許諾を行うことはできないわけで、この紙の再許諾を付与することによって出版ブローカーが成立する根拠はないと考えられます。
【第4章 第3節 3「特定の版面」に対象を限定した権利の付与の是非】について(23~29頁)

「特定の版面」に対象を限定した権利の付与は、海賊版対策ならびに、出版以外の複写等の許諾の促進に不可欠です。

「特定の版面」に限定した権利の創設の意義は次のように考えられます。

①総合出版権を設定することなしに(=著作物の独占的利用権限を設定せずに)、出版者に対して特定の版面の利用を認める(=特定の版面を利用した侵害についての対抗手段を出版者に付与する)ことができる。

②総合出版権を設定した者との関係においても、例えば、紙媒体書籍の出版しか予定していない出版者にとって電子書籍に係る総合出版権を設定することは事実上不可能であり、そうすると、出版物をデッドコピーしたインターネット上の海賊版への対策を講じることは極めて困難であるところ、特定版面権(特定出版物権)を重ねて設定することで上記のような態様の侵害についても対抗できるようになる。

出版物の特定の部分に限っての利用については、紙媒体の複写や企業内複製、紙媒体のデジタル複製、電子媒体でのイントラネットなど、さまざま複写、複製、送信の許諾要請が現実にあります。こうした需要に円滑に応えていくとともに、違法なデジタル複製に対して紙媒体のみの出版者でも対応ができるようにするのが、この「特定の版面」に対象を限定した権利の付与の意義であり、ぜひとも必要な所以です(第8回中川勉強会配布の「著作権法改正案骨子」などを参照)。

小委員会の審議過程で、書協は「海賊版対策が可能な方策が講じられるならば」という条件付きで「『特定の版面』に対象を限定した権利にはこだわらない」とし、あえてこの権利の創設を求めませんでした。その理由として「JRRC(日本複写権センター) や一般社団法人出版者著作権管理機構(JCOPY)による現行の許諾実務に大きな影響を与える可能性」をあげています。しかし、これらの団体が出版者や著作権者を網羅しているわけではありません。

しかも、書協が望んだ出版物(特に雑誌)をデッドコピーしたネット上の海賊版対策は、「電子書籍に対応した出版権の創設」で対応することとなっており、これでは紙のみの設定出版権しかない出版社は対抗できません。

というのは、設定出版権の紙から電子への拡張・再構成でなく、「中間まとめ」のとおり電子出版権が独立して新設された場合、次の問題が起こるからです。紙媒体の出版権のみの出版者は、紙媒体の出版に必要な範囲での複製権しかなく、公衆送信権はありませんので、自社の紙の出版物をスキャンされてデジタル海賊版を作られた場合、これを差し止めることはできないのです。

改めて、「特定の版面」に対象を限定した権利の付与を求めます。
 
※なお、出版協としての「中間まとめ」への意見全文を出版協ブログにアップしますので、ご参照ください。
 
●問い合わせ等は、事務局(木下)まで
shuppankyo@neo.nifty.jp

2013年9月 2日 (月)

出版関連小委員会への再要望

出版関連小委員会への再要望

2013年 7月22日

一般社団法人日本出版者協議会(出版協、旧流対協)は、出版関連小委員会でこれまで議論されている出版者への権利付与の論点について、改めて次のように要望致します。

1 紙の出版物に係る再許諾についての要望

現行の設定出版権は、著作権者の権利である複製権のうち出版を引き受けるものについて出版についての独占的利用を契約で許すものとなっています。一方で著作権法80条3項は、出版権者が第三者に対して出版権の再許諾をすることを許していません。ある出版物を文庫などの形で他社から出版する場合、当該出版者が他社に対し再許諾できるようにすることは、実務上も設定出版権の趣旨からも必要不可欠と考えます。
現行設定出版権は、「立法当時、無断出版や競合出版に対して先行出版者の利益をどのように確保するかという議論が高まっており」(吉田大輔「電子出版に対応した出版権の見直し案について」『出版ニュース2012年10月上旬号』所収)、「無断出版や競合出版から出版者の利益を保護する制度で、著作者(厳密には複製権者)と出版者との間の『出版権設定契約』に基づき、出版者が取得する権利である」(同)。自らの発意と責任、経済的リスクにおいて出版を引き受けた第一次出版者が、他社での文庫化などに対し、再許諾をできるようにすることは、設定出版権の趣旨からも合理的です。

現在、日本の出版社3676社(出版年鑑2013年版)のうち文庫を発行している出版者は九十数社172文庫(同)程度であり、他社への文庫化の許諾は実務上もルール化が求められています。

自社出版物が文庫出版社によって文庫化される場合、もっぱら中小零細出版社である原出版者(一次出版社)は受け身の対応となり、正当かつ充分な経済的補償を受けられないため不満が多く、文庫化に消極的です。

紙の出版物に係る再許諾について、中山提言どおりに可とするよう要望致します。

2 中山提言①「現行出版権の電子への拡大」についての要望

現在、本の電子書籍化は、既存の出版者が保有する紙の本を電子書籍化するというケースが圧倒的です。しかしながら、例えば緊急デジタル化事業においても、そのための法的整備がなされていないことなどから、多くの出版者が積極的になれない問題が生じました。その意味でも、著作権法第80条(出版権の内容)を「出版権者は、設定行為で定めるところにより、頒布の目的をもって、その出版権の目的である著作物を原作のまま印刷その他の機械的又は化学的方法【ないし電子的方法】により文書又は図画【または電子出版物】として複製及び【送信可能化を含む自動公衆送信】する権利を有する。」と改定するなど、紙の本からの電子書籍化を促進にするために、現行設定出版権の電子への拡大という中山提言①で法改正するよう要望します。
また、デジタル・ネットワーク社会に対応した出版物の電子書籍化や海賊版対策など出版物に係る権利侵害への対応から「出版者への権利付与」が検討されてきた経緯を踏まえ、権利の主体については、出版権者とするよう要望します。

3 中山提言③「特定の版面の利用」についての要望

提言①、②では、紙の出版や電子出版に限定されるため、出版物の一部=特定の版面をコピーするなど複写利用する場合、許諾を求められても、許諾したり、使用料を請求したりすることができません。グーグルブック検索問題では、日本の出版社の本がグーグルによって無断スキャニング=複写されても、出版者が権利の当事者となれないということが露呈し、グーグルの違法行為を当事者として差し止めできないことが明らかになったため、著作権者、出版者の対応を混乱させました。

こうした複写利用等の許諾は日常的に出版社に個別に問い合わせが来ますが、法的根拠があいまいなまま、許諾が行われたり、著作権者への問い合わせを促したりするなど、個々ばらばらに処理されているのが現状で、著作権者に経済的利益ももたらされていません。

また小委員会における複製権センターの報告でも、個別の複写許諾は年間数十件とのことで、許諾を受けるべきケースの大半が無断で複写されていると推定され、著作権者、出版者の逸失利益はかなりのものと考えられます(出版協関連団体の著作権管理事業者である一般社団法人日本出版著作権協会の年間処理数と大差がありません)。また近年は大学などでのイントラネットなどでの利用の申し込みも増え、これへの対応も迫られています。

中山提言③は「当事者の特約により、特定の版面に対象を限定した上、その複写利用などにも拡張可」にすることでルール化し、こうした出版実務上の解決に資するものです。著作権者と出版者の特約等により出版物の特定の版面をコピーなど複写利用することや、LAN等のイントラネットで利用するなど、「出版・電子出版とはいえない利用」(「提言に関する補足説明」)が可能となり、出版者が許諾を与えたり、使用料を求めたりすることができるようになれば、著作権者にも経済的利益がもたらされるうえ、問合せ先が出版者に絞られることによって利用者の利便性も向上すると考えられます。

中山提言③「特定の版面の利用」についても、提言どおりに可とするよう要望致します。

以上

出版関連小委員会への要望

出版関連小委員会への要望


2013年 5月29日


一般社団法人日本出版者協議会について

一般社団法人日本出版者協議会(以下出版協)は、著作物再販制度の擁護、出版の自由、中小出版社への取引条件差別の是正などを目的に、1979年に結成された出版流通対策協議会(以下流対協)を前身とする出版業界団体で、会員社は現在95社。もっぱら人文社会科学、自然科学などの学術専門書、教養書など少量出版物を発行する中小零細出版社で構成される。

要 望


1 出版者への権利付与等については、「B 電子出版に対応した出版権の整備」を希望します。出版者への権利付与については、現在も著作隣接権が望ましいと考えていますが、「印刷文化・電子文化の基盤整備に関する勉強会」(座長・中川正春衆議院議員=中川勉強会)によって提案された「出版物に係る権利(仮称)法制度骨子案」では、原出版者(一次出版者)の権利保護やオンライン出版への対応等で不備な点があると考え、現行設定出版権の拡大再構成を内容とする「出版者の権利のあり方に関する提言」(座長中山信弘東大名誉教授)を基本とした「中川勉強会提言」による整備を要望します。

2 整備の内容は、現行の設定出版権をオンライン出版(電子出版)に拡大するだけではなく、デジタルネットワーク時代の出版実務の諸問題に包括的に対応しうる内容に改訂されるよう要望します。具体的には以下の通りです。
3 現行の設定出版権のオンライン出版(電子出版)への拡大については、著作権法第79条を、複製権者は「その著作物を文書又は図画【またはオンライン出版物(電子出版)】として出版することを引き受ける者に対し、出版権を設定することができる」、著作権法第80条(出版権の内容)を「出版権者は、設定行為で定めるところにより、頒布の目的をもって、その出版権の目的である著作物を原作のまま印刷その他の機械的又は化学的方法【並びに電子的方法】により文書又は図画【またはオンライン出版物(電子出版)】として複製及び【送信可能化を含む自動公衆送信】する権利を有する。」とするなど、【 】内を改訂追加することで、一通の設定出版権契約書によって、紙とオンラインの設定出版権による出版が可能となるように整備されることを要望します。

4 紙での出版ないしオンライン出版の設定出版権に第三者への再利用許諾(サブライセンス)を特約なき限り出版者に付与することが、実務上必要不可欠と考えます。著作権法第80条3項を再利用許諾の内容に改訂されることを要望します。

5 コピー等の複写利用については、特約なき限り再利用許諾を出版者に付与することが、実務上必要不可欠と考えます。

6 設定出版権では対象外となってしまう出版物のうち、とくに文化的学術的観点から、下記の出版物を出版した出版者を、一定の条件をつけて一定期間保護するための法的整備を要望します。
 一 古典を新たに組直したり、翻刻、復刻するなどして出版した出版者。
 二 著作権が消滅した未発行の著作物を発行した出版者。

7 いわゆる孤児出版物の出版を促進できるようにするなどのため、現行登録制度を簡素化し、権利情報が容易に明らかになり、孤児出版物を含め出版物の権利処理の環境が整えられるよう要望します。

理 由


1 出版実務上の問題点

出版社が現在ビジネス上抱えている問題点は、主に以下に要約される。

①私的利用の範囲を超えた違法なコピー等の複写、複製(それらのネットへのアップロード等を含む)の蔓延やいわゆる自炊問題などの増大とそれへの対応。

②グーグルブック検索和解問題や内外での海賊版出版などへの対応。

③自社出版物のコピー要請、試験問題集などでの利用、テレビ等での利用、大学内などでのLAN、ネット書店などでの広告利用など、増大する出版物の複写、複製、公衆送信への対応。

④自社出版物が文庫出版社によって文庫化される場合、もっぱら中小出版社である原出版者(一次出版社)は受け身の対応となり、正当かつ充分な経済的補償を受けられないため、不満が多い。

⑤出版物を電子化しオンライン書店等を通じて販売する(オンライン配信)などの電子書籍ビジネスへの対応、デジタルネットワーク社会への対応。


2 出版者が法的当事者となれないことが著作権者の利益を毀損している

①などに対し、著作権者はもっぱら個人であり、対応が難しく、出版者は単独で差し止めができない、訴訟の当事者になれない等の問題があり、著作権者の許諾ないし委任を一件ずつ求め対応することは、労力的時間的に手間がかかり、放置しがちで、著作権者、出版者の経済的損失は大きくなっている。


②についても、許諾や訴訟の法的当事者になれないため、①と同様の問題点がある。グーグルブック検索和解問題では、流対協(現出版協)はオプトアウトを呼びかけ会員社がオプトアウトを実施したが、法的裏付けに問題がない訳ではなかった。

③についても、法的当事者になれないため、①、②と同様の問題点がある。著作権者と出版者の契約等により出版物の特定の版面をコピーするなど複写利用することや、限定された電子的データを複製しLAN等で利用したりネット書店などの広告で利用することについて、出版者が許諾を与えられるようにすることが、実務上不可欠である。


④についても、現行著作権法80条3項などにより出版者は文庫化の許諾を行えないため、文庫出版社の提案通りに対応せざるを得ない場合が多い。無名の著作者のパイオニア的な一次出版物を多く出版し、経済的にも余裕があるとはいえない出版協会員社のような出版社としては、正当な経済補償が受けられるよう一次出版の再許諾の権利が不可欠である。

⑤については出版者に電子出版権が設定されていないため、出版物を電子化し多様なプラットホームに再許諾を行っていく動機に乏しく、電子化の障害となっている。経産省緊急デジタル化事業においても出版協会員社のほとんどは、同事業に参加しておらず、その理由のひとつに上記の理由があげられた(なお、出版協会員社の多くは自社内でDTPを行い、電子データで保存しており、オンライン出版の技術的体勢はほぼ整っている)。

①、③は日本複製権センター(JRRC)、出版者著作権管理機構(JCOPY)で一部対応しているが、日本出版者協議会は流対協時代に参加を求めたものの、JCOPYの前身である出版者著作権協議会(出著協)に団体参加を認められなかったため、分配金を得ていない。

このような諸問題への対応を有効に行うためには、出版者に電子書籍ビジネスや著作権ビジネスの当事者としての権利が付与されなければ、充分に対応できない。現行設定出版権契約にこうしたビジネスの委任条項を個別特約することでは不十分で、ビジネスそのものも発展しない。また、前記諸問題への対応をもっぱら個人である著作権者に任すのは負担が多く、法人である出版社が組織的に担う方が有効である。出版者が法的当事者となれないことなどが著作権者の利益を大きく毀損しているので、早急な法的整備が必要である。

3 著作権が消滅した古典や未発行の著作物を発行した出版者の保護

貴第一回委員会配布「参考資料4」にあるように、(1)文化的学術的観点から、著作権が消滅した学術的刊行物を発行した出版者や、(2)著作権が消滅した未発行の著作物を発行した出版者に対して、英独仏などEU諸国では出版者への権利保護が与えられている。


日本楽譜出版協会会員社のクラシック音楽楽譜のコピー被害や出版協会員社の大蔵出版が発行する仏教古典『大正新脩大蔵経』(全88巻)の国立国会図書館によるデジタル配信などは、出版社の経済的被害のみならず、発意と責任において出版物を発行していく出版者の出版意欲を毀損するもので、ひいては日本の芸術学問の発展にとってマイナスの影響を及ぼすものと考えられる。

以上の観点から要望6を提起する。

4 現行登録制度を改善し、孤児作品などの出版促進も含め出版物の権利処理の簡素化の必要

著作権者が不明のいわゆる孤児作品の出版については、著作権法第67条の文化庁の裁定でも可能であるが、制度そのものが使い勝手が悪くあまり利用されていない。現行登録制度を登録しやすいよう整備し、権利情報が明確になり、権利処理を簡素かつ迅速化し、孤児作品の出版が促進される必要がある。ただし、国立国会図書館のナショナル・アーカイブの利活用と直結させる必要はないと考える。

2013年5月31日 (金)

文化審議会・出版関連小委員会(第2回)、会長、ヒアリングで出席

文化庁文化審議会・著作権分科会・出版関連小委員会(第2回)が、
5月29日(水)13時 ~15時、グランドアーク半蔵門富士西の間で開催され、
高須会長がヒアリングで出席、要望書 を提出しました。

当日(第2回)の配付資料は下記にアップされています。
http://www.bunka.go.jp/chosakuken/singikai/shuppan/h25_02/gijishidai.html

第1回(5月13日)の配布資料、議事内容は下記にアップされています。
http://www.bunka.go.jp/chosakuken/singikai/shuppan/h25_01/gijishidai.html
(出版協の要望書もアップされています)